楽曲には色んなタイプがある。
歌詞が先に出来て、後からメロディをつけて、その後に編曲してできた曲。
メロディが先にあり、後から歌詞をつけて、その後に編曲した曲。
まず最初にサウンドがあって、それにメロディや歌詞を後から乗せてできた曲。
サウンドがメインの曲を更に細かく書くと、ギターなどで曲を作る場合、まず最初にコード進行があって、あとからそれにメロディを乗せて、さらに歌詞をつけてできた曲。
あるいは、まず最初にギターのリフがあって、後からそのリフにメロディを乗せてできた曲。
最初にギターリフがあったであろう曲としては、あくまでも私の主観だが、有名どころでは、例えばレッドツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」や、ローリングストーンズの「ジャンピングジャックフラッシュ」などは、曲作りの過程において、まず最初にギターリフがあったのではないかと私は思っている。
ギターリフがかなり強力で、キャッチーで、ある意味ボーカルの歌う主旋律よりも、ギターリフのほうがメインに聞こえる曲だ。
こういう曲はギターリフがまずあって、それに後からメロディなり歌詞をつけていったのではないか・・と、私は思っている。
ギターリフがメインの曲は、サウンド優先の曲の一例だと思う。
サウンド優先の曲に出てくるボーカルメロディ・・・いわゆるシンガーが歌う個所は、ともすればサウンドのほうが目立ったりする。
第3者がその曲を歌う場合、ボーカルメロディよりも、ギターリフのほうを口ずさんでしまう場合はけっこうある。
たとえば、あなたが「胸いっぱいの愛を」や「ジャンピングジャックフラッシュ」を口ずさむ場合、どこをまず口ずさんでしまうだろうか。
大半の人が、ギターリフを口ずさんでしまうのではないか。ボーカルメロディよりも。
とまあ、このへんのことは、以前にもこのブログで書いたことがあるような気がする。
今回書くのは、こういう曲を譜面にした場合のこと。
譜面を書く時って、それがバンドスコア系の譜面ならともかく、たいがいはシンガーの歌うボーカル部分の主旋律を譜面にすることが多いはず。
この場合の譜面とは、例えば本屋などで売られている童謡や唱歌の譜面入りの歌本とか、あるいは学校の音楽の授業に使う「音楽の教科書」に載る譜面のこと。
サウンド優先の楽曲の場合、ボーカル部分だけを譜面にしても、その曲の良さは伝わりにくいだろうな・・・と私は思う。
むしろ上記の曲の場合、ギターリフの方を譜面にしたほうが、その曲の一番いいところは伝わるかもしれないが、いかんせんギターリフメインの曲のギターリフは、同じことを繰り返す場合が多い。
「胸いっぱいの愛を」などは、冒頭のギターリフをかなり延々と同じフレーズを繰り返す。なので、歌本などでこの曲を載せる場合、ギターリフを載せると、延々と同じギターリフのメロディの繰り返しを掲載するだけになる。
そうなると、それに乗っているボーカルメロディは別物だから、その譜面を見ても歌えない。
となると、「歌う」ためには、やはり歌詞のついたボーカルメロディを載せるしかない。
でも
やはり
「胸いっぱいの愛を」は、ボーカルメロディだけを掲載しても、やはりそれだけでは物足りない気はする。やはりギターリフもないと、どうもしっくりこない。
それでも、「胸いっぱいの愛を」などはギターリフをボーカルメロディと併記すれば、ある程度曲の根幹の部分は伝わるかもしれない。あくまでも「歌」として。
だが、サウンド優先の曲には、楽器の音色や、バック演奏全体がかもしだす雰囲気がメインだったりする場合も多い。
例えばアラン・トゥーサンの「サザンナイト」。ピンクフロイドの「エコーズ」。
これらなどは、一応歌詞つきのボーカルメロディがありながらも、少なくても正式音源ではサウンドの方が目立つ。
これらの曲を、歌詞のついたボーカルメロディの部分だけを譜面にしても、その曲のオリジナルバージョンが意図しているような良さは伝わるだろうか。
これが、ボーカル部分の歌詞とメロディがメインの曲だと、譜面でもその曲の一番良い部分は伝わるとは思う。
例えば「明日に架ける橋」「イエスタディ」「ウィアーオールアローン」「風に吹かれて」などなど。これらなどは、ボーカルメロディだけでも成立しているし。風に吹かれてなどは、訳詞も載せたい歌だが、歌本には歌詞も載せられるから問題なしだろう。
だが、サウンド面がメインに思える曲は、ボーカルメロディ部分だけを譜面にしても、その曲の本来の良さは・・・伝わりにくいと思える。
前述の通り、バンドスコアみたいに、各パートの演奏方法も譜面になっている場合は別だが。
試しにネットで、「胸いっぱいの愛を」の譜面を検索してみた。
さすがに譜面まるまるは載っていなかったが、それでも譜面の一部は見ることができた。
あの、リフがメインの曲を、どう譜面にしてるのかなと思って見てみた。
すると、ボーカルメロディを中心にしながらも、しっかりギターリフも掲載されていた。
かといって、私が見たその譜面はバンドスコアではなく、あくまでも主旋律を譜面にしたものだが、主旋律の合間に、しっかりギターリフも掲載されていた。
やはりね。
あの曲は、歌唱部分の旋律だけでは、良さが伝わらないと思うし、譜面を書く人もそのへんは十分意識していた。
ギターのリフは、ボーカルの主旋律と、同格扱いであった。というか、むしろ主旋律の一部という感じでの表記だった。
やはり、そうなるよね。
もっとも、そういう譜面の書き方をしてる曲は、実は昔からある。
例えば、私が何気に見た童謡の楽譜本で。
童謡などの楽譜本では、たいがいボーカル部分の主旋律しか掲載されていない場合が多いが、「ひなまつり」という曲で、あのお決まりのイントロもしっかり主旋律扱いで、ボーカル部分の譜面の前に掲載されていることがある。
この場合、歌唱部分以外のパートも「指定」されていることになる。
もちろん、あのイントロも割愛され、ボーカル部分の主旋律しか掲載されていない楽譜本も多いのだが、演奏法・・というか、アレンジもボーカル主旋律と同格の扱いであった。
そう考えると、切っても切り離せないアレンジ方法、演奏方法は、主旋律と同格であり、その存在もまた主旋律の一部であるということなのだろう。
困るのは、リズムが重要な曲。例えば、ドゥービーブラザーズの「リッスントゥザミュージック」。これはボーカルメロディも魅力的だが、ギターで刻む独特のリズミカルなコードカッティングが秀逸。個人的にはこの曲は、あのリズムがあの曲のキモだと思っている。
だが、この曲を、歌本などのように「ボーカルの主旋律だけを掲載する譜面」では、良さを伝えるという点で不利だと思う。かといって、あのリズムカッティングを「歌本の譜面」に載せるのは・・・。
歌本ではそこまではやれないのではないか。
何度も書くようだが、バンドスコアならともかく。
ストーンズやツェッペリンのギターリフのように、リフに主旋律に負けないメロディ性があって、それが曲の骨格になっている場合は、そのリフのメロディを、ボーカル部分の主旋律と併記することによってある程度補えるかもしれないが、さすがにギターのコードカッティングが骨格となると・・・歌本の譜面では難しいのではないかと思う。
聴く分には、ボーカルメロディ主体でも、サウンド主体でも、曲の良さは伝わるが、歌本の譜面にした場合、サウンド主体の曲は・・・やはり良さは伝わりにくいだろうと思う。
そういう意味では、サウンド主体の曲は、歌本の譜面には・・・向かない・・と言ってしまったほうがいいと思う。
となると、歌本などで、曲をより幅広い世代に浸透させようとしたり、時代を超えて後世に残していく場合、サウンド優先の曲は・・・損ではあるし、不利ではある。
やはり、歌本の譜面に載せる曲には、「向き」「不向き」が・・・あると思える。
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