投資家の目線

投資家の目線699(ゴーン会長逮捕と対米自動車輸出規制)

 11月19日、日産自動車のカルロス・ゴーン会長が逮捕された。仏自動車メーカーのルノーとの経営統合を巡ってFT紙は、「日産側の経営陣は強く反対していたといい、ゴーン会長の逮捕劇の背景に日産の経営を巡る内部闘争があったと示唆した。」(「ゴーン会長側近2人が実行――ルノーとの統合、ゴーン会長計画、日産経営陣は反対、FT報道。」 2018/11/21 日本経済新聞 夕刊)と報じている。日産自動車の西川社長はクーデターではないとしているが、ルノーとの統合に反対する勢力が統合を推進するゴーン会長の追い落としを図ったと考えた方が妥当だろう。

 日米自動車交渉で、「米国側からは、174万台の対米自動車輸出のうち最大100万台もの輸出削減を望む声もあった」(「日米自動車交渉、数量規制の議論は不可避=自民・阿達氏」 2018/11/12 ロイター)と報じられている。日産自動車、三菱自動車両社のホームぺージを見ると、2017年度の日本から北米向け輸出台数は、日産自動車が327,745台、三菱自動車が113,790台だった。北米は米国だけではないが、輸出のほとんどは米国市場向けだろう。両社が脱落すれば対米輸出を40万台以上削減することができ、日米自動車摩擦の緩和に役立つだろう。ただし、2017年度の日産自動車の国内生産台数は985,541台、三菱自動車が589,663台(同ホームページ)なので、北米向け輸出は国内生産台数のそれぞれ33%、19%を占めており、対米輸出の削減は両社の国内生産体制、下請け企業の経営に大きな打撃になるだろう。

 自動車業界関係者談として「日産は生産台数の7割、販売台数の9割を海外で稼いでいて、もはや外資メーカーのようなものです。日本メーカーはトヨタ自動車だけが生き残ればいいというのが官邸の考え方です。所管する世耕経産相が他人事のような発言を繰り返していますが、あれはまさに官邸の本音。安倍首相は切れ者のマクロン大統領とコトを構える気はありません」(「安倍政権見殺し ルノーにしゃぶり尽くされる日産の末路」 2018/11/23 日刊ゲンダイDIGITAL)とも報じられているが、本当にそうなのだろうか?日産自動車本社は、20日に川口専務が面会した菅官房長官の選挙区にある。選挙区から大手企業の本社が消滅するのは、政治家としては好ましくないだろう。

 第2次大戦で日本に占領されたシンガポール人が戦後、「いまとなって考えればですが、実のところ、日本人は・・・ドイツ人ほど恐ろしくなかったですね。ドイツ人はきちんと計算して、事を運んでいるように思えます。それに比べ日本人の方は場当たり的でしたからね」(「日本のシンガポール占領 証言=「昭南島」の三年半」 シンガポール・ヘリテージ・ソサエティ編 リー・ギョク・ボイ著 越田稜監訳 凱風社)と証言している。今回の日産自動車の事件、日本政府の対応も対米自動車問題に連動したものではなく、相も変わらずの場当たり的な対応にすぎないのではないだろうか。

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