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しかし、優は文香の本当の気持ちを知らずに彼女を殺してしまっていたのである。
彼女は殺される寸前に、別の手紙を直接優に渡していた。
それは淡いピンクの封筒に包まれていた。
崖っぷちで、彼女は又ひどく儚げに笑った。
一瞬怯んだ優だが、その手は勝手に動いて彼女を突き落としていた。
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「優、あなたが私を殺そうとしてる気持ち、よく分かります。
私はあなたの他に何人もの男と関係を持ちました。騙されたと腹が立つのは当然です。
あなたの他の男とは、虚しいだけの関係だったと思います。
皆私の表面だけ見ている男だった。
心の底から共感出来たのはあなただけです。
だとしても、贅沢な私はあなたとの結婚生活に多分耐えられないでしょう。
ホテルのフロント勤めは激務です。
辞めたいと何度も思いました。
表面だけ綺麗に取り澄してる自分自身が嫌になります。
時々本当に死にたい程切なく、どんなに貧乏でもいい、あなたと共に生きたい衝動に駆られたのです。
しかし、現実になったとして、、、恐らく後悔する結果になる、、。
それで自分の思いをそのまま遺書にしました」
そこで手紙は終わっている。
これを読めば優の気持ちは変化しただろう。
本気で一緒になる事を願っていたのか、本気で死にたかったのか、今となっては分からない。
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日が落ちた頃、優はジャンバーを羽織って外に出た。
交番は駅前にある。
文香殺人を洗いざらい告白するつもりだった。
冷たい風が痛い程強く吹く。
こんな夜、文香を思い切り抱いてみたい。
その暖かい胸に顔を埋めたい。
今なら言える。
「文香、もう一回でいいんだ。生き返ったお前を抱かせてくれ。もう、俺はお前をもう縛らない。幸せになって欲しい」