投資家の目線

投資家の目線157(経産省企業価値研究会の報告書)

 6月12日の日本経済新聞朝刊に、経済産業省の企業価値研究会の敵対的買収防衛策のあり方に関する報告書の記事が掲載された。そのなかで、『企業価値と株主利益は同義で「キャッシュフローの割引現在価値」を指すと明記した』とのことだ。したがって、従業員や取引先などとの問題は、キャッシュフローを増大させたり割引率を低下させたりするのに寄与するか否かで説明されなければならない。
 アデランスHDの取締役再任否決問題に絡み、6月10日の同紙の一目均衡では株主には資格と義務が伴うということが書かれていた。株主利益を拡大できない、問題のある経営者を野放しにしないことが株主の責務だ。資本の出し手はもはや広大な領地を持つ貴族階級ではない。年金、保険、預金、大学の基金、政府系ファンド等、株式リターンの向上は既に多くの人々に関係する問題だ。確定給付型年金など受給者への支払い金額が確定しているものであっても、運用成績が予定利率に届かない逆ザヤ状態が続けばどこかで資金の補填が必要になるだろう(でなければ制度の破綻だ)。
 今回の否決にしても、会社側は株主とどれだけ具体的に踏み込んだコミュニケーションをとったのだろうか。また、小口株主がこぞって会社提案に反対した結果として否決されたような場合、会社への対案など出しようがない。「米国の素顔は経営者主権の国」というが、だからこそ最近は牽制のためにCEOと取締役会議長分離などの株主要求が出ているのではないだろうか。

 数年前の日本航空の公募増資時の株価の大幅下落など、日本の経営者はファイナンスの問題に疎い人が多いのではないかと思う。ニッポン放送買収問題の際に、自社株式の流動性の高さを考慮してMSCBでの資金調達を決断した熊谷ライブドア元社長でも見習ったほうがよいのではないか。いずれにしても企業価値がファイナンス理論をベースに議論されることになったことは、Jパワーにとってタフな局面となるのではないだろうか?
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・6月13日に、日本生命保険と信託銀行5行がライブドアHDに計108億円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁が95億円の支払いを命じた。一方、西武鉄道への訴訟では信託銀行の賠償請求は棄却している。この差は何なのだろう?
・6月10日、宇都宮地裁の判事がストーカー規制法違反の罪で起訴された。

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