アニメは様々な作業を経てできあがっていく。
その種類は多く、例えば2時間くらいの尺の映画アニメのエンディングで流れるスタッフクレジットには、数えきれないほどの人数のスタッフが関わっていることが記されている。
作業の種類の中には、アニメにあまり詳しくない人には、一見わかりづらい名称の作業もある。
例えば、原画と動画の違いとか、仕上げとか。まあ、熱心なアニメファンなら知ってるとは思うが。
例えば、仕上げという作業について。
仕上げとは、アニメ制作では簡単に言うと「色塗り」の作業を指すことが多い。
この作業、アニメ制作がアナログだった昔は、動画を1枚1枚セルにマシントレスし、セルにトレスされたものに仕上げスタッフが1枚1枚絵の具で塗っていた。いわば、「塗り絵」のようなもの。彩色。
で、彩色されたセルが、いわゆる「セル画」と呼ばれていたものだ。
このセル画は、放送終了後は、基本的には廃棄されるが、良いシーンのセル画はスタッフが抜き取って密かに保管していたり、時にはプレゼントされたり、密かに売却されて、それがマニアショップで売られていることもあった。ただ、それは制作側には決して歓迎されるものではなかった場合があった。
ただ、ファンにとっては貴重品であることは確かだった。正規の「商品」ではなかったから、まさに非売品。特にその作品がカルト的な人気であったり、人気キャラの見栄えのよいシーンであったりしたら、なおさら。
最近はアニメ製作はデジタルで行われるようになり、その結果「セル画」というものはなくなった。
近年の新作アニメで「セル画」が存在するとしたら、それはそのセル画のためにわざわざ新たに起こしたものであろう。
少なくてもそのセル画が実際のそのアニメ放送に使用されたものではないだろう。
昔のアナログ製作時には、セル画は実際にそのアニメ作品の中で使用されたものが大半だったが。
あ、時にはセル画を、その本来のシーンとは別の背景と組み合わせたものもあるとは思うが。
例えばある1カットには何枚もの動画があり、微妙にキャラの動きや向きが1枚1枚違う。その微妙な動きの違いが、動画になる。
それらの動画は、キャラの向きやポーズの違いは微々たるものの場合がある。
ならば、似たような向きやポーズのセル画を、別の背景に組み合わせると、それはそれで1シーンになる。たとえ本編では存在しなかったシーンであれ。
で、そういう架空のシーンのセル画は、それはそれで流出したりすると、商売やプレゼントになったりもする。
時には流出したセル画がショップに並び、値段がつけられて売られてることもある。
また、特別なセル画は、スタッフが放送終了後に隠し持つこともある(笑)。
作品放送後は、その話のカット達は、多くは処分される。
なぜなら、いつまでも処分しないでいると、その作品が毎週放送の作品だと、毎週どんどんたまっていってしまい、放置してると保管場所に困ることになる。
製作スタッフにとっては、放送終了した作品やDVD化された後は、なんらかの形で処分するしかなくなる。
まあよほどの大ヒット映画作品になると、特別に保管しておく場合もあるかもしれないが、毎週放送される作品だと、いちいち保管していられなくもなるのであろう。
とはいえ、実際に作品内で使われた…特に良いカットは貴重品であることは確かだと思う。
部外者にとっては特に。本来非売品ではあるし。
そんなセル画は、アニメ製作がデジタル化されてからは、なくなってしまった。デジタル作業現場ではセル画というものが使われなくなった。
アニメはデジタル製作されるようになり、アナログ時代に比べるとだいぶ手間は減ったと思う。
むしろデジタル作業に慣れた若手スタッフが、ある日いきなりアナログ時代のようなやり方をやらされたら、労力的にも時間的にもメンタル的にも、対応しきれないかもしれない。手間がかかるから。
デジタル作業で進化した部分はかなりあると思うが、一方で失われたものもあり、そのわかりやすい例が前述のセル画であろう。
それゆえ、貴重さから、特に古いアニメ作品の有名な作品のセル画にはプレミア評価をなされる場合もある。
例えば、アナログ製作時代の有名なディズニー作品のセル画など、それが専門家から鑑定されると、とんでもない値段がつけられるのを私は見たことがある。
やはり、実際に作品中で使われたシーンの現物が手元にあるということは、感慨深いものであろうし、愛着度や執着度も格別だろう。
通常、テレビ画面やDVDや映画に出てくるシーンの現物なのだから。
まるでそのシーンの本物を所有してる気になるだろう。
なにせ、「本物」なのだから。
そしてそれは、本物のアニメーターが手で描き、彩色スタッフが手作業で塗ったものなのだから。
ファンにとっては、ある意味、憧れのスター本人がファンである自分のものになっているような感覚かもしれない。
セル画といえば、一般ファンにとっては、かってはアニメ製作の代名詞的なもののひとつだった。
だが、時代の変化からは逃れられず、貴重品ではありながらも、消されていった。
個人的には、セル画というものが淘汰されたことは、寂しいことだとは思っている。
かつてアニメ製作では、当たり前のようにあったものだったのに。
昨今では、本物のセル画は、海外のファンからの要望も大きいとはいうが。
きっと、アニメファンの中には、新作アニメには昔のアニメのようなセル画というものがなくなってしまったことを残念がってる人はいるはずだと、私には思えている。
実際に作品の中で使われたセル画は、もう古いアニメ作品にしか本物はないわけだから。
アニメファンの皆さん、その辺どうですか?
デジタル制作になり、だいぶ手間は減ったとは思います。
まあ、それでもアニメ制作がかなり手間がかかる作業であるのは、今も昔も変わらないでしょう。
セル画は基本的には非売品ですが、それに価値を見出だすファンは多かったと思います。
トレスが間に合わずに、アフレコでは線撮り画面の絵に声優さんが声を入れたり、同じカットを使いまわすバンク方式などなど色んな手法を駆使して、ぎりぎりの制作スケジュールをこなしていたんですね。スケジュールだけでなく、制作費の問題もありますし。
データでも画像は入手できますが、セル画の場合はリアルな現物がそこにはあるので、そこに価値を見出だすファンもいるということですね。
紙に描かれた原画や動画を、1枚1枚セルにトレースして
それに白、薄い灰色、灰色、濃い灰色、黒を(白黒放送の頃)
裏側から彩色して、それを別のセクションで描かれた
背景と組み合わせ、16ミリカメラで1コマ1コマ撮影していたそうです。
現代のアニメは、液タブやCGで制作されていますが
とても、クォリティーが高くアニメーターさんの作画技術や
IT技術の進歩に驚きます。
昔のアニメの制作テクニックで、ボクが面白いと
感じたのは、人物の口の動き、目の表情だけの
セル画を作って、のっぺら坊の顔の輪郭だけの
セル画と組み合わせてセリフをしゃべっているのを
表現していました。
それから同じ動きの動画を、セリフを変えて使い回したり
動きもぎこちなかったり、作画崩壊してるカットも
ありましたが、限られた制作予算で制作スタッフの方々の、
最高のアニメを創ろうという情熱は、強く感じました。
ボクはセル画には、それほど強いこだわりはないです。
気に入ったシーンを、ネットでググればかなり高品質な
画像データが落とせますから。