夏がくると、つい「ぼくのなつやすみ(以後(ぼくなつ))」みたいなゲームがやりたくなる。
だが、「ぼくなつ」の新作は出ない。
そこで、何か「ぼくなつ」みたいなゲームはないものかと検索してたら、「あの頃の夏休み(以後「あの夏」」」というゲームアプリを見つけ、遊んでみた。
すると、携帯アプリでありながら、タイトルから推測した通り「ぼくなつ」に相通じるものがあるアプリで、中々楽しめた。
ある意味「ぼくなつ」の短縮版みたいな感じで、「ぼくなつ」ファンの私には向いてる作品だった。
で、「あの夏」クリア後に、他にも何かそういうアプリはないかなと思ったら、「あの夏」を制作したGAGEXという会社の作品で「忘れないで、おとなになっても」という作品があることに気付いた。
初め、ちょっとタイトルに「お涙ちょうだい」みたいな雰囲気みたいなものは感じ、少しためらった(笑)。
だが、そのタイトルからそのアプリがどんな傾向のゲームなのかは推測できたので、ダウンロードして始めた。
で、実際に遊んでみたら・・・結論から先に書こう。
そのタイトルが必然と思える内容で、違和感はなく、珠玉の名作だった。
まさに良作。
遊んで本当によかった。
賞を受賞したというのはダテではない。
これは感想を書かずにいられないと思った。
携帯アプリのゲームというと、私も何種類か遊んできてるが、「カードゲーム」系が多い印象がある。
プレイヤーは、バトルに勝つために、少しでも強いカードを入手したり、手持ちのカードを強化したくなる。その点を運営側は突いて、課金ガシャでカードを引かせたりする。だが、中々強いカードや欲しいカードは出ない。
以前、某携帯アプリで、課金ガシャをしても強いカードが全く出ない設定になってて詐欺事件になって社会問題になったこともあった。
そんな悪質な課金アプリが横行する中、この「忘れないで」は良心的なアプリだった。
カードゲームのアプリの運営が、少しでもユーザーから金を巻き上げようと詐欺のような運営をしてる場合があるのに比べ、この「忘れないで」は収益は基本的に宣伝でまかなっている。
そのため、ユーザーにはさほど課金を強要していない。
その代わり、画面切り替えや、セーブなどの時に、宣伝がふんだんに入る仕組みになっている。
そのため、テンポという意味では、頻繁にはいる宣伝がゲームテンポを崩してる部分はある。
強いてあげれば、宣伝を見たくない人は、わずかな課金アイテムを使えば頻繁な宣伝画面は見なくてすむ仕組みになっている。
一方、課金したくない人は、宣伝を見る・・・ということだ。
まあ、その宣伝画面にしても、スキップ作業を加えれば、ある程度は短縮できるようになっている。
ユーザーにあまり課金をしつこく強要しない点などは、良心的だと思った。
また、宣伝を見させられるうちに、マイキャラに何をさせようとしてたかユーザーは忘れてしまうことがある。その点の救済措置として、今何をやればいいのかを確かめられる「ヒント」コマンドもある。
その点、新設設計だ。そんな点も好感を持った。
ゲームが始まっていきなり感じたのは、登場人物がドット画だったこと。
昔の初代ファミコンゲームみたいなキャラに見えたが、懐かしさも感じた。だが一方で、背景画面などは丁寧にきれいに作りこまれていて、その点は昔のファミコンとは違った。
ファミコンぽいのは、あくまでもキャラのみ。
昔のファミコンと、今のゲームの質がドッキングした感じ。
なので、ファミコン世代も楽しめるはず。
主人公はミナトという小学生。
ある日ミナトの前に、33年後の自分が現れた。
33年後のミナトによると、神社の奥で見つかった不思議な機械を使えば、どうやらタイムリープできるらしい。
33年後のミナトは小学生のミナトに言う。「未来を変えてほしい」と。
そのためには、少年ミナトにその時空移動機で33年前に戻ってもらい、家族を救うために解決してもらわねばならないことがあると言う。
どうやらその時空移動機は、ピンポイントで33年前にしか行けないようで、家族を救うためには、ミナトの両親がまだ子供だった時代に行かねばらない。
中年のミナトが行ければ一番いいのかもしれないが、中年のミナトでは、時空移動機が33年前にしか行けない以上、両親の子供時代にまでは時間を遡ることができない。
そこで、少年ミナトに託すしかないのだ。それを伝えるために、やってきたのだ。
少年ミナトなら、33年前の時代に行けば、両親はまだ子供であろう。
しかも、タイプリープした時代で、少年ミナトに与えられた時間は、たった3日のみ。
それ以上の時間が経過すると、少年ミナトは強制的に元の時代に戻されてしまうらしい。
小学生のミナトに、そんな大役務まるのだろうか? しかも現地でのタイムリミットはたった3日しかないのに。
でも、行かねばならないのだ。やってみるしかないのだ。
なぜなら、リアルタイムのミナトの時代では、家族にとんでもない不幸がふりかかることが判明しているからだ。
意を決して33年前の時代にタイムリープした少年ミナト。
だが、そこでは様々な難題と「七不思議」と呼ばれる謎が待ち構えていた。
物語が進めば進むほど、深まっていく、いくつもの謎。
さて、ミナトはその難題にどう立ち向かっていくのか。
そもそも普通の小学生の少年ミナトにその難題を解決することなどできるのだろうか。
そして、ミナトの家族の未来は?
グッドエンディング?それともバッドエンディング?
未プレイの人のために、これ以上の内容は書かないでおこう。
あとはやってみてのお楽しみ。
操作やシステムに慣れると、物語の先の展開が気になってやめられなくなるかもしれない。
クリアしてしみじみ思ったことは、ともかく物語が・・シナリオが良かった。
ちりばめられたいくつもの謎の伏線も、最後にはきちんと活きた。
このアプリは基本的にはジャンル的にはアドベンチャーゲーム。
携帯アプリにつきもののカードゲームではない。
物語の流れは基本的に1本道。
普通のアドベンチャーゲームには、物語の途中で「物語の分岐」というものがあり、どの分岐を選ぶかで物語の流れが変わっていったりする。
だがこの「忘れないで」は、物語の流れの分岐の選択肢がなく、太い1本道のシナリオに沿って進んでいく。
なのでこのアプリを遊ぶプレイヤーは、誰もが同じ物語を共有できるだろう。物語の迷子になることもないだろう。
まるで1本のドラマや映画を見るように、物語は進んでいくはずだ。
雰囲気という意味では、NHKのかっての「少年ドラマシリーズ」のような謎やサスペンス、大林宣彦監督の「尾道三部作(特に「さびしんぼう」あたり)の切なさ、ファミコンゲーム「マザー」やハリウッド映画「スタンドバイミー」あたりの子供たちの活躍ぶり、終盤ではハリウッド映画「バックトゥザフューチャー」や、ドラマ版の「JIN」のラストあたりのエッセンスも個人的には感じた。
私にとっては、良い作品のエッセンスがてんこ盛り。それがこの「忘れないで」だ。
終わってみたら、ともかくノスタルジックで切ない物語だった。
ネット上でこのゲームのレビューをざっと見渡したところ、「号泣」「今までで一番感動したゲーム」「珠玉の名作」などの感想が多いこと、多いこと。
わずかにいるアンチ的な人でも、さすがにこの物語の内容まではけなせていなかった。
デメリットといえば、キャラを動かすのに少し苦労したことかな。
マップ上の何かに引っかかって、キャラがうまく移動できないことがあったから。
まあ、それはキャラの動かし方に「慣れ」れば何とかなる。
こうした携帯アプリで、キャラがRPGのようにマップ上を歩いて移動できる作品は、あまり見かけない。カードゲームでマップを自由に移動する設定がない作品はいっぱいあるけど。まあ私がたまたま知らないだけかもしれないが。
なんか、昔のファミコンやスーファミ時代のRPGを思い出し、それだけでも懐かしかった。
また、作品中に出てくる昭和の概念や設定やアイテムや会話も楽しい。
昭和モノというと、つい戦前や、戦中、あるいは昭和30年代あたりが舞台になったりすることが多いが、この「忘れないで」は昭和の晩期の頃の時代が舞台だ。
西暦でいえば、1980年代の昭和。
そして流れるBGMは、癒しのメロディ。
1980年代の昭和晩期にタイムスリップする物語、それが「忘れないで」。
変にいじわるな(?)要素もなく、新設設計になってるし、課金を強要してくる要素もあまりない。
カードゲームで普段さんざん課金を催促されて遊んでる方、そんな方にも優しいゲームだ。
「ぼくなつ」とは違うタイプのゲームだったが、効果音などには「ぼくなつ」の雰囲気も感じられたし、個人的には大満足だった。
私は無課金でクリアしたが、こんな良質のゲームを無課金でクリアして、なにやら開発スタッフに対して申し訳ないような思いにもなった。携帯アプリを遊んでて、こんな気持ちになったのは初めてかもしれない。
なのでせめてものお礼になるかどうかわからないが、皆さんにお勧めしておきたい。
間違いなく名作です。タイトルに偽りなし。
スマホをお持ちの方なら、ダウンロードで無料で入手できます。
ぜひ。
そして、開発スタッフの皆さん、これからもこんな良質なゲームを制作し続けてください・・とエールを送っておきたい。応援しています。
付け足し
今は亡き大林宣彦監督が今もご健在だったら、この作品を映画にしてもらいたい。ドラマでもいいけど。
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