投資家の目線

投資家の目線660(年金基金と米国インフラ投資)

 オーストラリアが、年金基金の一部をトランプ政権の米国インフラ投資に充てるようだ。同国のターンブル首相の訪米時には年金基金のファンドマネジャーも同行するという(↓)。

トランプ米大統領のインフラ計画、オーストラリアの年金が後押しへ (2018年2月22日 Bloomberg)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-02-22/P4J3336S972801


 昨年2月の訪米時に、安倍首相は米国インフラ投資に10年間で1,500億ドル(約17兆円)出資することを表明した。次の記事のように、同投資に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金を使用するという一部で報道されたことに対し、安倍首相は「政府として検討しているわけではない」、「そもそも私に指図する権限はないので、パッケージとしてあり得ない」と昨年2月3日の衆議院予算委員会で答弁している(↓)。

GPIF活用した米インフラ投資、検討してない=安倍首相 (2017年2月3日 ロイター)
http://reut.rs/2kyXTVQ

 
 GPIFの2017年度の第3四半期の運用資産額は162兆円である(↓)。

平成29年度第3四半期運用状況  年金積立金管理運用独立行政法人
http://www.gpif.go.jp/operation/state/pdf/h29_q3.pdf


 17兆円は資産額全体の1割以上に当たる額で、10年間かけてとはいえ、それだけの金額を米国インフラ投資に集中させるのはアセットアロケーション上、リスクが大きすぎると思う。


 今回のオーストラリア政府の動きは安倍政権にプレッシャーになるだろう。GPIFが、政権に最近はやりの「忖度」をする可能性は否定できない。公益社団法人日本証券アナリスト協会の職業行為基準には、顧客等の信任関係にある者の最善の利益を図ることに専念し、自己や第三者の利益を顧客の利益に優先させてはならないとする忠実義務がある。年金基金とその理事も信任関係として代表的なものである。GPIFの理事が年金加入者の利益を顧みず、安倍政権の利益のために資金の一部を米国インフラ投資に充当するなら、忠実義務に違反することになるだろう。
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