「高校生からわかる資本論」
池上彰著、集英社文庫、2019年5月
近年マルクスの「資本論」が再評価されているそうです。
原著は難しいので、池上さんの解説版を読んでみました。
タイトルに「高校生からわかる」とあります。
遠い昔、大学生だった自分にはわからなかった記憶があるので、ちょうどいいです。
本書では原文が多く引用されていますが、
やはり原文を読んでもいまいち言いたいことがわかりませんでした。
池上さんの解説で概ね理解できました。
第1講から第16講まであります。
第1講はなぜいま「資本論」が見直されているのか。
「資本論」が出版された1867年と現代は資本家に富が集中する構図が似ているそうです。
第2講はマルクスの経歴とマルクスが生きた時代について。
第3講からいよいよ資本論の解説。
「社会の富は「巨大な商品の集合体」」からはじまり、商品の説明と商品から貨幣が生まれた話。
文体もさることながら、いきなり「資本主義は商品」から始まる構成に、読む気力を削がれます。
ただ読み進めて行くと、言わんとすることはわかりました。
第5講の終わりにここまでの復習。
第6講から資本と労働力の関係。
「資本は社会によって強制されない限り、労働者の健康と寿命に配慮することはない」
これは現代でも痛感します。
第9講の終わりにここまでの復習。
第10講
・労働の集約
・協業によって生産性が高まる
第11講
・機械の導入
・機械が労働力の価値を切り下げる(給料が下がる)だけでなく、仕事を奪う
・一方で、労働者が教育を受けることで能力が高まる
第14講
・派遣労働者が増えるということは、派遣労働者にとって身分が不安定なだけではなく、正社員の人たちにとっても給料が上がらない、労働条件が悪くなる
この辺りは池上さんの意訳も込みですが、
現代にも通じます。
最後の第16講では、マルクスが唱えた社会主義の失敗、資本主義国家が採用したケインズ経済学とその後の新自由主義について説明し、
新自由主義が行き過ぎた結果、マルクスが指摘した資本主義のマイナス面が大きくなってきているのではないか、と警鐘を鳴らして締めています。
「おわりに」で、池上さんも大学時代に「資本論」の読解に挫折したと書かれていてホッとしました。
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