まるで、身内の恥をさらすような話なのだけれど ... 。
わたしの友人 (というか彼) は、お金にツイていない。
わたしと付き合うようになった、この十ヶ月くらいのあいだだけでも、空き巣に遭い、お財布を失くし、いつも窮々している。
やっと、ここのところ経済状態も立ち直ってきたので、二人で温泉旅行でも行きたいね、なんてことを言っていた。
そして、今月末に、修善寺へ行く予定であった。
とても、楽しみにしていたのに。
先週半ば、彼からメールが来て、とつぜん、「旅行には行けなくなった」 と。
その前日まで、旅行の話をしていたのに、あまりに急なので、おかしいとは思ったのだけど、仕事がいそがしいのだろう ... ということにした。
彼のことだから、きっとなにか、理由があるはずだ、と。
そうして、先週末、いつものようにいっしょに過ごして、さりげなく、「なんで旅行に行けなくなったの?」 と訊いたら。
彼は、言わねばならぬ時が来た、という様子で、「あのね」 と言って、話しはじめた ―― 。
先週の日曜の夜、彼が、わたしの部屋に泊まりに来ていた。
翌朝、月曜日、彼が仕事に出る前に起きて、わたしは、朝ごはんを作った。
(ちなみに、わたしは、朝ごはんを食べない)
彼のために、一食分だけ、用意。
一人暮らししていて、あまり食事に頓着できない彼のために、栄養のある朝ごはんをしっかり食べてほしいのである。
彼は、よろこんでごはんを食べて、仕事に向かった。
わたしが、いそがしい朝の時間のなか朝食を作ってあげたことで、とても気分よく歩いていたそうなのだが、急に、便意をもよおして、駅のトイレに寄ったとか。
以下、ちょっと変な話で、恐縮 ... なのだけれど。
彼は、大きいほうをするときに、いわゆるワンワン スタイルというのだろうか? しゃがまないと、出ない人で、和式トイレでないとだめなのである。
で、駅のトイレで、いつものように、ズボンのポケットの中身 ―― お財布と携帯電話 ―― を出して水タンクの上にぽんと置き (ポケットになにか入っているとしゃがみづらいのだそうだ)、ズボンとパンツを下ろして、よっこいしょとしゃがんで、用を足した。
御用が済み、気持ちよく駅のトイレを出、そのまま会社に向かった。
お財布と携帯電話を置きっぱなしのまま ... 。
そのことに気がついたのは、会社に着いてからだった。
その後、駅に問い合わせたら、携帯電話は届けられているとのことだった。
しかし、お財布は ... 。
まえに、ここで、何度か書いたことがあると思うのだけど、彼は、お金を銀行に預けたりするのがきらいなうえ、空き巣に入られたことがあって、家にお金を置いておけないので、全財産をお財布のなかに入れて持ち歩いているのである。
その、全財産が入っているお財布を失くしてしまったのだ。
いくら入っていたのか定かではないが、きっと、そのお財布は戻ってこないだろう ... 。 たとえ、お財布が戻ってきたとしても、なかに入れていたお金はきっと戻ってこないだろう ... 。
わたしたちは、無言でうつむいた。
そういうわけで、彼は、またまた、無一文になってしまったのだ。
う~ん。 またお財布を失くすなんて ... 。 かわいそうな彼。
ああ、ひょっとして、わたしの devil パワーで、金運を吸い取っているのだろうか ... 。
(考えてみると、わたしのほうは、ここのところお金まわりが良い。 いそがしいながらも、仕事が好調なので ... )
あああ、わたしは、彼のためによくないのかしら ... 。
わたしが、あの日、朝ごはんを作ったりしたから ... 。
きっと、わたしったら、余計なことをしたんだわ ... 。
わたしは、彼からすべてを奪い取る、devil なんだわ ... 。
... なんてことを考えて、落ち込んでいたら、昨夜、彼から電話が。
なんと、お財布が戻ってきたのだそうだ!
昨日、警察のかたから電話がかかってきて、お財布が届けられていると連絡があったそうで。
どきどきしながら、お財布を取りに行き、どうせ中身はないだろう ... と思って、確認すると、全額そのまま残っていたという!
なんという親切な、奇特な人がいるものだろう ... と、拾ってくださったかたの連絡先を訊き、さっそくお礼の電話をかけてみたとか。
電話の向こうのかたの声は、想像していたより、ずっと若くて、いまどきの少年ふうだったそうだ。
こんな人が、ネコババもせずに、財布を届けてくれたのか ... と、ちょっと驚きつつも、
「あなたのような人に拾ってもらって、ほんとうに助かりました。 ありがとうございます」
と伝えると、電話の向こうのかたは、
「いえいえ、いいんです。 ほんとのこというと、一瞬、お金に目がくらんだんですけど、小銭入れのなかに、(ギターの) ピックがあったんで ... 。 おれも、バンドやってて、おんなじメーカーのピックを使ってるんですよ。 で、バンドやってる大変さを、おれも知ってるから、悪いな ... と思って ... 」
と、照れくさそうにおっしゃっていたとか ..... 。
ギターのピックを、入れていて、良かったね!
バンドマンに拾ってもらって、良かったね!
世の中、悪いことばかりじゃないね!
うん。
ありがとう。
ギターの神さま ... ?
... でも、これからは、お財布を失くさないようにしないと、ね。
(ちなみに、旅行は、すでにキャンセルしてしまったあとでした ... )
当 blog 内関連記事:
・「こころのジューク・ボックス / Please, Please Me」
・「ほんとうは、ナニジン?」
・「プライドのカタマリ」
BGM:
Rolling Stones ‘Good Times, Bad Times’
わたしの友人 (というか彼) は、お金にツイていない。
わたしと付き合うようになった、この十ヶ月くらいのあいだだけでも、空き巣に遭い、お財布を失くし、いつも窮々している。
やっと、ここのところ経済状態も立ち直ってきたので、二人で温泉旅行でも行きたいね、なんてことを言っていた。
そして、今月末に、修善寺へ行く予定であった。
とても、楽しみにしていたのに。
先週半ば、彼からメールが来て、とつぜん、「旅行には行けなくなった」 と。
その前日まで、旅行の話をしていたのに、あまりに急なので、おかしいとは思ったのだけど、仕事がいそがしいのだろう ... ということにした。
彼のことだから、きっとなにか、理由があるはずだ、と。
そうして、先週末、いつものようにいっしょに過ごして、さりげなく、「なんで旅行に行けなくなったの?」 と訊いたら。
彼は、言わねばならぬ時が来た、という様子で、「あのね」 と言って、話しはじめた ―― 。
先週の日曜の夜、彼が、わたしの部屋に泊まりに来ていた。
翌朝、月曜日、彼が仕事に出る前に起きて、わたしは、朝ごはんを作った。
(ちなみに、わたしは、朝ごはんを食べない)
彼のために、一食分だけ、用意。
一人暮らししていて、あまり食事に頓着できない彼のために、栄養のある朝ごはんをしっかり食べてほしいのである。
彼は、よろこんでごはんを食べて、仕事に向かった。
わたしが、いそがしい朝の時間のなか朝食を作ってあげたことで、とても気分よく歩いていたそうなのだが、急に、便意をもよおして、駅のトイレに寄ったとか。
以下、ちょっと変な話で、恐縮 ... なのだけれど。
彼は、大きいほうをするときに、いわゆるワンワン スタイルというのだろうか? しゃがまないと、出ない人で、和式トイレでないとだめなのである。
で、駅のトイレで、いつものように、ズボンのポケットの中身 ―― お財布と携帯電話 ―― を出して水タンクの上にぽんと置き (ポケットになにか入っているとしゃがみづらいのだそうだ)、ズボンとパンツを下ろして、よっこいしょとしゃがんで、用を足した。
御用が済み、気持ちよく駅のトイレを出、そのまま会社に向かった。
お財布と携帯電話を置きっぱなしのまま ... 。
そのことに気がついたのは、会社に着いてからだった。
その後、駅に問い合わせたら、携帯電話は届けられているとのことだった。
しかし、お財布は ... 。
まえに、ここで、何度か書いたことがあると思うのだけど、彼は、お金を銀行に預けたりするのがきらいなうえ、空き巣に入られたことがあって、家にお金を置いておけないので、全財産をお財布のなかに入れて持ち歩いているのである。
その、全財産が入っているお財布を失くしてしまったのだ。
いくら入っていたのか定かではないが、きっと、そのお財布は戻ってこないだろう ... 。 たとえ、お財布が戻ってきたとしても、なかに入れていたお金はきっと戻ってこないだろう ... 。
わたしたちは、無言でうつむいた。
そういうわけで、彼は、またまた、無一文になってしまったのだ。
う~ん。 またお財布を失くすなんて ... 。 かわいそうな彼。
ああ、ひょっとして、わたしの devil パワーで、金運を吸い取っているのだろうか ... 。
(考えてみると、わたしのほうは、ここのところお金まわりが良い。 いそがしいながらも、仕事が好調なので ... )
あああ、わたしは、彼のためによくないのかしら ... 。
わたしが、あの日、朝ごはんを作ったりしたから ... 。
きっと、わたしったら、余計なことをしたんだわ ... 。
わたしは、彼からすべてを奪い取る、devil なんだわ ... 。
... なんてことを考えて、落ち込んでいたら、昨夜、彼から電話が。
なんと、お財布が戻ってきたのだそうだ!
昨日、警察のかたから電話がかかってきて、お財布が届けられていると連絡があったそうで。
どきどきしながら、お財布を取りに行き、どうせ中身はないだろう ... と思って、確認すると、全額そのまま残っていたという!
なんという親切な、奇特な人がいるものだろう ... と、拾ってくださったかたの連絡先を訊き、さっそくお礼の電話をかけてみたとか。
電話の向こうのかたの声は、想像していたより、ずっと若くて、いまどきの少年ふうだったそうだ。
こんな人が、ネコババもせずに、財布を届けてくれたのか ... と、ちょっと驚きつつも、
「あなたのような人に拾ってもらって、ほんとうに助かりました。 ありがとうございます」
と伝えると、電話の向こうのかたは、
「いえいえ、いいんです。 ほんとのこというと、一瞬、お金に目がくらんだんですけど、小銭入れのなかに、(ギターの) ピックがあったんで ... 。 おれも、バンドやってて、おんなじメーカーのピックを使ってるんですよ。 で、バンドやってる大変さを、おれも知ってるから、悪いな ... と思って ... 」
と、照れくさそうにおっしゃっていたとか ..... 。
ギターのピックを、入れていて、良かったね!
バンドマンに拾ってもらって、良かったね!
世の中、悪いことばかりじゃないね!
うん。
ありがとう。
ギターの神さま ... ?
... でも、これからは、お財布を失くさないようにしないと、ね。
(ちなみに、旅行は、すでにキャンセルしてしまったあとでした ... )
当 blog 内関連記事:
・「こころのジューク・ボックス / Please, Please Me」
・「ほんとうは、ナニジン?」
・「プライドのカタマリ」
BGM:
Rolling Stones ‘Good Times, Bad Times’