愈々、明時代に入る。
北方の異民族国家である元王朝から、
純漢民族の統一国家である明朝への変換は政治上は大変革であったが、
文化上はそれ程の大変革は無かった。
中国本来の伝統の復興を目指したのが元王朝の基本政策であり、
明王朝の目指した路線と同じものであったからである。
明中期に入り、文徴明、祝允明の出現によって、
書界に新しい機運が盛り上がった。
二人とも蘇州(呉中)の出身であるが、
当時の蘇州は経済発展が著しく、隆盛を極めていた。
このような時代背景も見逃せない。
二人は王羲之に遡り、習得した後に、
黄庭堅や蘇軾を取り入れたと言う。
張弼
天真爛漫な性格で酒に酔うと狂草を良く書したという。
残されている筆跡は稀だが、当時は著名な書き手だったらしい。
蘇軾書李太白仙詩跋(1483)
蘇軾の李太白仙詩巻に添えた行書の跋である。