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平成の世に復刻された、少年漫画月刊誌「少年画報」昭和35年度正月号の紹介シリーズ、その12。
付録紹介としては、その10。
今回取り上げるのは、笹川ひろしさんの「鉄腕ベビー」である。
笹川さんといえば、個人的にはアニメ演出家のイメージが強いが、出発は漫画家として、であったようだ。
私が笹川さんの名前をはじめて目にしたのは、初期のタツノコプロのアニメのスタッフクレジットだった。
「ハクション大魔王」「新造人間キャシャーン」「タイムボカン」などが代表作で、タツノコプロの看板的存在に個人的には思えていた。
今回取り上げる「鉄腕ベビー」は、笹川さんがアニメ演出として名をはせる前の、漫画家時代の作品である。
少年画報では、デビュー作「探偵学校」という作品の後に連載されたようだ。「探偵学校」が連載されたのは1958年9月から1959年3月号までらしいから、「鉄腕ベビー」はそのあとの時期が連載時期だったことになる。
私は漫画家としての笹川さんは知らなかったので、この「鉄腕ベビー」も知らなかった。
ちょっとこの作品について調べてみようと思ったのだが、あまりにも資料が少なく、途方に暮れてしまった。
ともあれ、読んでみて思ったのは、「鉄腕アトム」を連想させられるな・・ということだった。
そういえば笹川さんは、手塚さんに見出されて状況し、手塚さんのアシスタントをしていたらしい。
どうりで、画風などに手塚さんの影響を感じるわけだ。
タイトルからして「鉄腕」だものね。
このベビーの最大の特徴は、人間の親指ぐらいの大きさしかないということ。
一寸法師みたいなものだ。
このベビーがどんな能力を持っているのか、なぜこんなに小さいのか、そのへんはこの付録を読んだだけでは何ともいえない。
とりあえず、空を飛ぶ能力があるのは分かった。
そして、このサイズの割にはかなりの腕力があるようだ。
何か必殺技みたいなものがあるかどうかは、何とも言えない。少なくてもこの付録には、ベビーの必殺技らしきものは出て来なかった。
武器らしい武器も、この付録の中では出て来なかったので、普段持っているかどうかは分からない。
目の上には、たくしあげたメガネみたいなものがあり、そのメガネは左右が羽のようなデザインになっている。
背中にはマントを はおっている。
ベビーには両親も健在で、この別冊付録を読んだ限りでは、ベビーの両親は普通の人間っぽい。
人間の両親から生まれた存在だったとすると、親指サイズで、しかも空が飛べるベビーの正体というか設定は、一体何なんだろうという謎(?)は残る。
サイズといい、空を飛べることといい、どう考えても普通の人間とは思えないからね。
また、ベビーはチョコレートが好きなようだ。チョコを食べると元気百倍・・とベビーが自ら語っているシーンがある。
そして、ベビーはアトム同様に優しくて勇敢で、性格的には「良い子」という感じ。
全体的には、アトムが親指サイズになった感じ・・・そんな印象を持った。目の感じも、少しアトムを思い起こされる感じだ。
できれば、この付録に、ベビーの設定や、それを含む「それまでのあらすじ」でも書かれてあれば、もっとここに書ける要素は増えたかもしれない。
笹川さんは前述の通り、後にタツノコプロのアニメに大きく関わることになるのだが、タツノコプロでこの「鉄腕ベビー」をアニメ化するという話はなかったのかな。
笹川さんが関わったアニメ作品にはギャグやユーモアの要素が強かったが、このベビーはギャグという感じではなく、一応ストーリー物という感じ。
もしもこの作品がアニメ化されて、笹川さんがそれに関わっていたら、笹川さんが後のアニメ作品で発揮したユーモア路線がこのベビーにももっと盛り込まれたのかもしれない。
ともあれ、一寸法師サイズの鉄腕アトム・・・・そんな感じの作品である。
もしかしたら、少年画報が笹川さんにマンガ依頼をする時に、「アトムのような作品を!」という注文でも出したのかもしれない。
で、笹川さんが描いた作品がこれだった・・・と考えると、個人的にはしっくりくる。
↑ 別冊付録「鉄腕ベビー」の、裏表紙。
表表紙といい、この裏表紙といい、やはりどこか鉄腕アトムに通じるものを感じる。
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