「実力も運のうち 能力主義は正義か?」
マイケル・サンデル、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2023年9月
「これからの「正義」の話をしよう」のマイケル・サンデルが、現在の行き過ぎた能力主義に警鐘を鳴らした書籍。
邦題「実力も運のうち」は穏やかですが、原題「The Tyranny of Merit」は直訳すると「能力の専制」。厳しいです。
自分なりに本書を要約しました。
「人種・階級・宗教・民族・性別などに関わらず、努力して高い能力を身につけた者が、社会的成功とその報酬を手にする「能力主義」は平等に思える。
しかしある世代でついた経済的優劣は次の世代に引き継がれ、その差がさらに拡大する傾向にある。
能力主義以前、貧困層は貧困であることを人種・階級などのせいにできたが、能力主義以降、本人の能力がない・努力が足りないとみなされることに絶望してしまう。
富裕層は貧困層を見下す一方、常に結果を出すことを意識し絶え間ない圧力を受けるため、精神的な問題を抱える割合が高い。
成功者はどれほど頑張ったにしても、自分だけの力で身を立て、生きているのではないこと、才能を認めてくれる社会に生まれたのは幸運のおかげで、自分の手柄ではないことを認めなくてはならない」
アメリカの社会や政治においては、過去の人種差別的な社会では、多少貧しくても他の人種よりは地位が上と自任していた白人貧困層が、人種差別等従来の差別が是正され、能力という新たな差別により最下層に堕ち、絶望に陥りました。
白人貧困層を救いたいという熱意なのか、大統領になるための戦略なのか真意は分かりませんが、彼らが支持したくなるような政策を打ち出し続けるのがトランプ。
成功者であると見られたり自負している大手マスコミや知識人は、そんな政策は受け入れられないとトランプを叩き続けますが、マスコミらがトランプを叩けば叩くほど、白人貧困層のトランプ支持が高まる構図が出来上がっているように思えます。
日本も政治・経済・文化あらゆる面でアメリカの影響を受けていますので、
能力主義の一連の流れもすでに影響を受けていて、今後さらに影響を受けるのかもしれません。
また、本書では「仕事に支払われる額が、その仕事の社会的真価に対して高すぎたり低すぎたりする」ことについても触れています。
これは本当にそう思いますが、お金で埋め合わせしようとすると社会主義に近くなってしまいます。
当人が金銭以外の価値を見いだせていればよいですが。
これは社会全体だけでなく、業界内でもありますし、会社内でもある話で、難しい問題です。
関連エントリ:
【マイケル・サンデル著書】
それをお金で買いますか 市場主義の限界
これからの「正義」の話をしよう
マイケル・サンデル、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2023年9月
「これからの「正義」の話をしよう」のマイケル・サンデルが、現在の行き過ぎた能力主義に警鐘を鳴らした書籍。
邦題「実力も運のうち」は穏やかですが、原題「The Tyranny of Merit」は直訳すると「能力の専制」。厳しいです。
自分なりに本書を要約しました。
「人種・階級・宗教・民族・性別などに関わらず、努力して高い能力を身につけた者が、社会的成功とその報酬を手にする「能力主義」は平等に思える。
しかしある世代でついた経済的優劣は次の世代に引き継がれ、その差がさらに拡大する傾向にある。
能力主義以前、貧困層は貧困であることを人種・階級などのせいにできたが、能力主義以降、本人の能力がない・努力が足りないとみなされることに絶望してしまう。
富裕層は貧困層を見下す一方、常に結果を出すことを意識し絶え間ない圧力を受けるため、精神的な問題を抱える割合が高い。
成功者はどれほど頑張ったにしても、自分だけの力で身を立て、生きているのではないこと、才能を認めてくれる社会に生まれたのは幸運のおかげで、自分の手柄ではないことを認めなくてはならない」
アメリカの社会や政治においては、過去の人種差別的な社会では、多少貧しくても他の人種よりは地位が上と自任していた白人貧困層が、人種差別等従来の差別が是正され、能力という新たな差別により最下層に堕ち、絶望に陥りました。
白人貧困層を救いたいという熱意なのか、大統領になるための戦略なのか真意は分かりませんが、彼らが支持したくなるような政策を打ち出し続けるのがトランプ。
成功者であると見られたり自負している大手マスコミや知識人は、そんな政策は受け入れられないとトランプを叩き続けますが、マスコミらがトランプを叩けば叩くほど、白人貧困層のトランプ支持が高まる構図が出来上がっているように思えます。
日本も政治・経済・文化あらゆる面でアメリカの影響を受けていますので、
能力主義の一連の流れもすでに影響を受けていて、今後さらに影響を受けるのかもしれません。
また、本書では「仕事に支払われる額が、その仕事の社会的真価に対して高すぎたり低すぎたりする」ことについても触れています。
これは本当にそう思いますが、お金で埋め合わせしようとすると社会主義に近くなってしまいます。
当人が金銭以外の価値を見いだせていればよいですが。
これは社会全体だけでなく、業界内でもありますし、会社内でもある話で、難しい問題です。
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【マイケル・サンデル著書】
それをお金で買いますか 市場主義の限界
これからの「正義」の話をしよう