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西日に照らされた狭いアパートの一室で優は寝転がっている。
彼の計画はすべて上手くいき、文香は死んだ。
彼が持ちかけた殺しの相談とは文香自身を殺す相談だった。
文香は自分一人を愛していると優は信じていた。しかし、事実は違っていた。
あんなにも可愛いくあんなにも優しく彼を包んでいてくれた文香に男がいた。
彼が疑いを持って文香の後をつけた結果は惨めだった。
自分とは決して行かない豪華なホテルで、いかにも金持ち風の男と寄り添う文香を見てしまった。
貧乏な自分は単なるセフレに過ぎなかった、と思うと優の心に嵐が起こった。
殺したい程彼女が憎く、それは明確な殺意となった。
図書館の会話は、彼女自身の殺害計画を彼女に考えさせるという残酷なものだった。
彼女が「作られた遺書で他殺を自殺に見せかける方法」を提案した時、それだと思った。
「どんな感じの遺書か、書いてみてれる。
参考にするから」
「良いわ」
その時の文香の笑いは妙に儚げだった。
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文香のマンションはオートロックでもなく、階段を登れば部屋に行けた。
彼女の給料にすれば、質素な住まいで過去に一度優は訪れている。
かなり近隣に気を遣って文香と抱き合った。
誰にも知られない関係という響きを喜んでいた自分がお人好しだったと優は思う。
殺害当日、証拠を残さぬ様気を使って文香の書いた「遺書」を見た。
そして彼は海の見える公園で文香を殺した。
しかし。