アマチュア無線局 JH0FHB

25年越しの14MHz SSB無線機の製作

50MHz AM/SSB受信機の復活を目指して その61

2017年08月14日 | 50MHz AM/SSB受信機

<BFO回路の落としどころを探る>
【2017.08.14】
盆休みの真ん中。
BFOを発振させると無信号時でもSメータが振れてしまう事は、この受信機の回路構成上致し方無いことだと分かってきたが発振出力を結合する部品の種類によって振れ方が違うこと等、分からない事は残されたままだ。
【47μHのコイルの製作】
47μH付近のインダクタンスを持つ可変型のコイルを製作した。
手持ちのコイルボビンの直径は8mmで、ここに細い導線を巻き付けてコイルを製作すると言う訳だが導線を何回巻き付ければ47μHになるのかなんて分からない。
多めに巻いておいて少しずつほどいて調整するしか方法は無い。
とにかく巻き付けて、インダクタンスを測定してみると約200μHだった。
この状態から、導線を少しずつほどいて47μHに近づけていく。
最初は10cm刻みでほどいて、100μHを下回った辺りから5cm刻みに切り替えた。
こうして出来上がったコイルの様子が下の写真である。

出来上がったコイルは、ボビンの中のコアを調整することによってインダクタンスが28μH~60μHまで連続的に可変できる事を確認した。
【変化するまでは良かったが】
こうして完成したコイルを、BFO回路とIF AMPの結合部に接続して実験を開始した。

上図の破線部分にコイルを入れてインダクタンスが60μHから下がる方向にゆっくりと調整用のコアを回すと、約50μH付近からSメータの振れが下がり始め約40μHでは振れは半分以下になった。
しかし、動作が不安定な感じで何となく怪しい(はっきりしない)・・・
そこで可変型ではない固定値の47μHのインダクターを取り付けて試して見ると、2本の足を入れ替えるだけでもSメータの振れが変わってしまう。
この状況では、何を調べているのかさっぱり分からなくなる。
分かるのは、目に見えない不可解な現象に直面していると言うことだけである。
根本的な改善策は、Sメータを振らせる信号を別の箇所から取り出す等の回路変更しかないと判断した。
【この受信機のBFO回路】
BFOは、SSBやCW等の搬送波を含まない電波を復調する為のものだが、この受信機ではSSB或いはCW信号と10.7MHzのBFO信号の2つを合成して、そこに発生した「うねり」の包絡線(envelope)を検波して音を取り出す方式を採用している。
詳しく説明する為に、2つの異なる周波数の信号を合成した様子をエクセルで表現してみた。
エクセルによる正弦波の作図方法については、過去のブログで紹介している。
ここでは、例として1000Hzの信号と1100Hzの信号を合成した図で説明する。
下の図の左側が1000Hzで、右側が1100Hzの正弦波曲線だが両者に100Hzしか差が無いのでグラフ上では殆ど同じに見える。

グラフの横軸方向が時間軸で、各時刻における値を単純に足してグラフに描き直すと下の様な図になる。

これが「うねり」の様子で、波に例えるなら細かい周期の波形が風による「さざ波」で、そのさざ波が大きな周期の波でうねっているとでも言ったら良いか。
さて、包絡線(envelope)は上のグラフの「うねり」の部分で、その周期は1100Hz-1000Hz=100Hzになる。
因みに、うねりのグラフに100Hzの正弦波曲線を重ねてみると周期が一致する事が分かる。
下のグラフの赤い曲線が100Hzの正弦波曲線である。

うねりの部分の包絡線を検波すれば100Hzの音として取り出す事ができる。
つまり、2つの信号の周波数の差が検波出力の周波数と言う事になる。
とは言うものの、2つの信号(SSBの信号とBFOの信号)の強度に極端な差が有ると下の写真の様に包絡線の振幅が変化してしまう。

そこで、結合する部品の種類によって、どの程度包絡線の振幅が変化するのかを調べた結果が下のグラフで有る。

SSBは、搬送波を含まない電波であるから送信された電波に「変調度」と言う表現は適切ではないが、その搬送波に当たる信号を受信機の内部で作って検波するのでグラフのタイトルは「BFO変調度」と表現した。
このグラフから、結合回路の部品は4.37KΩの抵抗が良さそうである。
他の部品では、約50dBμVemf以下の弱い信号に対してBFO変調度が小さくなり受信感度が低下するからだ。
実験結果では、4.37KΩの抵抗(可変抵抗器)であれば、弱電界はー20dBμVemfの信号まで検出できて、強電解であれば、120dBμVemfの信号でも復調できた。
1PF、2PFのコンデンサ、47μHのインダクターでは弱電解、強電解ともに変調度に不満が残る。
又、今回自作した47μHの可変型インダクターは強電界に対する検波特性は最も良かったが、弱電界では感度低下が著しく全く使い物にならない。
BFOの変調度としては、4.37KΩの抵抗が落としどころと言ったところか・・・
【考察】
現代はエクセルで正弦波曲線が描けたり、回路シミュレータで回路設計ができたり、※百万円の高価な計測器で複雑な回路測定ができる時代だ。
では、電卓すら無い時代に先人達は一体どうやって難しい回路を理解したり回路設計を行っていたのだろう?
きっと筆算で計算した値を方眼紙に鉛筆で書き込んで波形を描いたりしたいたに違いない。
機器の設計、製作だって試行錯誤、失敗の繰り返しだったに違いない。
このブログを書いていると、そんな情景が思い浮かぶのである。

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