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気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

古井戸ライブ 「再会」を見てきた。

2015年10月21日 | レビュー(テレビ、ゲーム、本、映画、その他)

古井戸の再会ライブを見てきた。

古井戸とは、70年代に大活躍したフォークデュオで、メンバーは加奈崎芳太郎さんと、チャボさん(仲井戸麗市さん)。

 1979年に解散した。その後時が立ち、世にフォーク居酒屋などが登場すると、あらためてその再結成を望む声は強まっていたが、もう古井戸が復活することはないだろうという諦めの気持ちも、ファンの中にはあった。

 

それが・・限定とはいえ、一時的に復活し、ライブを行う日が来るとは・・。

こんな日が来るとは。

 

場所は鴬谷の東京キネマ倶楽部。

鴬谷という駅に、私はこれまで降り立ったことがあっただろうか。

東京に住んでいながら、私は記憶がない。もしかしたら、小学生の頃に、一度あった可能性もあるが、もう覚えてない。

小学生の頃私は切手を集めていたのだが、鴬谷にはけっこう有名な切手屋さんがあったように思うので、過去に一度鴬谷駅で降りたことがあるとしたら、その切手屋さんに行くためだったはず。

でも、記憶が残っていないので、その駅には降り立ったことがないのと同じだ。

 

東京キネマ倶楽部周辺には、昭和の香りが残っている気がした。昭和30年代っぽいキャバレーみたいな店が残っている雰囲気の街。

また、東京キネマ倶楽部にしても、昔はグランドキャバレーだったらしく、レトロな内装のスペース。なんでも、大正ロマンのオペラハウスを再現したらしい。

なんとも、いいムードだ。

音の残響も良いし、なによりステージの雰囲気がいい。

 

この日のライブの入場は、チケットに記された整理番号順に入っていったのだが、私の番号は終わりの方。

なので、正直立ち見を覚悟していた。

会場に入ってダメ元で席を物色したら、たまたま空いてる席を発見!

やった~、これでどうにか座ってライブを見れる。

しかも、出てくるのは、30年以上ぶりに復活する、あの古井戸。胸が高鳴らないはずがない。

 

以前、某フォーク居酒屋で、加奈崎さんが「古井戸を歌う」というテーマでのソロライブをやった時、私は見に行った。そのライブを見てて、加奈崎さんの隣にチャボさんがいたら、どんなに素敵だろう・・と思ったもんだが、その思いが現実のものとなるとは・・。

感慨深い気持ちで、私は古井戸の登場を待った。

 

 

思えば・・・70年代・・というか、中学・高校時代は、私はライブ・・特にフォークシンガーのライブは見に行ったことがなかった。

当時の私の少ない小遣いでは、1か月に1枚LPを買うのがやっとであった。

というか、毎月、一枚のLPを買うのは、大きな楽しみであった。

 

ライブも見に行きたかったが、ライブに行くと、LPが買えなくなる。

決まった額の小遣いで、ライブを見るか、LPを買うか・・の2者択一では、私はLPを買うほうを選んでいた。

ライブも見たかったが、LPだと、形に残る。1回こっきりのライブよりも、買えば何度でも聞けるLPのほうを選んでいた。

 

でも、その反面、ラジオの深夜放送などで、フォークシンガーといわれた人たちがパーソナリティをつとめる番組などでライブの話題が出ると、ライブにも行きたくなったものだった。

拓郎、陽水、ケメ、泉谷、古井戸、佐渡山、海援隊、友部、岡林、,高田渡、加川良、まりちゃんズ、あがた、遠藤賢司、みなみらんぼう、チューリップ、キャロル、他、見たいミュージシャンはいっぱいいた。

でも・・ライブを見に行けるお金の余裕は・・なかった。

 

その後何十年も時がたち、特にフォーク居酒屋のような店が登場して、かつて「見たくても生では見れなかったミュージシャンたち」のライブが身近な環境で見れるようになった。

だが、とうに解散していた古井戸は、見ることができなかった。

 

なので、今回の復活ライブは、70年代に生で見れなかった古井戸ライブのリベンジ・・・そんな感覚を私は持っていた。

 

古井戸をよく知らない人に、古井戸を紹介したり説明したりする時、どうしても「さなえちゃん」というスマッシュヒット曲の名前を出すしかなかった。確かに「さなえちゃん」は、古井戸の曲の中では、一般的には一番知られているヒット曲ではある。

だが、その曲のおかげで古井戸は一般的なイメージで誤解された。ある意味、コミックバンドのようにも捉えられがちだった。

だが、古井戸は決してコミックバンドなんかではない。

幅広い音楽性を持ち、パワフルな加奈崎さんのボーカルと、繊細で抒情的なチャボさんの音楽性がマッチした、独自の世界観を持つ、魅力的なユニットだった。

「さなえちゃん」は、古井戸の名前を広めるには貢献したが、それが誤解にもつながったわけで、諸刃の剣のような曲だった。

少なくても、決して古井戸の深い音楽性を代表する曲ではなかった。

 

なので、今回の貴重なライブでも、「さなえちゃん」はやらないだろうと思ったし、実際やらなかった。ファンもそのへんは分かっているので、「さなえちゃん」は、あまり期待していなかった・・・と思う。

 

 

ともあれ、ほぼ時間通りにステージに二人は出てきた。

サポートメンバーなど不要の、加奈崎さんとチャボさんの、二人のみ。

もう、これで十分。

何十年ぶりかで復活する古井戸なのだし。

ステージにあの二人がツーショットで立っている・・・その事実だけで、感慨深い。

 

昔の古井戸は、チャボさんがスタンディングで、加奈崎さんは座り・・というスタイルだったと思うが、二人が再会してライブを行う古井戸は、二人ともスタンディング。

 

空間をかんじさせる会場だが、音は2人のギター2本だけでも十分。

この日のライブのために、二人とも数本のギターを用意していたらしく、曲によってギターは持ち替えていた。

特に加奈崎さんが弾いたギターの中には、古井戸時代を思いおこさせるギブソンも。

 

そう、70年代の古井戸では、ふたりともギブソンを使っていたっけ。そのため、古井戸というとギブソンのアコギ・・・そんなイメージを私は持っていたのを思い出した。

 

それぞれソロでも活動を継続させてきた二人なので、この日のライヴではそれぞれのソロ名義での活動で生まれた曲も混ぜるのかな?と思った私であったが、それを見透かすかのように、加奈崎さんは「今日は古井戸の曲だけ、やる」と明言。

そうこなくちゃ!と思ったのは、おそらく私だけではあるまい。

だって、せっかくの古井戸のライブなのだし、古井戸には良い曲はいっぱいあるしね。

 

このライブの最中、二人の心にはどんな思いがあったのだろう。

私の印象では、加奈崎さんは感慨深げに見えたし、チャボさんは本当に楽しそうに見えた。

よかった。

 

MCの中で、何でもないかのように普通にあっさりと「古井戸です」と名乗った加奈崎さん。

でも、その何でもないかのように名乗った「古井戸」というユニット名が、どれほどのパワーを持っていることか。

それを名乗れることが、どれほど強力なことか。

そして、「古井戸」と名乗るユニットを生で見れているという事実が、どれだけスゴイことか。

私は、加奈崎さんが、てらいもなく口にした「ユニット名の紹介」に、時の重みと、時の流れの許容力を感じた。

 

 

こころもち、加奈崎さんのギターは70年代よりも、テクニカルな弾き方をしているように思えた。

それが、相変わらず達者なチャボさんのギターとからんで、サウンドにアコギ2本だけとは思えない厚みが出ていた。

 

古井戸はデュオのイメージが強いが、デビュー前はバンドだった。

そのためか、二人の演奏は、たとえアコギ2本だけのサウンドであっても、バックにはバンドの演奏が鳴っているように思えた。

 

MCも私は楽しみにしていたのだが、MCもたっぷりあった。二人の出会い、古井戸の結成時のエピソード、泉谷しげるさんやキヨシローさんなどの旧友への思い、そして思い出。

特に、キヨシローさんに関しては、亡くなったキヨシローさんに対して恥ずかしくない活動をしていきたい・・という主旨のことを、しみじみ語ったくだりは、印象的だった。

他には、ニューミュージックにはなりたくなかったという意思には、当時の心情が垣間見えた思いがした。

けっこうたっぷり語った加奈崎さん。

 

そして、大きなジェスチャーで客をあおったり、絶えず加奈崎さんを盛り上げる仕草をし続けたチャボさん。

 

時には二人でステージの端まで進み、その方向の客に挨拶したり。

チャボさんなど、レビューのような格好で踊るマネまでしてみせていた。。

最後には抱擁して、手を握ってステージを去った二人。

 

選曲という面では、数多くの古井戸ソングが次々と披露されたが、どれも実に良い。

古さは感じない。

古井戸って、時代に左右されない良い曲が多かったんだなということを実感。

私にとって特にグッときたのが、「花言葉」「セントルイスブルース」、「なんとかなれ」、そしてもちろん「ポスターカラー」も。

「花言葉」はうちのめされるぐらい染み込む名曲。聴きほれるしかなかった。

「セントルイスブルース」はともかくかっこいいの一言。

「ポスターカラー」は、これをやらなきゃファンが納得しないぐらいの古井戸の看板曲。

「なんとかなれ」などでの二人のボーカルのかけあいは、私が特に好きだった古井戸の魅力。

この二人のかけあいを生で聴けただけで、私は胸がいっぱいになった。これが聴きたかったんだよ!と私は心の中でしみじみ思っていた。

 

そのかけあいボーカルのスタイル、・・・思えば、私が高校時代に組んでた3人組のフォークグループでは、よくマネしていたっけ・・。そんなことまで思い出すと、一瞬私の目は遠くなりそうだった。

 その他では、たとえば、「らびんすぷんふる」は少し意外な選曲にも思えた。

また、最後の「おやすみ」では、目頭が熱くなった人もいるのではないか。

 

私が聴きたいと思っていた曲はかなり選曲してくれていたが、欲をいえば「冬の夜」「通り雨」「ごろ寝」なんかも聴きたかったかな。

まあ、さすがに「讃美歌」は無理だろうと思ったが(笑)。

 

なんにせよ、そういうことを言い出せば、他にもいくらでも曲は出てきそうだし、きりがない。

 

ともかく、東京では一晩だけの夢のようなライブだった。

幻が実体化していた。

しかも、その実体化は、二人のこれまでのキャリアで得たものがつぎ込まれた、レベルアップした姿であった。

 

ためいきが出そうな、一晩の夢。

 

ライブ前やライブ後に場内に流されたBGMの選曲にもこだわりがあり、それも含めて「古井戸 再会」ライブであった。

 

このライブを「放心状態」と表現した人もいるが、その表現に抗うすべを私は持ち合わせてはいない。

 

 

これが、今後の何かにつながる・・という夢を、密かに私は心にしまいこみ、ライブ後の心地よい酒の助けを借りて、私は幸せで満ち足りた気持ちで帰宅することができた。

 

 

紅茶にしますか?ミルクはどうしますか?

古井戸のお二人、ごめんなさい・・・私は・・・お酒にしました。

 

加奈崎さんとチャボさん。お二人の楽しそうな姿が、私は客としてなによりも嬉しかったです。

そして、お二人が元気なうちに、こういう再会ライブが実現して、本当によかったと思っています。なぜなら、時の経過や運命というものは気まぐれで、いつ誰にどんな仕打ちをするかわからない残酷さを持っているからです。

でも、その反面、このライブのような素敵な贈りものをすることも・・あるんですよね。

 

 

 

 

 


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