先日、電車内でふと車内広告を見たら、NHKドラマ「かぶき者 慶次」に出ている某役者さんのアップの写真があった。ちなみに、その役者さんは、主役である慶次を演じる人ではない。
で、その広告には、その役者さんの紹介文というか、キャッチフレーズ(?)で「花の慶次」でもお馴染み・・・と書かれていた。
どうやらその役者さんが、どこかのイベントに呼ばれて来るらしく、そのイベントの広告だった。
花の慶次でもおなじみ・・?
その役者さんが出てるのは、「花の慶次」ではなく「かぶき者 慶次」なのに。
「花の慶次」と「かぶき者 慶次」は、主役が前田慶次であることは同じでも、別物の物語なんだけどな・・。
「花の慶次」は前田慶次の戦人(いくさにん)だった頃を描いたコミックだが、まだ映像化はされたことがない。
一方、NHKドラマ「かぶき者 慶次」は、慶次の米沢で過ごした晩年を描いたドラマだ。
原作者も違うし、物語も違う。
「花の慶次」では、慶次の晩年はほとんど描かれていなかった・・と思う。
前田慶次という人物は、実在した武将で、前田利家の兄貴の養子。本来継げるはずだった前田家の家督を、信長の一言で義父の弟である利家にとられた(?)人物で、それがきっかけかどうか分からないが、傾き者(かぶきもの)として知られる人物。
長らく歴史の中に埋もれていた人物だったが、近年(もっとも今となってはけっこう前だが)少年ジャンプに連載された「花の慶次」というコミックや、その原作小説「一夢庵風流記」で、今の世の中に広く知られるようになった人物だ。
「花の慶次」や、その原作「一夢庵風流記」での生き生きとした快男児ぶりで爆発的に人気が出て、その後その人気はゲームにもおよび、人気も知名度もますます加速した。
あまりの人気で、米沢では慶次の慰霊碑みたいなものもできたほどだ。
今、前田慶次というと、一般的には「花の慶次」というコミックのイメージが大きく、肖像画が残されていないこともあって、ビジュアル的にも「花の慶次」のビジュアルのイメージが世間的な前田慶次像であろう。
なので、前田慶次の名前を聞いて多くの人が連想するのも「花の慶次」という作品だ。
だが、その「花の慶次」という作品は、まだ映像化されたことはない。
というか、前田慶次が誰かによって演じられたドラマというと、バラエティ枠の中の小さな寸劇みたいなドラマを覗けば、正式には、NHK大河ドラマ「利家とまつ」と、最近のNHKドラマ「かぶき者 慶次」ぐらいしか私には思いつかない。
本来出てきてもおかしくなかった大河「天地人」ですら前田慶次は出てこなかった。
「利家とまつ」は主役は前田利家とその夫人である「まつ」であり、そこでの慶次はわき役の一人でしかない。慶次が主役のドラマというと、「かぶき者 慶次」だけだ。
これほどの人気者なのに、映像化されたドラマの数の少なさは、意外なほどだ。
その「利家とまつ」にせよ、「かぶき者 慶次」にしろ、あえて「花の慶次」での前田慶次のイメージを避けようとしていた。
これはもう、意識して避けた・・と考えたほうが早い。
まあ、それほど「花の慶次」での慶次のイメージが強力というか、支配的なのかもしれない。なので、避けるしかなかったのかもしれない。
そう、「花の慶次」との差別化を計るには。
で、「花の慶次」とは別物の物語「かぶき者 慶次」に出てくる某役者さんをイベントに呼んだ人は、前田慶次のドラマに出演している役者さんを、てっきり「花の慶次」をドラマ化した作品に出演した役者さん・・・と勘違いしてしまったのだろう。
そう、前田慶次のドラマといえば、「花の慶次」だと思ったのだろう。
おそらく、そのイベントの人は、ドラマ「かぶき者 慶次」は見たことがないのだろう。
なぜなら、「かぶき者 慶次」を一度でも見れば、「花の慶次」とは別物であることはすぐに分かるはずだからだ。
だから、前田慶次のドラマ・・というと、「花の慶次」と勘違いしたのであろう。
でも・・思うのだが。
慶次がこれほど人気があって、しかもその決定版的なイメージの「花の慶次」がまだ映像化されたことがない・・というのは、単純に不思議ではある。
どこか、あるいは誰か、勇気を出して、前田慶次の物語の決定版「花の慶次」を映像化することにチャレンジしてくれる人は・・いないのだろうか。
巷で、前田慶次というと、ビジュアル的にコミック「花の慶次」での慶次を連想してしまう人が多いのは、慶次を主人公にして描いた映像作品がこれまでなかったからではないだろうか。
少なくても「かぶき者 慶次」の前には。
仮に、例えば織田信長とか坂本龍馬みたいに、前田慶次が主人公として数多くアニメやドラマや映画などに描かれ、様々な役者さんによって演じられてきていれば、ここまで前田慶次が「花の慶次」のコミックのビジュアルイメージが支配的になることはなかったと思う。
もっとイメージは分散したと思う。
そうなると、制作する側も作りやすくなったのではないか。それぞれの監督なりの前田慶次像を。
ちなみに「かぶき者 慶次」のドラマ。
私も慶次というと「花の慶次」のイメージが大きいので、「かぶき者 慶次」を初めて見た時は少し違和感を感じたのだが、見続けるうちに、これはこれで面白いと思った。
見てると確かに「花の慶次」を避けているような印象だが、「花の慶次」とは別物であることを考えれば、そうするしかないのだろう。
「花の慶次」の幻影を払拭して、別物を描くには。
となると、前田慶次を映像化する時は、現状では絶えず「花の慶次」の幻影がつきまとうということなのかもしれない。あえて否定するような描き方や、別物として描けば描くほど、意識していることになっている気もする。
だからこそ、「かぶき者 慶次」というドラマに出演していた某役者さんを、某イベントが招へいした時に、「花の慶次」でもおなじみ・・・と書いてしまったのだろう。
こんなところにも、「花の慶次」の幻影が、「かぶき者 慶次」にも出ているような気はするのだ。
ともあれ、「かぶき者 慶次」での慶次が、前田慶次の世間的なイメージのバリエーションの一つとなって、これがきっかけで、前田慶次主人公の映像作品が次々と制作されて、ますますバリエーションが増えていくといいな・・・と私は思ったりしている。
「一夢庵風流記」は、原作者の隆慶一郎がエンタープライズに仕上げてます。
原哲夫の『花の慶次』は、隆慶一郎が原に請われて漫画のために別バージョンに書き下ろしたのだそうです。
時間の外に、ようこそ。
そうなんです、前田慶次を主人公にしたドラマ、見てみたいですよね。
「北斗の拳」だってアニメ化されたのですから、「花の慶次」だってアニメ化されてもいいと思うのですが。
これまで慶次が出てくるドラマでは、変化球的というか、あえて「花の慶次」のイメージを避けた作品ばかりでした。
なので、一度はズバリ「花の慶次」をアニメ化してほしいです。
それが難しいなら、ズバリ「一夢庵風流記」の映像化でもいいです。
それならドラマでもいいと思います。
>原哲夫の『花の慶次』は、隆慶一郎が原に請われて漫画のために別バージョンに書き下ろしたのだそうです
そうでしたか。「一夢庵」も「花の慶次」も、どちらも面白いですよね。