巨大な加速器を使う粒子線治療は治療費が高額になる分、治療効果も高いと期待されてきた。他に根治療法がないがん患者には、すがる思いで望みを託す頼みの綱にもなっている。全国の治療施設の登録患者数は年々増え、2013年度は4700人を超えており、既存の手術やエックス線治療と比べ、どの程度効果が高いかという科学的なデータを示すことが求められる。
日本放射線腫瘍学会が前立腺がんなどについて、粒子線治療がエックス線治療より優れているという結果を出せなかったことについて、報告書作りに携わった医師は「各施設がばらばらに治療計画を作り、患者の年齢やがんの種類、進行度も異なる。統計的に有意な実績データを集めることが難しかった」と明かす。
一般に、公的医療保険で認められていない先進的な治療を受ける場合、患者は入院や検査費用も含め全て自己負担しなければならないが、先進医療に指定されれば混合診療が認められる。さらに粒子線治療を含む先進医療Aは、期間の限定はなく年1回の報告をすれば続けられる。患者は高額な新しい医療を受けやすく、医療機関側は患者が増えるメリットがある。
厳格な計画に基づく臨床試験を進めることになれば、症例数や実施期間が限定される。前立腺がんは粒子線治療を受ける患者の約2割と最も多く、患者が減ると年数億円かかる施設の維持費が医療機関に重くのしかかる。また、試験に参加しない患者の治療が自由診療になれば、民間のがん保険の先進医療特約の対象外になるなど患者が混乱する恐れもある。一方、既存治療と比べて明確な優位性のない治療に高額な医療費を支払うことも問題で、厚生労働省の早急な調整が必要だ。
http://mainichi.jp/select/news/20150808k0000m040161000c.html
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