公園に響いていたブランコのギーコギーコと錆びた音が止んだかと思うと、
ケンの目の前に亜実が立っていて、ケンを抱きしめた。
亜実の甘い香水の匂いが、鼻腔を通し全身に伝わり、思わず体が硬直した。
「前から気にはなっていたんだ。いつも遠くから見ていていいと思っていたし、
今日、一番近くで見れて、わかったことがあるの。
一緒にいて、すごく楽しかった。私、ケン君と付き合いたい」
目の前には、赤い浴衣を着た可憐な女性が自分を求めている。
手を伸ばせば、すぐにでも、自分のものになることが出来る。
時間にして数秒だったが、思いが複雑に交錯し、やけに長く感じた。
4
連日の猛暑で真夏日が更新し続けていた朝、ケンは携帯電話をアパートに置き、
どこへ行くとも考えず、晴天のもと外に出た。
人がいない、山や川の自然があるところへ行きたかった。
ただの現実逃避なのかもしれないが、ケンは自分探しの旅と自分に言い聞かせていた。
通い慣れたキョウコのアパートをバスが通るため、駅まで歩くことにした。
30分以上かかるが敢えてそちらを選択した。
首筋に汗が滴り落ちる頃にようやく駅に着いた。
行く宛もないため適当なバスに乗ることにした。
後ろの窓側の席に座ると、ウォークマンのヴォリュームを上げ、
外の高層ビルが立ち並ぶ街並みを眺め、深く息をついた。
考えに耽ると繰り返されたのはなぜこうなったのだろう、
どうして悪いことばかり続くのだろうという答えの出ない自問自答だった。
三時間ほど過ぎると、田園風景が目の前に広がり、バスが止まった。
バスを降り、夏風が運ぶ乾いた草の匂いと、照りつける太陽。
雄々しく聳え立つ入道雲、そして耳よりも心に響くセミの鳴き声がケンを迎えた。
丘を登ると、小さな小川のせせらぎが聴こえてきた。
ケンの目の前に亜実が立っていて、ケンを抱きしめた。
亜実の甘い香水の匂いが、鼻腔を通し全身に伝わり、思わず体が硬直した。
「前から気にはなっていたんだ。いつも遠くから見ていていいと思っていたし、
今日、一番近くで見れて、わかったことがあるの。
一緒にいて、すごく楽しかった。私、ケン君と付き合いたい」
目の前には、赤い浴衣を着た可憐な女性が自分を求めている。
手を伸ばせば、すぐにでも、自分のものになることが出来る。
時間にして数秒だったが、思いが複雑に交錯し、やけに長く感じた。
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連日の猛暑で真夏日が更新し続けていた朝、ケンは携帯電話をアパートに置き、
どこへ行くとも考えず、晴天のもと外に出た。
人がいない、山や川の自然があるところへ行きたかった。
ただの現実逃避なのかもしれないが、ケンは自分探しの旅と自分に言い聞かせていた。
通い慣れたキョウコのアパートをバスが通るため、駅まで歩くことにした。
30分以上かかるが敢えてそちらを選択した。
首筋に汗が滴り落ちる頃にようやく駅に着いた。
行く宛もないため適当なバスに乗ることにした。
後ろの窓側の席に座ると、ウォークマンのヴォリュームを上げ、
外の高層ビルが立ち並ぶ街並みを眺め、深く息をついた。
考えに耽ると繰り返されたのはなぜこうなったのだろう、
どうして悪いことばかり続くのだろうという答えの出ない自問自答だった。
三時間ほど過ぎると、田園風景が目の前に広がり、バスが止まった。
バスを降り、夏風が運ぶ乾いた草の匂いと、照りつける太陽。
雄々しく聳え立つ入道雲、そして耳よりも心に響くセミの鳴き声がケンを迎えた。
丘を登ると、小さな小川のせせらぎが聴こえてきた。