投資家の目線

投資家の目線37(ライブドア事件の起訴状を読む 下)

 株式百分割が発表された日(04/11/08)、2004年第3四半期のLDMの業績の発表された日(04/11/12)前後の株価(終値)の動きを見てみる。
日付
04/11/05 04/11/08 04/11/11 04/11/12 04/11/15 04/11/16 04/11/17 04/11/18
LDM 2,410 2,200 3,500 4,000 4,500 4,000 3,680 3,880
JDQ 82.64 82.67 83.01 84.3 85.61 85.3 85.34 84.89
(今回JDQはJASDAQ指数を使用)
株式百分割の発表で株価の値動きが上下に荒く、業績発表の株価に対する影響を測定するのは困難と思われる。

 利益は意見、キャッシュは事実という。利益は作られる。かつて大手スーパーのダイエーでは不透明なリベートが問題とされた。リベートは他のスーパーでも見られるものであるが、ダイエーは種類も多く金額も大きいといわれていたそうである。そのリベートは同社の取引先では前貸しと会計処理されていたが、ダイエー内部ではそのリベートは約定書も交わしており、契約書は前借りとはなっていなかったという。しかし、このようなやり方はルールの範囲内なのであろう。カネボウの場合と異なり、産業再生機構も問題としていない。今回の疑惑も詳細な事実の積み重ねが必要になるのではないだろうか。
 また、昨年度問題となった銀行の税効果会計に関わる巨額の繰延税金資産も思い出される。三井住友フィナンシャルグループの「『経営の健全化のための計画』の履行状況に関する報告書(平成16年12月)」によれば、平成17年3月期(計画)でTierⅠ3.6兆円に対し、税効果相当額が1.7兆円と47約%にも達してしまった。繰延税金資産は将来に課税所得があると合理的に見積もられるときに場合に認識されるもので、ルールで認められているとはいえ、課税所得の見積もり方で変わるようなバーチャルなものをそこまで銀行の自己資本に認めていいものかという、「ルール」と「節度」の優先度を問うものであった。結局、銀行側の主張は金融庁に認められず、当時の同グループの西川善文頭取は退任することになった。ただし、それは同氏の節度が問題にされたのではなく、経営健全化計画の未達による経営責任によるものと考えられる。そうでなければ西川氏が日本郵政の社長になることはなかったであろう。
 有価証券報告書虚偽記載の起訴状はまだ見られないが、投資事業組合の問題についてもいまだはっきりしない。問題の投資事業組合は実質的にライブドアの傘下にあったとされているが、直接運営を行っていたのはエイチ・エス証券の子会社「日本M&Aマネジメント株式会社」であり、同社の社内調査の最終的な結果はまだ公表されていない。Special Purpose Vehicleの連結の範囲については大手証券会社でもその対応が話題となっており、何をもって実質的な傘下にあるか、連結決算の対象とするか否かの認定において今後他の企業も巻き込んだ大きな問題に発展していくのではないだろうか?

 しかし、Nikkei Netの経済羅針盤において、久保利英明氏のニッポン放送取締役を辞めた理由のポイントには驚いた。ライブドア社の800億円の買収資金調達がMSCB(転換価格修正条項付き転換社債)で行われた事が挙げられているのである。フジテレビによるニッポン放送の買収資金800億円を調達した転換社債も、クーポンがない代わりに転換価格修正条項が付いていたはずであるが・・・。

参考文献:「ダイエーの蹉跌」-企業参謀の告白 田畑俊明著 日経BP社

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