若い頃というのは、やがて自分が年十年後の未来に老人と呼ばれる世代になってしまうことは、あまりリアルには感じられなかったりする。
理屈では分かっていても。
自分も、若かった頃、自分が今の私のオジサン年代になることは、あまりリアルには感じていなかった。
ましてや、いつかは老人と呼ばれる世代になることは特に。これは生き続けている限り、誰にでも訪れる出来事だ。
こういのはきっと私だけではないだろうと思う。
例えばシンガーソングライターが、若い頃に歌を作る場合、その人の世代ならではの感じ方や見方を、歌に込める。
若い頃に作る歌は、若い世代の視点で作るのは自然なこと。
若い頃に、当時の老人世代のことを歌った曲があるとして、その曲の作者が、その曲で歌われた老人世代の年齢になった場合、その歌に対してどんなことを思うのだろう。
しかも、その作者がシンガーソングライターで、自ら歌う側の人間だった場合。
実は・・・私は高校生の頃、当時の老人のことを歌にした曲を作ったことがある。
今その歌詞を読みかえすと、けっこうキツイ歌詞の部分があるなあ・・と思う。
全体的にはユーモラスな曲調ではあるのだが、歌詞の中には失礼な言葉も出てきている。
老人になると、どうしても全体的な動作のスピードが遅くなる。
例えば歩く速度とか、動作のタイミングとか・・。
これらのことは、どうにも仕方のないことではあるのだが、上記の自作曲はそれらのことを歌詞にしている。
で、・・・少し冷やかしてる部分もある。
全体的には、暖かい目では見ているのだけど。
その内容は・・その歌を作った時点から何十年後の未来において、やがて自分もそうなるということは、あまり想定されていない気がする。
まあ、当時は自分がいずれ老人になるという現実は、あまり実感として感じてなかったから、他人事のように気楽に書けたのだろうと思う。
その自作曲を、私が老人になった時に、誰かが私の目の前で私に歌って聞かせたら、私はどんなことを思うだろう。
なまじ、それは自分自身が作った曲なだけに・・。
そういえば、拓郎さんの若い頃の曲で「老人の詩」という曲があった。
確か、ライブアルバム「ともだち」に入っていたはずだ。
拓郎さんの「老人の詩」は、拓郎さんの作った「青春の詩」の替え歌であった。
なので、元々は「青春の詩」というものが土台になっていた。
「青春の詩」は、当時の若者のライフスタイルなどをスケッチブックのように歌詞にし、最後に若者世代に呼びかけるようなメッセージを込めた歌詞になっていた。
で、「老人の詩」というのは、拓郎さんが作った原曲「青春の詩」の「老人バージョン」であった。
「青春の詩」のパロディという感じ。
買え歌として歌詞を書いたのは、そのライブで拓郎さんのバッキングをやっていた方。
なので、決して拓郎さん本人ではなかった。
とはいえ、ライブでそれを歌っていたのは拓郎さん本人。
もっとも拓郎さんは、その歌詞に半分呆れながら(?)冗談みたいな感じで歌っていた。
実際その曲を拓郎さんがそのライブで披露するのを聞いたお客さんの笑いも音源には含まれていた。
ライブでは一種の余興みたいな感じで、決して拓郎さんの正式レパートリーという感じではなかっただろう。
あくまでもパロディではあったが、歌詞だけ読んでみると、けっこうキツイ。
特に終盤の問いかけ部分、メッセージ部分の歌詞は、老人にとってはけっこう辛辣な歌詞になってしまっている。もっとも、その辛辣な部分は、あくまでも原曲「青春の詩」の歌詞をもじろうとしているがゆえに、若者版ではない老人版ではキツくなってしまっていた感じ。
全体的にはブラックユーモア的な感じ。
この曲から時は流れ・・拓郎さんも、そして「老人の詩」の歌詞を書いた方も、そしてそのライブを見て笑っていた方も、そして当時そのライブアルバムを聴いていたリスナーも、年齢的には、昔でいえば老年期と呼ばれる年代に入ってきていたりする人は多いのではないか。
もしくは、老年期にだんだん近づいていっている方も多いはず。
まあ、ライブを見ていた方やリスナー全員ではないかもしれないが、少なくても多くの方がそうであろう。
まだ老年期にはほど遠く、「遠い先」のこととして、自分には関係ないと思って聴き、笑っていた、当時の若い人が今この曲を聴きなおすと・・・健康状態や年齢によっては、笑えなかったりする場合は・・あるだろうなあ。
この買え歌の歌詞を書いた方が、今この曲の音源を聴いたら、どんなことを思うんだろう。
まあ、あくまでも冗談曲として、笑い飛ばして聴ける老人なら、まだまだ元気でいられるだろうし、きっと長生き出来る気はする。
そんな余裕があれば、いいなとは思うけれど。
ラジオで毒蝮三太夫さんがご年配の方に毒舌を吐いても、皆それを笑い飛ばしていられるように。
もっとも、毒蝮さんの言葉には、裏に優しさがあるからてはあるが。
だが、笑いとばせるぐらい、太い心でいたいものだ。
なんてったって、老いというものは、心の状態が拍車をかけるとも思うし。
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