アメコミとラーメン

35年越しの恋のようなもの、Moorcockのグラフィックノベル


今回は非常に稀有な記事。ヘッダーにはMoorcockについて気が向けば書くと書いておきながら、これまで書いたことなかった。ついにその時が来たね。日本のAmazonからこの作品を買うと10,000円ぐらいするので、我慢していたんだけど、最近2,000円台で買えるものがあったので、ャ`ってしまった。話には聞いたことがあるけど、読んだことがなかった、Erekoseシリーズの第三作目にあたる。標題の通りで35年間ぐらい読みたかった。その他にも短編があるらしいが、もう読まなくても良いかな。

プロットはMichael Moorcock、(おそらく話の流れと台詞も)画をHoward V. Chaykinが担当している。Chaykinはこの作品が発表された1970年代には既に一流のアメコミ画家として名が通っていた人。1970年代にMarvelから出版されたSTAR WARSも彼が画を描いていた。確かに上手い。

粗筋を手短に紹介。別の次元から召喚されたErekose。この世界での彼の名前はClen of Clen Gar。Hellと呼ばれている地域の蛮人が、酸性雨に苦しんでいる。その元凶はHeavenと呼ばれている地域の住人と考えた蛮人たちは、二つの地域の緩衝地帯Dream Marchesに攻め込んできた。それを防ごうとするErekose。

他のアメコミレビューと同じように、気に入ったシーン、台詞等を紹介。相変わらずのMoorcock節は堪能できたと思う。彼の作品の中に、単純な善悪はない。そして、Erekoseだって善人ってわけじゃない。そこが、他のSF作家と一線画すところで、それこそ35年前の自分は大好きだった。5年ぐらい前に彼の代表作Elricシリーズの新作を読んだ時の不満感はこの作品では感じられなかった。この当時のMoorcockはやはり凄かったんだな。

その善人だってわけじゃないって理由の一つ。Tanelornという永遠の都市を目指し、やがては最愛のErmizhadに再び出会うことを望む彼。しかし、この土地で出会った人妻にも惹かれちゃう。(男としてはわかるけど、ヒーローとしては失格。)

Heavenという都市も皮肉な名前で良い。統治している人間は屑。そして彼の妻も屑。住人も退廃している。Hellの蛮人達が彼等を疑うのも無理はない。

出だしでAngelと言われる生物をErekoseが救い。その生物が、この世界を襲う酸性雨の原因であり、そして、Erekoseが守ろうとしているDream Marchesの住人を救うことになるところがまた面白いな。浦島太郎伝説のようでもある。Dream Marchesの災難の原因が災難を救う手立てになっちゃうところは、Moorcockらしい捻りだ。

最終シーンはゾッとするほど好き。早川書房から出版された「タネローンを求めて(原題Quest for Tanelorn)」に登場する自動的に動く船の目の見えない船長の登場だ。恐らくこの話が「タネローンを求めて」につながるんだろう。

この作品で唯一の欠点は、Erekoseのコスチュームかな。紫のタイツ、胸当てにあるハートマーク、髑髏マークの盾。目立つけどね。

Erekoseシリーズの出版順に関しては、Wikipediaの記述を参考とした。
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