Linの気まぐれトーク

映画と小説の観賞日記

小説『引っ越し大名三千里』と映画『引っ越し大名!』

2022-01-13 12:59:00 | 読書
1月読書会のテーマ本。
著者は土橋章宏氏、初めて聞く名前だったが、『超高速! 参勤交代』の脚本家と言われれば、ああと納得。
元々脚本家から始まった人だそうで、小説を読んでいても妙にビジュアルで、映画化を前提としていることは間違いない。

昨日、2度目の読書を終えてどこまでが史実なのかとネット検索すれば、『引っ越し大名!』として映画化されており、近くのレンタルショップの扱いもある。




となれば観るしかない(笑)
雪の降る寒い日にビデオ屋目がけて自転車走らせる私。こういうせっかちさは歳を取っても変えようもなく。

1日で小説と映画を観てしまい、おなかいっぱいとなる。
映画と小説の違いを改めて感じた。
映画の脚本も土橋氏が手がけている。
別作品というよりも、感動の違いを熟知した作り替えというべきだろう。
私見だが、小説では冴えない書庫番の片桐春之助が、引きこもりの役立たずと言われながら、人の嫌がる引っ越し奉行を押し付けられるうちに、商人との駆け引きや荷物を減らすコツ、ひいては減封に伴う人減らしまで、わずかの期間にこなしてしまう。
1番の見所は、書庫にこもり蔵書の中身を全て頭に入れて、本を焼くシーンだった。
春之助が変わったのは、まさにこの場面で、彼の成長物語としての本作の真骨頂だろう。恋愛あり、他藩との駆け引きありでエンタテインメント性もたっぷり盛り込まれている。

が、映画では違う。
1番の見所はリストラなのだ。
小澤征悦演じる山里始め、600人の藩士に帰農を命じるのだ。
きっと迎えに来て武士に戻すと約束して。

15年後、彼は約束を果たす。
が、その間に亡くなった人、農業に生きがいを見出した人など40人はその地に残る。
15年のあいだに人々は山地を開墾し、見事な棚田を切り開いていた。
その光景を1番の見所とし、復帰した侍たちを藩主が迎えるシーンをラストにしたのだ。


映画が勝るものもあれば、別作品に仕立ててしまう場合もある。
もちろん、小説の方が良い場合も。
この作品に限っていえば、小説の方がずっと良かった気がする。
私は小説的な人間なのかも、と改めて思う。


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