本日BS朝日で放送してました。映画は1992年公開、原作:井上靖、主演:緒形拳です。Wikipediaによると原作は「大黒屋光太夫をはじめとする、漂流した神昌丸の乗組員17人の運命を、日露の漂流史を背景に描き出した歴史小説」です。実話に基づいてるものですが、吉村昭先生が「大黒屋光太夫」という小説を書いており私はそちらを読みました。井上靖氏のは読んだことありません。
この話は約10年に及ぶ壮大な話ですので映画にするにはなかなか厳しいでしょうが、吉村昭版を読んだものとしてはすごくサラッとしてる印象で、これを当時劇場で見た人はどういう評価をしたのだろうかと気になります。
まず押さえなければならないポイントとして「当時日本は鎖国をしていた」「改宗すると日本へは帰れない」「ロシアは無茶苦茶寒い」「ロシアはロシアでいろいろ忙しい」「当時日本では大規模な船は造れない」など。人間不幸な状況になると宗教に頼りたくなったりすると思うのですが、日本が鎖国をしていた最大の原因はキリスト教を恐れたということがあるので、万一改宗してしまったら帰国後死罪になってしまうのですね。吉村先生のヴァージョンではその辺りの葛藤が描かれてるのでこの映画ではすごくサラッとしてるなと思った次第。ロシアではロシア正教の信者以外はまともに埋葬してもらえず、遺体を空き地に放置して野犬のなすがままにするような状況があったので、仲間が次々に亡くなるのを見て「ワシはああなるのはイヤだ」と思って改宗する人もあったと。
また、ロシアの内陸部というかイルクーツクに辿り着くまでの行程が半端なく寒かったというのもあんまり描かれてません。吉村先生ヴァージョンでは「布団にくるまってるが息がかかる布団の端がすぐに凍ってしまい、そりに引かれている籠の天井にも呼気によるツララがぶらさってしまう」そうです。そういう状況で凍傷になって足を切断される人もいたわけですが、私なんぞは元々冷え性なのでそういう状況になったら真っ先に死んでただろうととか思うわけです。
なんにしても、当時の船頭というと大黒屋光太夫にしても高田屋嘉兵衛にしても、船頭になるくらいの人はすごく立派な人がいたので、私は船頭LOVEです。(いえ、別に抱かれたいとか思いませんけど) あとはロシアの女帝に会う場面が、もっと派手でもよかったのではないかと。実は吉村先生の小説を読んだあと、「これは絶対大河ドラマにすべきだ!」とか思ったのですが、途中からほとんど場面がロシアなので厳しいでしょうね。同様に高田屋嘉兵衛の「菜の花の沖」を読んだときも「大河ドラマだ!」とか思ったのですが。
んで、やっぱり井上靖先生の「おろしや国酔夢譚」も読んでみねばならんかなぁとか思っとります。なんとか年内には…。