投資家の目線

投資家の目線32(ライブドア疑惑について考える)

 先週はライブドア社の、偽装取引、粉飾決算疑惑が話題となった。報道の初期段階において具体的にどのようなところが容疑に問われているのかさっぱりわからなかったが、週末にかけてようやく具体的な問題点が報道されるようになってきた。
 1つがライブドアマーケティング社(以下LDM社)の投資事業組合を通したマネーライフ社(以下ML社)の株式交換による合併時の取引である。報道では投資事業組合が実質的にライブドア社の支配下にあったとされているが、一方、1月20日の日経金融新聞によれば投資事業組合の運営会社側は「違法性はない」といっている。そこのところが今後のポイントの1つとなってくるのではないだろうか?ライブドア社は、法・制度を最大限に利用してきた企業である。例えば、ライブドア社が本業として投資事業を規定しているのならば、金融会社と同様に投資から得られる収益が売上(営業収益)に計上されていてもおかしくない。同社はうまくやったのだろうが、それだけでは違法とはいえないだろう。
 ファイナンスのテキストでは、買収側の経営者が合併後の株価に楽観的ならば現金で買収し、株価が過大評価されていると考える経営者は株式交換による買収を選ぶとされる。であれば、LDM社がML社を株式交換で買収しようとするならばLDM社の株価は過大評価されているのだから、同社の株式の収益率は市場平均に比べて低下するはずである。米国の論文(注)によれば、1975年から1984年の間に株式交換での合併が公表された際には市場調整後の平均が3.2%低下し、現金買収については0.8%の利益が生じているそうである。日本での検証結果ではないが、この結果をみると株式交換による合併発表で株価のつり上げを図ったとはいえないことになる。今後日本でもこのような研究が行われることに期待したい。
 今回の騒動では、竹中大臣が批判の矢面に立っている。今回の問題で通信・放送改革に支障が出ないことに期待したい。

参考文献「コーポレートファイナンス第6版下」 日経BP社 
リチャード・ブリーリー、スチュワート・マイヤーズ 著

(注)J.R.Franks、R.S.Harris、and S.Titman
“The Postmerger Share-Price Performance of Acquiring Firms” Journal of Financial Economics 29(March 1991)

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