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I Am Brian Wilson
本屋でたまたま見つけ、衝動買いした1冊「ブライアン・ウィルソン自伝」。
そう、イギリスからビートルズが出てきた時に、イギリスのビートルズに対するアメリカの回答といわれたロックバンド、ビーチボーイズのリーダーである。
ブライアンのファンとしてはスルーできなかった。
かなり分厚い本だったけど、一気に読み干せた。
私には自伝を書いてくれたら読んでみたいミュージシャンは何人かいるが、ブライアンはその中のひとりであった。
最初にこの本を手に取った時、分厚いなあ・・と思ったが、いざ買って読み始めたら、分厚さは全く気にならず、読み進められた。
これはディランの自伝や、マッカートニーの告白本を読んだ時と同じ感覚だった。
ブライアン・ウィルソンは私にとってディラン、ビートルズ、イーグルス、マイク・オールドフィールド、ジャンゴ・ラインハルトなどと同列の敬愛するミュージシャンである。
これは、ブライアン自身がペンを取って書いた自伝・・・というより、ブライアンへの膨大なインタビューを書籍化した感じの本であった。ブライアン独白・・・という感じ。
読んでて思ったのだが、時系列はけっこうあちこちに飛ぶ。完全に時系列にそった話ではない。
そういえばディランの自伝も、時系列はバラバラだったっけ。
元イーグルスのドン・フェルダーの自伝など、かなり時系列に沿っていたけれどね。
ブライアンの話は、色んな時代を行きつ戻りつする。
ともかく、ブライアンの記憶力には脱帽。ディランの自伝にも言えたことだが。
何十年も前の生活の1コマ1コマを、本当に細かく覚えているのに驚愕。
いつ頃、どこの店に誰と行き、何を食べたか・・・そんな細かい部分まで、時には「これでもか」とばかりに、記憶している。
全体的には家族への言及が多い。いかにブライアンが家族を大事に思っていたかがよくわかった。
妻、子供だち、兄弟、親族、両親などのエピソードが満載。
ブライアンのいたビーチ・ボーイズは、元々家族バンド・・というか、血縁バンドだったことも影響してたのだろう。
なにせ、ビーチボーイズといえば、ブライアン、弟のカール、もう一人の弟のデニス、そしていとこのマイク・ラブ、家族と親しい友人だったアル・ジャーディンがオリジナルメンバーで、さらに初期においては父親がマネージャーでもあった。
まさに血縁バンドであったと言ってもいいだろう。
家族への思いが人一倍強かったから、そういうメンバーでバンドが始まったのだろうし、また血縁がメンバーだったから、余計に血縁への思いは強くなっていたのかもしれない。
ビーチボーイズメンバーとの子供時代や若者時代の逸話はふんだんに出てくる。
今や故人となっているデニスやカールへの哀悼の思い、マイクラブとの複雑な関係、父親への複雑な思い、などは何度も繰り返されている。
今の妻や子供だたちへの愛情と共に。
また、精神科医ランディのことも、何度も触れられている。ランディとの過酷な日々は、ほとんどトラウマ的になっているのがわかる。
そういう家族関係の話も興味深かったが、私が一番興味深かったのは、世界の一流ミュージシャンとの交流のエピソードは本当に興味深かったし、面白かった。
例えばジョン・レノン。「ペットサウンド」を発表した時、いきなりブライアンに電話をしてきて、いかに「ペットサウンズ」が素晴らしいかを熱く伝えてきたこと。だったそれだけのために、レノンはわざわざブライアンに電話をしてきたのだ。
また、この自伝には書かれてなかったが、実際レノンは、ビートルズ時代に「ペットサウンズ」を初めて聴いた時、相棒のポール・マッカートニーに連絡して、このアルバムを聴かせ、「なあポール、このアルバムを越えるのは、容易じゃないぜ・・」と感嘆してたのは有名な話だ。
例えばボブ・ディラン。病院でブライアンが治療を受けていたら、たまたま同じ病院に親指の怪我で来ていたディランがブライアンの所につかつか歩いてきて挨拶してきたこと。その後ブライアンは自宅でのランチにディランを誘い、2人で音楽の話をした後、ブライアンが制作中だった楽曲にディランにボーカルを乗せてもらったこと。つまり、ブライアンとディランの世紀のコラボ実現!!
それと。ブライアンは息子の1人に、なんとディランという名前をつけ、その子を病院から抱いて帰る時に、その赤ん坊のために「ミスタータンバリンマン」を歌って聞かせたという。こんな逸話、私は全く知らなかった!
例えばドン・ヘンリー。そう、あのイーグルスのフロントマンのひとり。ドンはブライアンにやっと会えた時、いかにドンにとってビーチボーイズが大事な存在であったかをブライアンに熱弁し、ドンの愛聴盤だったビーチボーイズの「ペットサウンズ」のアルバムを持ってきて、それにブライアンがサインしてあげたら、ドンは感極まっていたこと。このへん、ドンは熱狂的な一般人ファンと変わらない態度ぶりで、なんか可愛い。
これらの逸話はほんの一握りだ。
ポール・マッカートニーは「心の友」的な存在で、その交流の逸話は何度も出てくるし、ローリングストーンズへのリスペクトも印象的。
こういう有名な超一流ミュージシャンとの交流話は、読んでて本当に楽しかった。
きっと、ブライアンにとっても楽しく忘れられない逸話なのだろう。
そういう超一流のミュージシャンとブライアンは同格なのだ。
だから相手も対等につきあってくる。
なんてったってブライアンは、あのビーチボーイズのメンバーなのだ。
しかも、そのビーチボーイズの音楽的なリーダーでもあった。
ビートルズ、ストーンズ、ディラン、それぞれのピークの時期に、同年代で互いに刺激を与えあったビーチボーイズの。
そういう大物ミュージシャンから敬意を払われている存在なのだ。
そういう大物と対等の関係で交流した逸話は、ブライアンならではであり、そのへんだけ拾い集めても面白い本になったと思う。
ビーチボーイズのアルバムへのブライアンの見解も興味深かった。ビーチボーイズのアルバムの世間一般の評価とは少し違う見方もあり、そのへんは当事者ならではの見解だと思った。
私は知識として全体的な話としては知ってることもけっこうあったが、当事者から語られると、より詳細が伝わってきたし、中には意外な感想もあったりして、やはり他者が書いた伝説よりもけっこうリアルだった。
ブライアンのファンなら、ある程度知ってたり、推測できた内容もあるだろうが、それはあくまでも他者がこれまで伝えてきた伝説によるもの。
ブライアン自身がそれらの伝説に言及してるのは、一読の価値はあると思う。
やはり、本人による自伝というのは、その主人公への思い入れがどれぐらいあるかによって違うだろう。
私はブライアンへの思い入れはかなりあるので、興味深く一気に読み干すことができた。
他人が書いたミュージシャンの伝記よりも、そのミュージシャン自身が書いた自伝のほうが私は興味深い。
こうなったら、マイク・オールドフィールド、ドン・ヘンリー、ミック・ジャガーあたりの自伝も読んでみたい。書いてくれないかなあ。
イーグルス関係に関しては、ドン・フェルダーの自伝は興味深く読んだので、今度はドン・ヘンリー側の見解も知りたいしね。
それと、ボブ・ディランには早く自伝の続きを書いてほしい。1冊目が興味深かったから、なおさら。
あと・・・亡くなってしまったジョン・レノンやジャンゴ・ラインハルトあたりの自伝も読んでみたかった・・・。
それと。ビートルズではとかくレノンやポール、ジョージに言及されることが多いが、リンゴの視点で書かれた当事者ならではの自伝も読んでみたい。リンゴには自伝執筆の話はよく行ってるらしいが、本人としては自伝を書く気はないらしい…。残念。きっと面白い話が聞けそうな気がするのだが。なんてったって個性派揃いのビートルズのメンバー達の潤滑油的な存在だったから、なおさら。
人の寿命はいつなんどきどんなことがあるかわからないし、そういう意味では、年輩になってしまってるミュージシャンは、なるべく元気なうちに・・・。
ともあれ、ブライアン・ウィルソンの自伝、ファンならチェックしておいて損のない本であるのは間違いないところだ。
きっと・・・山下達郎さんあたりも読んだんじゃないかなあ。この本を。
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