国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

参議員-運輸委員会-2号 昭和五十五年十月十六日 第10話

2016-10-10 14:57:24 | 国鉄関連_国会審議
みなさまこんにちは、引続き元広島鉄道管理局長の江島氏の質問が続くのですが、ここで質問しているのは道路特定財源等の財源問題。

この点について大変興味ある指摘をしています。
国鉄改革の一環で、工事も出来るだけするなという事項を指摘しているのです、これは公共工事がすべて悪であるという論調に似ていると思いませんか。
「公共工事は無駄だから止めろ」という。
しかし、水道管の維持工事など先延ばしすればさらに大きな問題が起こるものすらも先送りしてしまう。
後でさらに大きな問題になってその復旧などに数倍の費用がかかる。
ここでも、10年先を見越した交通需要などを見越した投資は必要ではないのかと。
「。これはやはりいまの時点ではいいかもしらぬけれども、十年先の投資、そのときでもやはり国民の本当の健全な足である鉄道であるための投資ということが非常に抑制されるんじゃないかと思うわけであります。私が言うまでもなく、過去と現在と未来、これを常に考えて行うのが本当の再建じゃないかと思いますから、その点で余り現在にとらわれ過ぎて、過去のこととか、あるいは未来のための投資ということが抑えられるんじゃないかと思います。」
この話は非常に注目してよい点だと思います。

ややもすると、政治家は無駄をなくす、無駄な公共工事をなくすとか・・・という目先の施策に囚われがちですが、本来の総合交通体系を構築するのであれば、やはり同じ10年後に同じレベルになるように整備してやったうえで、競争しろと言うのでなければあまりにもフェァではないと思うんですね。

また、現在は廃止されましたが、かつては高速度楼の建設には道路特定財源がある、しかし鉄道の場合はそうした財源が無くて民間からの借入金、もしくは鉄道債券でしかその方法が無いことを指摘しています。
「建設省の方は道路財源があるということでありますけれども、私が一番感じておりましたのは、いままでは空港にしてもあるいは港にしても、あるいは道路にしても、皆それぞれ特会があってそして財源がある。ところが鉄道だけが昔の非常に独占的な輸送機関であったことのそのままで、そういう財源がない。」
この指摘は大変重要だと思います。

画像 wikipedia

東海道新幹線(当時は単に新幹線)を建設した時、国は予算を付けず結果的に国鉄は世界銀行から融資を受けることで解決しました。
仮に、これを国鉄だけでなく政府が建設国債で補てんしていたらどうだったのでしょうか。
ただ、当時は鉄道は国内における独占的な輸送機関であったことの事実であり、また国鉄も「国鉄>運輸省」という力関係でどちらかというと運輸省を見下す傾向がありましたので、そうした発想にはならなかったと言えますが。
こうした縦割りと言うかセクト同士の対立は、日本の悪弊のようで、旧陸海軍と同様困ったものです。
実際に、赤字が大きくなった原因の一つには、老朽資産の置換えと首都圏を中心とした輸送力増強計画にかかる経費が大きく、新幹線の開業=国鉄赤字の元凶とは成り得ない事だけは留意していただきたいと思います。
実際問題として、国鉄だけが借入金という形で建設に邁進していったわけですから。
「 そして利子のついたお金を借りなくちゃいけない。その利子が非常に積もり積もっておるというのが国鉄の経営を圧迫しておる大きな原因じゃないかと思うんです。」
という発言に繋がっていると言えるでしょう。


路線地図

ただ、それに対する運輸省側の答えが正直言って力不足と言いますか、今から考えます。
的な回答になっているのはちょっと拍子抜けしたものを感じるのは私だけでしょうか?

「都市におきましても大量公共交通輸送機関というものを整備する、地方におきましても必要な公共輸送機関を維持、確保するということのためにもぜひ安定した財源が必要である。そういう観点から、今後とも安定した財源の確保というものにつきましては前向きに取り組んでいきたいと思っておるわけでございますが、以上のような問題を含めまして、長期的に総合的に将来の情勢を展望いたしまして、たとえば自家用自動車と公共交通輸送機関との分担関係をどのように考えたらいいのかというような問題を含めて運輸政策審議会にただいま諮問いたしておるところでございます。その結果を待ちまして、さらに今後の対策を強化していきたいというぐあいに考えている次第でございます。」

国鉄問題に関する参議院運輸委員会の質問は、衆議院と異なる質問と言うか大局的・高所からの発言があり、読んでいても大変参考になる部分が多く、今後も国鉄改革の裏側と言う視点から見て行こうと思います。

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○江島淳君 それは御苦心のほどはわかるんですが、要は、やっぱり具体的にこれだけの金が地交線対策として道路側にもとってあるのだよというふうなことがないと、個々に、建設省にしてもこれはむずかしいと思うのですよ。ですから、やっぱり私は、建設省でもそういうことにすればおわかりになるのじゃないかと思うので、特段の御努力で、そういうふうな具体的にこれは地交線対策用のアイテムなんだというふうなことはできるようにしていただくことが一番緊要じゃないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思うわけであります。
 それから、やはりいまのこの閣議了解事項のところに関連してなんですが、「国鉄の経営改善措置」というところの四項のところで、「工事規模」というのがありますね。そして、「工事規模については、極力これを圧縮することとし、当面、現状程度の規模に抑制する。」というふうに書いてあります。しかし、私は先ほどからも総合交通体系のことでいろいろ議論しておるわけですけれども、この再建のために、むだな投資はもちろん必要じゃありませんけれども、次の、十年先の交通はどうなるかというときのための投資も、こういうふうなことによって非常に抑制されるのじゃないか。これはやはりいまの時点ではいいかもしらぬけれども、十年先の投資、そのときでもやはり国民の本当の健全な足である鉄道であるための投資ということが非常に抑制されるんじゃないかと思うわけであります。私が言うまでもなく、過去と現在と未来、これを常に考えて行うのが本当の再建じゃないかと思いますから、その点で余り現在にとらわれ過ぎて、過去のこととか、あるいは未来のための投資ということが抑えられるんじゃないかと思います。
 それで、先ほどから、建設省の方は道路財源があるということでありますけれども、私が一番感じておりましたのは、いままでは空港にしてもあるいは港にしても、あるいは道路にしても、皆それぞれ特会があってそして財源がある。ところが鉄道だけが昔の非常に独占的な輸送機関であったことのそのままで、そういう財源がない。そして利子のついたお金を借りなくちゃいけない。その利子が非常に積もり積もっておるというのが国鉄の経営を圧迫しておる大きな原因じゃないかと思うんです。
 ですから、やはりそういうためにはほかの競争機関とイコールフッティングまで持っていってやる。インフラ論議になりますけれども。そうしてイコールフッティングにしておいて、ここまではほかの競争機関と同じである、これから先は国鉄はほかと競争しなさい、そして競争して、さらに負けるならこれは国鉄の職員の幹部を含めた経営努力が足りないんだということでいいと思うんですけれども、現実的にはそうじゃなくて、国鉄にはそういう利子のついた金だけしかないということであると思うんです。
 そういう意味において、先ほどもちょっとお話ございましたが、去年まで出しておられた陸上特会ですね、それが、何かそういうふうなものがないと、現実的に非常に国鉄の将来のためにも投資面においても無理がくるんじゃなかろうかという感じがいたします。ことしはそういうことは出しておられないようですけれども、陸上特会というものを今後どういうふうに考えておられるのか。これからもそういうイコールフッティングな論議をするためにもそういうものは必要じゃないかと私は思うんですが、それに対していかがでございましようか。

○政府委員(石月昭二君) 陸上公共輸送整備特別会計というものを運輸省といたしまして昭和五十四年度予算、五十五年度予算の策定に際しまして要求をいたしましたけれども、諸般の情勢でこれができなかったということは事実でございます。私どもといたしましては、先ほどから先生の御指摘がございますような、最近のエネルギーとか環境とか交通空間とかというような制約条件がますます強まっております現実を考慮いたしますと、陸上公共輸送の維持、整備を強化する、それで国民の皆さんに豊かなモビリティーを与え、豊かな社会生活を確保するということはますます緊急性を増しているというぐあいに考えておるわけでございます。
 しかし、現実に自家用自動車輸送というものが非常に進展いたしまして、現実の都市におきましても地域におきましても相当な交通のシェアを占めているというのもまた事実でございます。しかし、また、自家用自動車がそれだけ進展したことによりまして、都市におきましては道路の混雑とかそれから環境問題とか公害問題とかというようなものをいろいろ惹起しておる。地方におきましても自家用自動車が非常に便利に使われておりますが、一方そのために自家用自動車を利用できない老人とか主婦とか子供というような方々が非常にお困りになっておるという点もございます。
 したがいまして、都市におきましても大量公共交通輸送機関というものを整備する、地方におきましても必要な公共輸送機関を維持、確保するということのためにもぜひ安定した財源が必要である。そういう観点から、今後とも安定した財源の確保というものにつきましては前向きに取り組んでいきたいと思っておるわけでございますが、以上のような問題を含めまして、長期的に総合的に将来の情勢を展望いたしまして、たとえば自家用自動車と公共交通輸送機関との分担関係をどのように考えたらいいのかというような問題を含めて運輸政策審議会にただいま諮問いたしておるところでございます。その結果を待ちまして、さらに今後の対策を強化していきたいというぐあいに考えている次第でございます。
 それから、先ほど先生からお話がございましたイコールフッティング的な問題というものも含めて考えるべきではないかという御指摘でございますけれども、確かに四十六年度の総合交通体系に関する答申の場合におきましては、やはりそういうイコールフッティング的な考えから国鉄が非常に不利な立場に置かれているんじゃないか。そのために国鉄というものが交通市場におきましてだんだんシェアを失っている結果を招いているという御議論が盛んにございまして、いろいろ勉強したわけでございますけれども、非常にむずかしい問題で、いわゆるハード論、施設の資金調達というものについてどれだけ利用者負担で行われているかという問題、それからいろいろな公共的な負担、たとえば制度的な負担、たとえば国鉄が政策等級というようなものを貨物の運賃においては取り入れている。その結果、農産物とか国民生活に必要な物資を安くするような制度をとらなきゃならぬとかというような、いろいろな制約条件がございまして、それから公共割引の問題とか、これらの問題、ソフトのイコールフッティング論、この両面があろうかと思います。
 まずソフトのイコールフッティングにつきましては徐々にこの点が改善されている。御承知のように、先回の運賃改定におきまして、貨物運賃は一律運賃になりまして等級制は全部廃止されましたし、その他公共負担についても今後のあり方等について目下関係省庁で検討されている状況でございます。そういう形でソフト面はだんだんよくなってきた。
 ハード面はどうかと申しますと、最近国鉄の経営が悪化いたしまして累積赤字が六兆円にも及ぶことは先生御承知のとおりでございますが、国鉄の赤字というものは、そういう国鉄の背負ったいろいろな歴史的な経緯もございますので、あながちその企業の経営の面からだけで論じられない面もございますけれども、現在の利用者負担、総投資額の中の利用者負担というようなものを計算いたしたものを、試算でございますけれども、たとえば五十五年度で見てみますと、国鉄の場合には六五・七%が利用者負担という形になっております。これに対しまして航空は五十五年度では九九・五%が利用者負担になっております。ほとんど利用者負担で航空の施設は賄われている。それから道路は七五・九%という形になっております。それから港湾が一二・五%という形で利用者負担が比較的少ないという数字になっておりまして、利用者負担が国鉄は非常に多いという形には現状では必ずしも言えない状態になっていることを御報告申し上げます。

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