中学の頃、ある友人宅に泊りに行った時、その部屋には地下室があった。
その友、T君の家はけっこう裕福だったのか、T君の部屋は母屋から独立した別室になっており、二間あった。
二間あるだけでも羨ましかったのだが、T君の部屋はその二間だけではなかった。
それは実際に彼の部屋に行ってみて初めて気づいたことだったのだが、彼の二間のうちの一室の床は一部が取り外せるようになっていた。
その一部を取り外すと、なんと!
地下室に続く急な階段が現れた。
つまり、T君の部屋には地下室もあったのだ。
都合、T君の部屋は地下室も混ぜれば三間あったことになる。
二間あるだけでも羨ましかったし、三間ならなおざらだった。
しかも、そのうちの一室が地下室になっている・・というのは、やたらかっこよく思えたのを覚えている。
大人が、家を建てる時に、地下室も設置するというのは、ある。
だが、まだ中学生だったT君が、地下室のある個室を持っていた・・というか、与えられていた・・というのは、けっこう驚いたものだった。
だいたい、地下室のある個室を持ってる友人なんてのは、それまで見たことなかったし、その後も、少なくても学生時代は見た覚えがない。
学生時代全体を通じて、地下室のある個室を持っていたのは、そのT君だけだった。
初めて降りたその地下室の個室は、なにやら秘密基地のようでもあり、潜水艦の中に入ったような気分でもあり、わくわくした覚えがある。
そのT君の「上の二間」は、一室がステレオが置いてある部屋で、その隣の部屋は寝室になっていた。
そして更に地下室には・・・・あれ?
どんな内装だったろう・・何が置いてあっただろう・・・思い出せない。
もしかしたら本棚か何かが置いてあったような気がするが、よく覚えていない。
ともかく、地下室がある・・というインパクトが大きすぎて、内装の記憶がふっとんでいる。
今思えば、中学生のT君ひとりに、地下室を含む三部屋が個室として与えられていたなんて、相当ゴージャスではある。
もてあましたりしなかったのかな。
学生時代、その部屋のことを思い出して、、もしも自分にそんな個室が与えられていたら、どのように使ったかなあ・・・なんて思ったりしたことはあった。
というか、ピンポイント的には、その地下室を自分だったらどう使ったかなあ・・ということを主に考えた。
そうなると答は簡単に出た。
録音部屋にしたと思う。
そう、ちょっとした個人スタジオに。
当時はまだカセットテープの時代だったので、地下室に録音機材を設置し、そこで多重録音をしただろうと思った。
まあ、学生時代だったし、本格的な機材は無理にしろ、カセットを2本入れられるダブルカセットデッキやミキサーを設置しだだろう。
地下室にこもり、ふたを閉めてしまえば、余計な音はシャットアウトできそうな気がした。
1階の部屋では窓の外から色んな音が聞こえてきてたから。電車の音、車の音、あるいは隣の住人のたてる音など・・。
それは当時の私の部屋も同様だった。 自作曲をラジカセやデッキに録音していると、どうしても曲の途中で、余計な雑音が入ってしまっていたから。
長い曲だったりすると、なおさら。
当時はまだ私はギターは、親に買ってもらった安物1本しか持ってなかったが、いずれ新たなギターを買ったら、安いものは地上階の部屋に置き、新しいギターは若干グレードアップした1本になるはずだから、新しいギターは地下室に置いて、いつでも録音できるようにしたい・・などと妄想を膨らませたものだった。
結局、そんな地下室は大人になっても実現しなかった。
だからこそ、中学生の時にすでに地下室のある個室を持ってたT君は、うらやましくて仕方なかった。
地下室のある個室を持っている学生なんて、今でもそう多くはないのではないだろうか。
地下室1室しかない・・というのではなく、ちゃんとした地上階の個室があるうえに更に地下室まである個室を与えられている子供は。
それでも、自分の部屋が与えられていただけでも、私はまだ幸せだったのだろうと思う。
もっとも自分の部屋とは言っても、寝る時は弟と一緒だったので、厳密には個室とはいえなかったかもしれない。
それはその部屋に2段ベッドがあり、上のベッドは私、下のベッドは弟・・・そんな共有状態だった。
それでも、弟が入ってくるのは夜寝る時だけだった。なので、昼間や勉強してる(あまり勉強はしなかった私だが)時は、一応個室気分は味わえた。
友達の中には自室など与えてもらえない級友もいたことを考えれば、私は恵まれていたほうだったと思う。
ただ・・地下室つきの個室を与えられていたT君は・・・やはり特別だったのだろうなあ。
ちなみに・・私が個室らしき部屋を与えられたのは、中学に入ってからだった。
小学校時代は自室なんてものはなかったと思う。
でも、当時はそれは普通だったと思う。私は、そういうものだと思っていた。
だからこそ、中学に通うようになって、自室らしきものを与えられた時は嬉しかったし、そんな自分の空間が出来たからこそ、ラジオなども聴くようになったのだと思う。
そして、それがやがて・・ラジオの深夜放送にハマっていくきっかけにもなったのだと思う。
自分だけの空間・・それは、いずれ訪れる自立への意識にもつながったと思う。
もしも・・その空間の中に地下室まであったなら、なおさらだったろう。
ちょっとした隠れ家のような気分で。
さて・・あなたの子供時代の「自分だけの空間」は?
・・・まさか・・地下室まであったとか???
なお、写真は、この日記で触れた「友人の部屋」とは関係ありません。
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