「イスラーム国の衝撃」
池内恵著、文春新書、2015年1月
日本人のイスラム研究の第一人者、池内恵氏の著書。
日本語では「イスラム」と表記されますが、「イスラーム」がアラビア語の発音に近いそうです。
他にも「タリバン」ではなく「ターリバーン」など、アラビア語には長音表記が多いようです。
本書を読んで、イスラーム国の何が衝撃かっていうと、
国民?が勝手に生まれて勝手に増えてしまうこと。
イスラーム国というとイラクやシリアを思い浮かべますが、
アフガニスタンを実効支配し、アル=カーイダを匿っていたターリバーン政権に端を発します。
その後米国によりターリバーン政権が崩壊、
アル=カーイダがパキスタンに逃亡し
アフガニスタン、パキスタン国境を勢力範囲にします。
さらにアル=カーイダに協調・同調する組織が自生的に現れ、
アラビア半島のアル=カーイダ、イラクのアル=カーイダ、
そして2013年ISIL、2014年イスラーム国の誕生につながります。
従来のテロは組織的に行われていましたが、
アル=カーイダのテロは「ローン・ウルフ型」、「指導者なきジハード」と名づけられ、
少人数で自律的に行われることが多いため、組織の根絶が難しいそうです。
本書では自生的に現れる状況を「フランチャイズ化」、
テロを自律的に行うことを「勝手にアルカイダ」など、
くだけた表現を用いて分かりやすくしています。
組織は西アジア、北アフリカを含む中東諸国だけでなく、2010年代は欧米諸国への広がりを見せています。
本書は2015年1月出版ですので、そのころまでの話。
最近イスラーム国の名前を耳にする機会は減った気がしますが、
いまもニュースでたまに聞きますので、まだまだ世界の不安定化の要因の一つであることには変わりません。
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