木之内みどりさんのアルバムが、先月サブスク解禁になりました。実はこの人のアルバムには名盤があって、この「硝子坂」もその一つ。その要因は楽曲と演奏にありますが、全11曲中オープニングの「東京メルヘン」を除く10曲の編曲と演奏がThe Last Show。(以降ラストショウ)
ラストショウのメンバーは、松田幸一 (ハーモニカ)、村上律(ペダル・スティール・ギター)、徳武弘文(ギター)、島村英二(ドラム)、河合徹三(ベース)の5名ですが、ギターの徳武弘文さんの愛称がDr.Kです。もちろん「徳武」→「トクタケ」→「ドクターケー」という言葉遊びですが、その飄々とした風貌と華麗なテクニックからドクターという呼び名がピッタリ。
この人は、何といってもジャズ・マスターをサムピックを交えたフィンガーピッキングスタイルでプレイするのが特色ですが、このアルバムでも名演が堪能できます。まずは、このアルバムの収録曲は以下の通り。(レコードでは「五月雨」以降がB面」)
1.東京メルヘン 作詞:松本隆/作曲:吉田拓郎
2.フルーツ 作詞:松本隆/作曲:実川俊
3.ヨーヨー 作詞:松本隆/作曲:市川善光
4.ゆめまくら 作詞:松本隆/作曲:小泉まさみ
5.シティー・ライト 作詞:松本隆/作曲:マイケル・K・中村
6.五月雨 作詞:島武実/作曲:宇崎竜童
7.ありったけさわやかに 作詞:島武実/作曲:宇崎竜童
8.明日からごめんね 作詞:島武実/作曲:宇崎竜童
9.Good-bye 作詞:島武実/作曲:宇崎竜童
10.硝子坂 作詞:島武実/作曲:宇崎竜童
11.サヨナラの後に… 作詞:島武実/作曲:宇崎竜童
実は、B面はタイトル曲の「硝子坂」も含むほとんどのリードプレイが、スティール・ギターの村上さんの演奏で、中にはいかにもDr.Kの演奏という曲もありますが、Dr.Kのソロが堪能できるのはA面の方。
「フルーツ」はイントロ、間奏2回、アウトロがすべてギターソロなので大活躍。あのナチュラルなトーンであれだけ弾きまくるのは素晴らしいです。また「ゆめまくら」も同じ感じの音ですが、歪ませないソロのお手本のような感じ。
歪ませないということは、ギュイーンと伸ばしてチョーキングしたりビブラートをかけるいわゆる「泣きのギター」ができないわけで、ギタリストとしてはかなり辛いのですが、そこは音数とタメを駆使して「これぞ」というソロになってます。私なんぞはギターの音だけ取り出して聞きたいくらい。
徳武さんの愛機というとフェンダーのジャズ・マスターで、それは当時の雑誌のインタビューでも語ってますので、このアルバムでの音からしても多分間違いないと思います。ジャズ・マスターをメインにして歌謡曲のレコーディングで使う人も珍しいと思うので、このアルバムはその点でも注目していいのではないでしょうか。ジャズ・マスターを、一流のプロがスタジオで弾くとどういう音がするという事で。
これだから昭和歌謡とアイドルポップスのファンはやめられません。ただ、徳武さんの場合あのフィンガーピッキングが特色なので、あれでジャズ・マスターを弾くのが前提です。とにかく、本当に凄いです。今回木之内さんの歌については全然触れてないのですが、そこは是非皆さま実際に聞いてみてお楽しみ下さい。Spotifyをはじめサブスクにアルバム丸ごとあります。