あるコラム...「父親の一番長い日」

2009-11-11 23:10:59 | Weblog
 娘を持つ父親なら一生来てほしくないと思っている日が私にも訪れました。
 会わせたい人がいるというのです。
 逃げ出したくなる気持ちを必至にこらえて、その席に臨みました。

 娘が連れて来た男性は在日中国人の青年でした。
 全く予想していなかったので、少なからずショックを受けました。
 彼は日本に来てから5年ですが、少したどたどしい日本語で話し出しました。
 正規従業員の仕事がないのでアルバイト生活をしている事、そのアルバイトも近々辞める予定である事、将来は中国に帰る可能性がある事、...。
 いずれも結婚を申し込まれる娘の父親にとっては複雑な心境でした。
 自然に会話も弾まなくなり、気まずい雰囲気のまま彼は帰りました。

 娘の性格からいって私が反対しても結婚するであろう事は間違いありませんが、家族から祝福してもらいたいと思っているのも良く分かります。
 でもこのときの私には物分りの良い父親を演じる自身はありませんでした。

 悩んでいる私がふと気づいたのは、彼がほとんどビールを飲まなかった事でした。大変なビール党と聞いていたのです。
 私は30年前の自分を思い起こしました。
 そのときの私も極度に緊張し、相手の父親に気に入られようと飲めない日本酒を飲みすぎて酔っ払い、「あんな酒飲みは辞めたほうが良い」と言われたのです。
 『そりゃあ日本人でも中国人でも緊張するよなあ』私のとげとげしかった心は少し穏やかになりました。

 数日後、もう一度2人と会いました。
 今度は娘の指導を受けたのか、落ち着いて話し出しました。
 アルバイトを辞めたのは、ようやく正規採用の職が決まったからでした。
 とても小さな会社なので恥ずかしくて言いそびれたそうです。
 2人の将来に対する父親としての不安が消えた訳ではありませんが、今度はビールを飲みながら一生懸命私に理解してもらおうと努力している青年に、30年前の自分を重ねて見ている私がいました。

 2人は結婚し、記念すべき私の初孫も昨年誕生しました。
 在日外国人世帯である彼らの生活は予想通り様々な問題を抱えています。
 厳しい雇用環境や労働条件は、運良く就職できた息子にも常に付きまとっている問題です。
 また帰化するのか、それとも将来は中国に家族で帰るのかという点も大きな問題です。
 それでも彼らは明るくたくましく暮らしています。
 『お互いを信頼し、相手の立場を尊重して考えていけば解決できない問題はないのではないか』彼らを見ているとそう思います。



 娘を想う父親の心情
 愛する人とともに生きていきたい2人の想い
 人権問題への示唆
 国際結婚が抱える問題など
 いろいろ考えさせられるお父さんの投稿でした。

 
この道をいけばどうなるものか危ぶむなかれ、危ぶめば道は無し。
踏み出せば一足が道となり、一足が道となる。
迷わずいけよ、いけばわかるさ。
(一休和尚)

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