「ブーメラン」
マイケル・ルイス著、東江一紀訳、文春文庫、2014年9月
「マネー・ボール」の著者が、リーマンショック後の欧州危機を取材。
取材対象は危機が起きたアイスランド、ギリシャ、アイルランド3国と、
対処する大国側のドイツ、アメリカ。
アイスランドは国の推奨で漁師たち(漁業が主要産業)が投資銀行ばりの金融取引を行って破綻。
ギリシャは公務員の人件費や社会保障費、脱税、財政収支改ざんで国家財政破綻。
アイルランドは不動産バブルがはじけて破綻。
これら破綻した欧州各国のツケを支払うことになるのがドイツ。
サブプライムローンでも地球上で最後の買い手となってしまった模様。
アメリカもカリフォルニア州などで、ギリシャのように公務員の人件費や年金などにより財政が逼迫。
日本については本書では取り上げられていませんが、
恐慌がブーメランのように回って戻ってくる、
というのがタイトルの意味するところのようです。
外から見るとおかしいことに気づくのですが、
中にいると、周りがみんなやっているからおかしいことに気づけなかったり、
外の人たちに指摘されても素直に聞けないのは万国共通のように感じました。
以前レビューした「世紀の空売り」同様、本書でも藤沢数希氏が分かりやすい解説を書いています。
本書で興味深いのは、著者マイケル・ルイスから見た各国の人の特徴・気質。
・アイスランドはほぼ全国民が知り合い
・ギリシャ人は人当たりがよいが、それを同胞に向けようとはしない。
その場にいない人間が褒められるということがない
・アメリカを訪れたアイルランド人は必ずふたつのことに驚くという。
ひとつは国土の広大さ、もうひとつは、自分の悩み事を飽きもせず延々としゃべり続ける国民性。
アメリカ人がアイルランドを訪れると、ふたつのことに驚く。
狭い国土と、口の堅さに
・ドイツ人には非ドイツ人に難儀を強いる格別の才能がある。
表向きは汚物に嫌悪しつつも、根底では糞や尻に執着する
→ かなり毒舌です。
サンフランシスコ州知事としてのアーノルド・シュワルツェネッガーへのインタビューが
15ページほどあります。
ライアーズ・ポーカー
世紀の空売り
マネー・ボール(書籍)