新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内 科学分野の藤原和哉特任准教授、曽根博仁教授らの研究グループが
糖尿病患者の 100 人に 1 人は「治っていた」
4万8千人の患者データ解析で明らかになった「寛解」の頻度と条件
という発表を5月29日にされました。
私、この発表を読んであきれ返りました。 開いた口が塞がらないとは此の事です。怒り心頭、頭から火が噴き出ています。
この研究グループ一体何を考えているのでしょうか。無知なマスコミが一時的にでも取り上げてくれたら嬉しいのでしょうか。薬嫌いの一般人の賞賛が目当てなのでしょうか?
日本中の、いや世界中の糖尿病研究者から呆れかえられることは明白なのに。
先ず、糖尿病患者の 100 人に 1 人は「治っていた」とする主題、医師だったら全員が「治る=治癒と寛解の区別も出来ないのか?あんたそれでも医者か?」と言います。
治る:治癒するという事は、その病から全く解放されるという事です。
一方、寛解・緩解 と言うのは、治癒は決してしていないけれど、現状では一見収まっている様に見える(いつ再発するか予断を許さない)状態を言います。
例を挙げれば、風邪や肺炎は治ります。治癒します。しかし、白血病や甲状腺機能低下症、亢進症などは治癒ではなく寛解・緩解 に留まることが多いです。病気の種は消えないと言う事です。普通の糖尿病は遺伝的体質に起因する部分が大きいので、治癒には至らないのです。そんなの常識です。
医者ならだれもがその大きな違いを理解しています。(その筈なのですけどねぇ。)
そんなことも理解できない医師集団それも国立大学医科のトップ研究者グループが存在するなんて本当に想像を絶します。
生活改善すればある程度の方が寛解に至ることは糖尿病治療者の間では当たり前の事実です。糖尿病の治療の基本は、だから生活改善なのです。これは、イロハのイの字の常識です。
発症から時間が短く、生活改善の余地が大きい人ほど寛解し易いことも誰もが感じていることです。その事実を数値で発表したことは意義があるとは思います。ですが・・・
この人たち、「100人に1人は治っていた」 と言っておきながら、1年後には3人に2人は再発していたとしゃあしゃあと言うのです。全然治っていないじゃありませんか。2年後の寛解維持すら300人に1人。300人中299人は糖尿病の真っただ中です。この分で行くと、3年後は500人に一人くらいかもしれませんね。そして10年後には「そして誰もいなくなった。」と、なるのでは?
それでも、糖尿病は薬なしで治る可能性があると思い込ませたいのでしょうか?300人中299人の糖尿病患者の人生を狂わせても良いと思っているのでしょうか?その神経が信じられない私です。吐き気を催します。
その上ですよ。追跡期間(中央値)5.3 年に 3,677 人が寛解に至り、その頻度は 1000 人を 1 年 追跡すると 10.5 人(約 1%)となりました。観察開始時の患者さんの特徴を詳細に検討した結 果、①男性、②40 歳未満、③糖尿病と診断されてから 1 年未満、④HbA1c 値 7.0%未満、⑤BMI が高値、⑥1年間の減量幅が 5%以上、⑦薬物療法を受けていない人においては、寛解に至る割 合が高く(図1、表 1)、その中でも、薬物療法を受けていない人、HbA1c 値 7.0%未満の人、 1 年間の減量幅が 5~9.9%の人、10%以上の人では、1000 人年あたりの寛解発生数が、それぞ れ 21.7 人、27.8 人、25.0 人、48.2 人と上昇していました。
本当にマスコミに取り上げられさえすれば、どんな影響を与えてもいいと思っているのでしょうか?本当に最低ですね。薬物療法を受けていない人は寛解に至る率が高い なんて、まともな医者なら口が裂けても言えないはずです。
糖尿病の寛解というのは、2021年に米国糖尿病学会(ADA)を中心とする専門家グループが「糖尿病の寛解の定義は、薬物療法を行っていない状態が3ヵ月以上持続している場合」と定義しています。
薬物療法を受けていたら寛解に至ることは有り得ないのです。
このレポートで明らかになったことは
1,糖尿病は決して治癒しない
2,糖尿病を投薬無しで治療すると、1年後の感懐率は1% 2年後の感懐率は0.3%である
と言う厳しい事実です。
この事実を「100人に1人は治っていた」と捻じ曲げて発表してまで、称賛を得たいのでしょうか?
こんなバカげた発表で、早期に薬物療法を受けるべき人を治療から遠ざけてたいのでしょうか?
この新潟大学の愚か極まりない発表が、今後の糖尿病治療に悪影響を及ぼさないことを切に祈る次第です。
私は怒りで満ち満ちています。