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気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

歌謡曲の時代 by 阿久悠

2008年02月01日 | レビュー(テレビ、ゲーム、本、映画、その他)
これは、昭和の歌謡界を代表する偉大な作詞家、阿久悠さんのエッセイである。
自身の作品を題材にして作品論とともに、鋭い視点で世相を斬る。

こうして彼の作品名が次々と出て来るだけで、彼の才能の凄さが今更のように伝わってくる。
なにしろ、そのラインナップが凄い。
どれ1つとっても、普通の作詞家にとっては代表作になりえてしまうものばかりだ。
それがこうも何曲もあると・・・・漫画家でいえば手塚治虫先生と同レベルの才能だ。ジャンルは違うにしろ。

本作で取り上げられた彼の作品名をいくつかあげてみよう。
まさに昭和の歌謡界を作った人であることがわかる。

「どうにもとまらない」「舟唄」「恋のダイヤル6700」「北の宿から」「津軽海峡・冬景色」「雨の慕情」「勝手にしやがれ」「宇宙戦艦ヤマト」「また逢う日まで」「サウスポー」「さらば涙と言おう」「あの鐘を鳴らすのはあなた」「五番街のマリーへ」「もしもピアノが弾けたなら」「ピンポンパン体操」・・・・いや、もうこれくらいにしておこう。
きりがない。今あげたのは、ほんの一部にしかすぎない。
どれをとっても、その辺の作詞家ならばそれ1曲が代表作になってしまう作品ばかり。
つまり・・・代表作がたくさんある・・というか、ありすぎるのだ。
ここまでくると、スゴイ・・を通りこして、怖い。まさに不滅の巨人といえるだろう。昭和歌謡の中心的発信地がそこにある・・そんな感じだ。なんていう才能。

彼の歌詞は、独自のドラマがある詩が多いが、中には遊び心満載の歌詞もある。
しかも、よく練られている。
そのジャンルの幅広さは、尋常じゃない。

特に独自のドラマを盛り込んだ歌詞は、その歌い手と一体になった時に、孤高の世界を歌で表現していた。

この本を読んでおもうに、彼は時代という得体の知れない怪物に対していかに敏感であったかが伝わってくるような気がした。
ただただ思いつくままに書いてたんじゃ、ああも長い間、代表作を次々と生み出すことはできなかったと思う。
自作自演のミュージシャンがよくやるような、個人体験に基づく個人感情や主張を歌詞に綴ってるだけでは、あそこまではいけなかったと思う。
演出家、シナリオライター、作家、語り部、プロデューサー、・・などなど色んな要素を自己の中に持っていて、しかもそれを文で・・詩で表現できないと、無理だと思う。

そういう意味では、単なる作詞家を越えた存在で、スペシャリストだったのだとも思う。
ならば、なんのスペシャリスト?う~ん、これが難しい。一言でうまく表現できそうもない。
というか、一言で片付けられるような才能ではなかったのだろう。
無理してあげれば「音楽作家」「世相プロデューサー(?)」???
・・いや、どうもこれもしっくりこないような・・。

ともあれ。
世の中には作詞家はいっぱいいるけど、阿久悠さんのスケールまでは中々到達できないだろうなあ、今後も。
その功績、凄すぎるもの。

















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