kouzi_2007~

発火村塾 established 2007

大宇宙の大怪魔 第三話

2015-02-14 09:36:34 | 連続小説
これまでのお話
第一話
第二話
ネタ元は小松左京「明日泥棒」です。タイトルは藤子不二雄の「ドラえもん」よりそのまんま拝借しました。その他いろいろ模倣です。ごめんなさい。


第三話
エヌ氏の十畳の居間兼応接間でにぎやかな酒宴がはじまった。その仙人めいた珍客は自らを旅人のゴエモンだと名乗った。
エム子はチーズやら生ハムやら冷凍の餃子などを出したが、ゴエモンは白い飯ばかりを食った。白飯をつまみにビールを飲むのである。エス子は高校生なので酒は飲めないが、注げば注ぐだけ飲み、また口一杯に白飯を搔きこむゴエモンが面白いらしく、「ゴエモンちゃんゴエモンちゃん」と言って積極的に酌をし、飯をよそった。息子のエル男は普段は引き篭もりで自室を出てこないのだが、今日はいっしょに酒を飲み、その有様を携帯端末を通してインターネットで実況した。ビールの買い置きを飲みつくしたのでエヌ氏はウイスキーを開けた。エム子は飯をまた五合炊くことになった。
ゴエモンは顔中のヒゲで表情こそは解らなかったが、禿げ頭が血行良く火照りだしていた。
「あはは。頭、テラッテラだよ!」
エス子が気安く禿げを撫でると、ゴエモンはフゴーと猛烈な音を立てて鼻から息を噴出した。エル男は爆笑しながら携帯端末で写真を撮る。
「予言を授ける!」
ゴエモンは立ち上がった。全身を力ませながら仰け反り、禿げ頭は真っ赤に充血して血管が浮き出ている。ヒゲの下から鼻の穴を露出させシュウシュウと湯気を噴き出す。その異様な様に一瞬、全員が息を呑んだが、エヌ氏が笑い始めた。
「さっきの電車も何も無かったじゃないですか!あはははは。」
それをきっかけに爆笑が起こり、エス子が笑いながら禿げをポンポンと叩いた。
「極楽を見よ!」
そう叫んでゴエモンは大きなクシャミをした。途方も無く大きなクシャミで、大量の鼻水を吹き出した。
エス子は「ギャッ!」と言って避けたが間に合わずその鼻水を浴びてしまった。「ぎぇええええ!」と叫び半狂乱になる娘にエム子は駆け寄り、ティッシュペーパーで不浄を拭った。何枚も何枚もティッシュペーパーを引っ張り出して拭ったが拭いきれず、エム子の手のひらからあふれて垂れて落ちるほどである。エヌ氏はエム子を押しのけエス子を抱きかかえて風呂場に連れて行きシャワーの湯で娘が浴びた粘性の液体を洗い流した。そのあいだエル男は夢中で写真を撮り、実況を続けた。ゴエモンは力尽きたようにフニャりと倒れ、自らも鼻水にまみれたまま、寝てしまったのである。





大宇宙の大怪魔 第二話

2015-02-14 09:22:27 | 連続小説
これまでのお話
第一話


第二話
電話はエヌ氏からであった。
「今から仙人様を連れてく。お酒となにかおつまみを用意しておいてくれ。」
「仙人様?仙人様ってどなた様なの?え?なに?・・・!?」

果たしてエヌ氏は珍妙な老人を連れて帰ってきた。白髪で両眉と鼻ヒゲと顎ヒゲがつながって耳の穴からも毛が出ている。ヒゲだらけで顔がまったく見えなかったが、頭の天辺は禿げあがって見事な光沢があった。大層な厚着で、毛糸のセーターの上に厚手の生地のジャケットを着て前ボタンを全部留めている。その上に女物の着物をすそを引きずりながら羽織り、半ズボンで黒いニーソックスを履き、靴はくたびれたローファーである。そのうえパンパンに膨れた大きな紙袋を両手に抱えているのだ。
出迎えたエス子とエム子は仰天した。どう対応して良いのかわからないし、むしろ関わりたくないと思った。だが、エヌ氏がどうぞどうぞとスリッパを差し出すと、エヌ氏、エス子、エム子と順番に時代劇のような大袈裟なお辞儀をしてスリッパを使い、上がりかまちでいちど振り返り脱いだ履物をそろえ、向き直って「お頼み申す」と一礼したその堂々とした態度に気圧され、つくり笑いで迎えてしまったのである。