投資家の目線

投資家の目線163(堀江被告の控訴審)

 堀江被告の控訴審は一審を支持し、実刑が下った。産経新聞web版に載っていた判決要旨によれば、東京高裁は『組合において出資元の自社株(親会社のものを含む)を売却した場合の株式売却益に基づく配当金の計上方法について』の弁護側の『企業会計の実務において明確な指針はなかったから、「会計処理を潜脱」などというのは当たらない』という反論に対し、『実務においては、自社株式の処分差益は「その他資本剰余金」に計上するとの確立した基準があったものの、組合を介在させて悪用するような事例を想定しておらず、悪用防止のための会計基準とか指針を確立していなかった状況下で、本件(2)はその点に着目して、まさに悪用したものである』としている。
 しかし、重要なのは「会計基準とか指針を確立していなかった状況下」で、すべての人が高裁が正しいと信じる会計処理にたどり着けたかどうかであろう。経営者が、弁護士や公認会計士のような高度な法律や会計の知識を持たなければならないとするのはナンセンスだ。そもそも誰でも一定範囲の結果がもたらされないようなルールは欠陥商品だ。むしろ、誰でも同一の解釈ができるルールを作り上げることこそが社会にとって役立つことだ。専門家にしか解釈できなければ端からはブラックボックスとしか思えず、専門家に対する不審を招くだけだ。今のままでは、まるでサブプライムローンを証券化したぐらいの中身の分かり難さだ。
 次に、高裁は堀江被告の規範意識に言及しているが、そもそも一介の判事に「経営者はかくあるべき」などというものを規定する権限があるのだろうか?むしろ、株主にリターンを還元する意識の薄い経営者こそ規範意識が薄いといえるはずだが、判事のいう規範意識はそれにかなっているのか?それに反して唯一の規範を定める権限があると思っているのなら、彼らの驕りを感じる。

 ライブドアと日興コーディアルグループでは、事件の内容は類似しているのに行政の取り扱いは大きく異なる。また、グッドウィルのように派遣会社への処分は経営に大きな影響を及ぼすような厳しい処分を課すのに、派遣労働者を実質使っていた大手メーカーへの処分はそれほどではない。このような不公平を感じさせる行政処分が続くならば「寄らば大樹の陰」、新興企業に投資はできない。

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