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お守りピック / Good Times, Bad Times

2004年10月19日 21時51分31秒 | about him
 まるで、身内の恥をさらすような話なのだけれど ... 。

 わたしの友人 (というか彼) は、お金にツイていない。

 わたしと付き合うようになった、この十ヶ月くらいのあいだだけでも、空き巣に遭い、お財布を失くし、いつも窮々している。

 やっと、ここのところ経済状態も立ち直ってきたので、二人で温泉旅行でも行きたいね、なんてことを言っていた。

 そして、今月末に、修善寺へ行く予定であった。

 とても、楽しみにしていたのに。

 先週半ば、彼からメールが来て、とつぜん、「旅行には行けなくなった」 と。

 その前日まで、旅行の話をしていたのに、あまりに急なので、おかしいとは思ったのだけど、仕事がいそがしいのだろう ... ということにした。

 彼のことだから、きっとなにか、理由があるはずだ、と。

 そうして、先週末、いつものようにいっしょに過ごして、さりげなく、「なんで旅行に行けなくなったの?」 と訊いたら。

 彼は、言わねばならぬ時が来た、という様子で、「あのね」 と言って、話しはじめた ―― 。





 先週の日曜の夜、彼が、わたしの部屋に泊まりに来ていた。

 翌朝、月曜日、彼が仕事に出る前に起きて、わたしは、朝ごはんを作った。

 (ちなみに、わたしは、朝ごはんを食べない)

 彼のために、一食分だけ、用意。

 一人暮らししていて、あまり食事に頓着できない彼のために、栄養のある朝ごはんをしっかり食べてほしいのである。

 彼は、よろこんでごはんを食べて、仕事に向かった。

 わたしが、いそがしい朝の時間のなか朝食を作ってあげたことで、とても気分よく歩いていたそうなのだが、急に、便意をもよおして、駅のトイレに寄ったとか。

 以下、ちょっと変な話で、恐縮 ... なのだけれど。

 彼は、大きいほうをするときに、いわゆるワンワン スタイルというのだろうか? しゃがまないと、出ない人で、和式トイレでないとだめなのである。

 で、駅のトイレで、いつものように、ズボンのポケットの中身 ―― お財布と携帯電話 ―― を出して水タンクの上にぽんと置き (ポケットになにか入っているとしゃがみづらいのだそうだ)、ズボンとパンツを下ろして、よっこいしょとしゃがんで、用を足した。

 御用が済み、気持ちよく駅のトイレを出、そのまま会社に向かった。

 お財布と携帯電話を置きっぱなしのまま ... 。

 そのことに気がついたのは、会社に着いてからだった。

 その後、駅に問い合わせたら、携帯電話は届けられているとのことだった。

 しかし、お財布は ... 。

 まえに、ここで、何度か書いたことがあると思うのだけど、彼は、お金を銀行に預けたりするのがきらいなうえ、空き巣に入られたことがあって、家にお金を置いておけないので、全財産をお財布のなかに入れて持ち歩いているのである。

 その、全財産が入っているお財布を失くしてしまったのだ。

 いくら入っていたのか定かではないが、きっと、そのお財布は戻ってこないだろう ... 。 たとえ、お財布が戻ってきたとしても、なかに入れていたお金はきっと戻ってこないだろう ... 。

 わたしたちは、無言でうつむいた。





 そういうわけで、彼は、またまた、無一文になってしまったのだ。

 う~ん。 またお財布を失くすなんて ... 。 かわいそうな彼。

 ああ、ひょっとして、わたしの devil パワーで、金運を吸い取っているのだろうか ... 。

 (考えてみると、わたしのほうは、ここのところお金まわりが良い。 いそがしいながらも、仕事が好調なので ... )

 あああ、わたしは、彼のためによくないのかしら ... 。

 わたしが、あの日、朝ごはんを作ったりしたから ... 。

 きっと、わたしったら、余計なことをしたんだわ ... 。

 わたしは、彼からすべてを奪い取る、devil なんだわ ... 。



 ... なんてことを考えて、落ち込んでいたら、昨夜、彼から電話が。

 なんと、お財布が戻ってきたのだそうだ!

 昨日、警察のかたから電話がかかってきて、お財布が届けられていると連絡があったそうで。

 どきどきしながら、お財布を取りに行き、どうせ中身はないだろう ... と思って、確認すると、全額そのまま残っていたという!

 なんという親切な、奇特な人がいるものだろう ... と、拾ってくださったかたの連絡先を訊き、さっそくお礼の電話をかけてみたとか。

 電話の向こうのかたの声は、想像していたより、ずっと若くて、いまどきの少年ふうだったそうだ。

 こんな人が、ネコババもせずに、財布を届けてくれたのか ... と、ちょっと驚きつつも、

 「あなたのような人に拾ってもらって、ほんとうに助かりました。 ありがとうございます」

 と伝えると、電話の向こうのかたは、

 「いえいえ、いいんです。 ほんとのこというと、一瞬、お金に目がくらんだんですけど、小銭入れのなかに、(ギターの) ピックがあったんで ... 。 おれも、バンドやってて、おんなじメーカーのピックを使ってるんですよ。 で、バンドやってる大変さを、おれも知ってるから、悪いな ... と思って ... 」

 と、照れくさそうにおっしゃっていたとか ..... 。










 ギターのピックを、入れていて、良かったね!

 バンドマンに拾ってもらって、良かったね!

 世の中、悪いことばかりじゃないね!

 うん。

 ありがとう。

 ギターの神さま ... ?















 ... でも、これからは、お財布を失くさないようにしないと、ね。

 (ちなみに、旅行は、すでにキャンセルしてしまったあとでした ... )










 当 blog 内関連記事:
 ・「こころのジューク・ボックス / Please, Please Me」

 ・「ほんとうは、ナニジン?」

 ・「プライドのカタマリ」








 BGM:
 Rolling Stones ‘Good Times, Bad Times’


コメント (15)
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