私の入院記、その3。
年末に入院した時、私はせいぜい数日で退院できるだろうと思っていた。
私が入院した大部屋で、私のベッドは廊下側だった。
病室には4人分のベッドがあり、窓際に2人分、廊下側に2人分。
できれば窓際側のベッドの方がよかったが、せいぜい数日の入院だと思ったので、廊下側のベッドをあてがわれても、「ちょっとの辛抱」だと思い、特に気にならなかった。
だが、いざ入院生活を初めてみると、1週間たっても点滴がはずれず、退院できる雰囲気じゃなかった。
そうなると、思ったより長引く入院生活になるのなら、もしも窓際のベッドが空いたら、そちらに移動させてもらおうと思った。
やがて、私より先に入院していた患者さんが退院し、窓際ベッドがあいた。
そこで、看護婦さんに何度も頼み込み、やっとの思いで、窓際のベッドに移ることができた。
病室のベッドというのは、カーテンで仕切られており、カーテン内のスペースは、窓際ベッドであろうと廊下側ベッドであろうと変わらない。
だが、実質的には窓際のベッドの方がスペースが広いのだ。
というのは、カーテンで仕切られているスペースは同じでも、窓際ベッドは窓側のカーテンをあけると、窓までのスペース・・椅子一個分ぐらい・・・が加わることになる。
窓際のベッドでは、窓側のカーテンを開ければ、そこに新たなスペースが加わることになるのだ。
これが廊下側のベッドだと、隣は壁である。なので、壁がある以上、カーテンを開けても新たなスペースはない。
また、窓際のベッドは、ブラインドを開けておけば、外の太陽の光もあり、明るい。
だが、廊下側のベッドは外の明かりが入らないため、どうも暗い。閉塞感もある。
なんでも、廊下側のベッドの患者と、窓際ベッドの患者とを比較すると、窓際ベッドの患者の方が治癒のスピードは早い・・・というデータもあるようだ。
それは、窓の外の景色を見ることで、外の世界の風景を見ることで多少なりとも気分転換ができることや、一般社会とのつながりらしきものを感じることができるからではないだろうか。
私自身、廊下側のベッドから窓際ベッドに移ってからは、気分的にも快方に向かえた気はしている。
もちろんそれはあくまでも「気分的」なものだ。
だが、病人というのは、気分というものも、快方に向かう際に影響すると思う。
よく「病は気から」という言葉もあるぐらいだし。
それと。大部屋では「流し」がついていたりするが、その「流し」は、窓際に設置されている。
なので、窓際ベッドの患者には気軽に使いやすいが、廊下側ベッドの患者はちょっと遠慮がちになってしまう。
実際、今回私が入院した時も、窓際の「流し」は、利用するのは窓際ベッドの患者ばかりで、廊下側ベッドの患者は・・少なくても私が覚えている限りでは、使ってはいなかった。
私自身、廊下側ベッドに寝ていた時は「流し」を使うのは遠慮していた。
だが、窓際ベッドに移ってからは、「流し」はよく利用した。
廊下側ベッドに寝ていた時に「流し」が使いたくなったら、病室を出て廊下の奥にあった洗面所の流しを使いに遠征(?)していた。
こうして考えると、廊下側ベッドは損ばかりで、窓際ベッドは得のようではある。
ただ、ことはそう単純ではない面もある。
時には、窓際ベッドから、廊下側ベッドに移動させてもらう患者もいる。
それは例えば・・その病院の立地も関係してくる。
例えば、その病院が、電車の線路際にあったり、高速道路際にあったりする場合。
電車が通る時や、高速道路で車が行き来する時は、電車や車の走る音がするものだ。
しかも、その音がけっこう大きかったり、そういう音がやたら気になる患者の場合。
窓際ベッドだと、外の音は大きく、ダイレクトに耳に響くことになる。
いくぶんではあっても、廊下側のベッドの方が静かではある。少なくても外界の音に関しては。
窓際ベッドに寝てて、外の音がうるさいと感じる患者さんもいる。
そんな患者は、廊下側に移動させてもらったりする場合もある。
また、トイレなどに行く場合、当然のことながら、廊下側ベッドの方が行きやすい。
それと、廊下を通る看護婦などに声をかけやすい・・というメリットもある。
そのへんは、例えば地方に向かう新幹線の座席を思いうかべてもらえば、近いものがあるかもしれない。
新幹線などで座席に座る時、窓際に座ると景色を楽しめやすい。だが、通路側の席だと、席を気軽に外しやすい。トイレに行くにも楽だし、車内販売を買うにも気軽。
だが、窓際座席だと、隣に座っている客が他人だった場合、トイレに行く時や車内販売を買う時、通路側の客にどうしても気を使ってしまうものだ。
まあ、電車などの座席と、病院の病室でのベッドの位置を比較するのは乱暴かもしれないが(笑)。
ともあれ、病室で、窓際ベッドと廊下側ベッドとを比較すると、どちらにもメリットやデメリットはあることになる。
もっとも、入院することになった時に、たまたま空いていたほうのベッドをあてがわれるのだろうから、患者には選べないのだろうが。
まあ、少なくても私は、思ったより長期の入院になることが分かった時、窓際ベッドに移動できて、気分的に楽になったのは・・・確かだった。
なにはともあれ・・・退院した時の開放感。これは何物にも代え難かった。これ、実感。
見慣れた空が愛しかった。
もちろん、帰宅した自宅も。
つくづく、健康であることは、ありがたい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます