投資家の目線

投資家の目線584(株式の決済期間短縮)

 2019年4~5月頃、日本の株式の決済期間が短縮され、約定から3営業日目(T+2)にするようだ。2018年前半には国債の決済期間も短縮され、約定日から2営業日目(T+1)にするという。決済期間の短縮は、非居住者の取引に大きく影響すると思う。日本における非居住者の資産運用は、日本国内の資産運用会社に委託することが多い。しかし、資産を管理するカストディーは例えば英米などの外国にあることが多く、日本の資産運用会社は海外のカストディーに受渡指示を出し、そこから日本国内にあるサブカストディーに受渡指示が出され、証券を決済することになる。そのため、もし決済指示にミスがあったなら、訂正の指示が出せる期間も短くなり、フェイルが多くなるのではないだろうか?手数料が自由化されたので、例えば手数料率が売買金額の何%とした場合、1円未満を切り捨てにするか、または四捨五入するかなどで、資産運用会社と証券会社の間で指示した決済金額が異なることが起こりうる。このような点は、現在解決しているのだろうか?

 また、同一銘柄でも約定単価ごとに付け合わせするカストディーと約定単価に関係なく総約定株数と総約定金額で付け合わせするカストディーがあるなど、各カストディーで受渡指示の仕方を共通化しないと、資産運用会社と証券会社の受渡指示の付け合わせが大変だ。かつてはテレックスで受渡指示を出すことが多かったが、受渡指示の共通化が図れればコンピューター上で付け合わせをすることが可能になり、エラーがあったものだけ人手を介するようにすれば決済に要する人員も少なくて済むだろう。さらに、代用有価証券の差し入れ指示をどうするかの問題もあるだろう。

 決済の短期化には売買から受渡までにカウンターパーティーが破たんするリスクを削減できるメリットがあるが、十分な準備をしておかないとデメリットの方が多くなりそうだ。


 なお、金融商品取引法の有価証券ではないが、企業の手形の利用が減っているため愛媛県の手形交換所が1か所に集約されると報じられていた(「愛媛の手形交換所、松山に10月集約、県銀行協会、利用減で。」 2016/8/04 日本経済新聞 地方経済面 四国)。これも決済の電子化の影響を受けたものだろう。
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