前に書いた爺様の掛け軸、それがきっかけで広島の狂歌師、栗本軒貞国について調べるようになり、この「狂歌家の風」享和元年(1801)出版、を読んだ。これが収められている近世上方狂歌叢書は本文のみで歌の解説はなく、狂歌初心者の私にはわからない事も多いのだけれど、少し歌を紹介してみたい。一応意味がとれたものの中から順不同で、今日は冬の部から一首
枯木雪
はゝてうと落た枯木に真黒なからすのうらをみする白雪
「はゝてう」はオノマトペだと思った。それだと枯木から落ちた雪がカラスの裏を見せる、ってどういうことか、すっきりしなかった。しかし一応調べてみようと検索したら、「はゝてう」はなんと叭叭鳥(ははちょう)という鳥の名で、今はハッカチョウというそうだ。外来種で、ムクドリ科の黒い鳥だが翼に白い斑点があり、飛ぶときにその白色が目立つとある。また、日本でも江戸時代に飼う習慣が広まり、若冲の絵などで知られている・・・この絵を知らなかったのがアレだったわけだ。
そういうことならば、枯木から雪が落ちてカラスが驚いて飛び立って、その飛翔と雪が重なって叭叭鳥という連想だろうか。これでかなりすっきりした。
あと疑問点が二つ。題が枯木の雪であるから、枯木に積もった雪が落ちたと考えたけれど、歌だけだと枯れ枝ごと落ちたようにも読める。これは大したことではないか。もう一つ、オノマトペは関係なかったのだろうか。はゝてうと落た、というからには落ちる描写だと思うが、どんなニュアンスなのか、ここはもう少し他を探してみないといけない。