命のカウントダウン2(健康余命729日)

以前のブログ「命のカウントダウン」にユーザーとしてアクセス不能。今しばし、こちらに引越します。以前のブログも見てね!

どこで最期の時を迎えたいですか?

2024-10-22 23:21:12 | 在宅医療
誰もがみんな死んじゃうよシリーズ その2です?
(表題の写真は「マルセル・デュシャン」の「されど、死ぬのはいつも他人」の墓碑銘。)


何処で最期の時を迎えたいですかという問いには、7割近い方が自宅でと言われます。でも、最近の日本で自宅で死を迎える方は13%程度で、残りの多くの方は病院などの施設で死を迎えられます。
70年ほど前は全く逆で、8割ほどの方が自宅で亡くなられていました。
 日本ではもともと在宅死が当たり前で、1951年の在宅死率は82.5%だったのです。1961年に国民皆保険制度がスタートし、少ない負担で入院治療が受けられるようになったことや核家族化が進んだことで在宅死は減少し、1977年には病院で死亡した人の割合が45.7%となって、在宅死率(44.0%)を初めて上回りました。 その後、在宅死率は激減し2005年と2006年には12.2%と過去最低を記録しました。2004~15年まで在宅死率は12%台で横ばいでしたが、人工呼吸器、点滴、心電図のセンサーなど、たくさんの管につながれた“スパゲッティ症候群”のまま死を迎える病院死への批判などから在宅死が見直され、2016年以降徐々に増加、この数年は新型コロナの影響もあって在宅死は18%程度まで増えています。

 多くの方が住み慣れた自宅での在宅死を望まれますが、実際にはそうならない。在宅死を妨げる要素は色々あります。その中で一番大きいのはご家族に掛かる負担の様です。ご家族に負担を掛けないで在宅死が遂げられればいいのですが、現在のサポート体制ではそれはなかなか困難です。
 おひとり様での在宅死可能ではあります。しかし、それには相当な覚悟を持っていただかないといけません。おひとり様で過ごされてきた方は、その覚悟を持っておられる方が結構な割合でおられます。そのような方であれば、私たち在宅医療に関わる関係者は、おひとり様の在宅死をサポートしたいと思っています。

 在宅死のメリットは、住み慣れた場所で家族やペット、好きなものに囲まれて、人生の最終段階を自分らしく過ごせることです。穏やかに死を迎えられることも多いのです。病院で痛みがコントロールできずに苦しんでいた人が、生活の場である自宅へ帰っただけで痛みが軽減し、医師の予想より長く生きる例は枚挙にいとまがありません。

 デメリットは、病院のように、すぐ駆け付けられ範囲に看護師や医師などがいるわけではないことです。場合によっては家族に多大な負担がかかることがあります。なお、定期的に医師の訪問診療を受けているか、死亡診断書を書いてくれるかかりつけ医がいる人が在宅死した場合には、「不審死」とはならず、警察を呼ぶ必要はありません。

私は、遠くまで遊びに行く事が多いです。そんな時に病状が悪化する患者さん、時には亡くなってしまう方もおられます。多くの場合、ある程度予想の範囲内であることが多いので、訪問看護師に用意してあった点滴をしてもらうことなどで解決したり、予定していた病院に入院していただいたりします。
 不幸にして亡くなってしまった場合は、可能であれば旅行先から帰ることを試みます。しかし、それが出来ない遠方の場合などは、仲間の医師に死亡確認をお願いします。急変とはいえ、それまでの病態は把握していますから「不審死」で警察の厄介になり死体検案書作成となるのではなく、「病死」で死亡診断書となります。

在宅医療がもっと普遍的になって、在宅で最期まで過ごしたいと希望される方が一人でもその希望をかなえられますように!!



秋川雅史/千の風になって (short ver.)

最上の時間

2024-10-12 00:22:42 | 在宅医療
2024年10月12日18時から21時30分まで、私、最上
の時間を橿原市ロアジにて過ごさせていただきました。
在宅医療関連の仲間9人 毎月、第二水曜日にネットで集う7人+在宅看護師2人のメンバーでした。

本当に自慢の仲間達です。
そして、その仲間たちに皆、お互いに評価されているのが何よりも嬉しいです。

私、ストレートに医者になった人たちとは違って、大学中退、チリ紙交換の落ちこぼれから32歳で医師になったので、エリートコースを歩み続けた医師達とはやはり少し感覚が違うようです。

その違いを「落ちこぼれの時間の浪費」ではなくて、「回り道をした貴重な感覚」と評価してくれるのが、ここのメンバーたちなのです。

ここのメンバーは、患者さんの気持ちに寄り添っていきたいと言われます。私は、患者さんの気持ちに寄り添うなんてどうでもよくて、自分の気持ちがいい方に動きますとと言います。結果は同じなのですよ。不思議ですよね。

私は、今後も、患者さんに寄りそうよりも自分の気持ちに従って生きたいと思っています。それが、結果的に同じ方向を向くことを祈っていますけどね!

患者さんの気持ちに寄り添う心と、自分がしたい方向性が合わなくなった時、どうするのか?多分その時は、私が在宅医療を離れる時なのだと思います。すみませんが好きではなくなった仕事を続けるのは私には無理です。

今のところ、在宅医療と言う仕事、大好きなんですよ!このメンバーと同様にね!!!!!




Charles Chaplin 映画「モダン・タイムス」 スマイル " Smile " from Modern Times

キヤノンのレンズ群も魅力的でございました

2024-08-18 00:35:51 | 在宅医療
Nikonだけを紹介したのではいけないなと思って、キヤノンの交換レンズ群を見てみました。

私、カメラ自体には大した興味ありません。ミラーレスになることによってフランジパックが短くなって、レンズの設計の自由度が増したことに興味が大ありなのです。
フランジパックが短い優位性は、焦点距離が短いレンズほど大きいのです。ですから、私は新たに購入したいレンズは、広角系ばかりです。望遠系には全く興味ないです。
これらのレンズ、凄いですよね。お値段も凄いですが・・・
望遠系にはあまり興味ないのですが、良いレンズは良いので・・・・
まあ、こんな持ち運びにも難渋するようなレンズを購入することはないと思います。でも、ヨンニッパ、魅力的ですねぇ!!
面白い表現が出来そうですが、重いので私は要りませんです。皆さん、頑張って使ってくださいませ!!!!

久しぶりのベクルリー(レムデシビル)

2024-08-08 22:08:42 | 在宅医療
今日は木曜で休診日。何処に遊びに行こうか、それにしても暑すぎて外に出る気になれないな などとベッド上で考えていた午前9時過ぎ。携帯が鳴りました。訪問看護師からでした。「〇〇さんが38.5℃の発熱、サチュレーションは96%、血圧は・・・・」肺炎ではなさそうです。肺炎でない発熱、全身状態にも問題はなく、緊急性はなさそう。昼前後に往診しますと伝えました。
のろのろ起き上がり、素麵を湯がいて食べました。配偶者は五色が原付近に出張中です。一人飯は侘しいですね。

 ところで、侘び寂びという言葉の中では「侘び」という言葉はプラスイメージなのに、侘しいと形容詞になると、もの悲しさを感じさせるマイナスイメージの言葉になっちゃいますよね。そういえば、寂びもそうですね。寂びは古びた美しさを愛でるプラスの言葉、寂しいはマイナスの言葉ですよね。日本語って難しい というか、日本人の感性は繊細かつ微妙なバランスの上に成り立っているのですね。

閑話休題、昼過ぎちゃいましたが、患家に行きました。採血と点滴をしようとしましたが、その前にこれ確かめておかないと と、SARS-CoV-2抗原検査を施行。寝たきりの患者さんで、感染の可能性は低いと思いましたが、念のため。

何と、直ぐに陽性のラインが出てきました。あららららー。コロナじゃないですか!!

私、あろうことか、油断しておりました。マスクすら付けていなかったのです。大慌てで車に戻ってN95マスクを装着しました。患者さん、熱は38度台後半と高いのですが、呼吸音には異状なく、動脈の酸素飽和度も97%と良好でした。しかし、88歳の高齢者であり、複数の疾患をお持ちの寝た切り患者さん。重症化する可能性は相当高いと思われます。食欲が低下していて飲水もできにくくなっているとの事でしたので、主介護者の娘さんに入院加療を強くお勧めしました。ご本人は認知症が進んでいて、そこまでの判断能力はありません。意思の疎通は可能ですが、そのレベルは高くはないです。

娘さんの返事は ”No” でした。半年ほど前に重症肺炎で入院していただいたのですが、その時に認知症が相当進んだのだそうです。その上、本人が入院を強く嫌がっているとの事でした。

それで、腎機能などの内臓機能、服用中の薬を確認したうえで、パキロビッドパックを使うことにして患家を辞しました。

医院に戻って、パキロビッドパックの処方箋をFAXで志都美薬局に送ったのですが、それを追う様に患者さんの娘さんから電話がありました。「食べません、飲めません。薬も飲めない様に思います。点滴してください。」

結局、入院したらするであろうと思われる治療を、患家でそっくりそのまま行うことになりました(内容を決めたのは私ですけどね。)



24時間の持続点滴で1500mlの3号輸液を入れ、側管から抗コロナ薬のレムデシビルを1日1回30分以上かけて滴下する。

レムデシビルなんて高価な薬(1本6万3千円 3日分4本で25万2千円)持っている薬局あるのか?それが一番の問題だなと思ったのですが・・・・志都美薬局 やはり、何とも頼りになります。奈良県が誇る2つの薬局、志都美薬局とさなえ薬局。志都美には國廣英一 薬剤師 さなえには二十軒栄亮 薬剤師 二人とも緩和ケア医療にとても長けていて、麻薬などの調剤の面では医師の上を行くスーパー薬剤師です。

レムデシビル使いたいのだけれど、在庫ありますか?
ありますよ!

ほどなく、國廣薬剤師自ずから3日分4本を医院まで持ってきてくれました。院内で点滴回路、調剤を済ませました。患家での滞在時間を出来るだけ短くするためです。

患家では10分程度で持続点滴用のプラスチックチューブの針を上腕の静脈に何とか挿入、24時間点滴及び側管からのベクルリーをセットし終えました。

明日からは、訪問看護師が点滴の管理をしてくれるそうです。

私、新型コロナに感染してしまったかもしれません。明日からはN95マスク着用で仕事に当たることにします。感染したとすれば、自分が油断していたからで、自業自得、それは仕方ないけれど、今日1日を振り返ると、信頼できる院外処方薬局、訪問看護ステーションと良いチームワークで仕事が出来、患者さん、患者さん家族の要望を満たすことが出来た気持ち良い1日でした。帰り道、王将で冷麺と餃子を食べて、生餃子を息子の土産に買って帰って・・・今、ブログ打ち込んでいます。気分は良好!いまのところはね!!

点滴しないという選択(長文です)

2024-07-08 23:25:47 | 在宅医療
末期の医療において、点滴をしないと言う選択肢を選ぶのはなかなかに困難です。

患者さんそしてご家族の多くが点滴幻想を持たれています。点滴すれば病気は良くなる、病状は改善するという幻想です。通常の急性期医療の場合、必要な薬剤や、水分、塩分などを血管から直接体内に入れる点滴治療は非常に有効です。その印象が強いので、点滴すれば何でもかんでも良くなると思っておられる方が多くおられます。

しかし、末期医療においては全く状況が異なります。何しろ、有効な医療が既に無くなった状態なのですから。そこで点滴をすると、折角枯れて死を受け入れようとしている「体の中の自然」に逆らう事になります。それで、患者さんに苦痛を負わせてしまうことが多いのです。

亡くなる直前の点滴は、弱り切った体に余計な負荷をかけ、心不全、呼吸不全を悪化させることが多くあります。
自然に近い形で穏やかに亡くなったご遺体は軽いのに、病院で苦しんで亡くなった方のご遺体は重いと葬儀関係者の方に聞いたことがあります。
苦しまれた分だけ重みが増しているのではないかとも感じる私です。

私達、在宅末期医療を扱う医療関係者の間では、末期の点滴は施行しても500mlまで。許されるならゼロにしたい。というのが本音です。

私達、患者さんの苦痛の除去には熱心ですが、点滴は出来たらしたくないのです。

先日、そんな私たちの方向性を具現化した在宅看取りを経験しました。突発性間質性肺炎の患者さんでした。年齢は私と同世代の男性。

昨年夏まで海外を飛び回っておられた超エリートエンジニア。自立心の強い方で、肉体的な苦痛には我慢強いのに、入院加療の様に行動を縛られることが大いに苦手な方でした。自由を制限されることが苦手なのは私も人後に落ちない自信があります。私は肉体的苦痛にも弱いですけれどね。

その方の病気は、突発性間質性肺炎という難病の中でも急速進行性の特に質の悪いものでした。最初に坂根医院に来られたのが今年春だったのですが、これは手に負えない、と、その日のうちに病院に紹介しました。それなのに、患者さん、2つの病院を経由した挙句、約一か月後に戻って来られました。何故?と聞くと、病院は検査ばかりで何もしてくれなかったとの事でした。強引に退院してこられた事と、2つ目の病院は当院からの紹介では無かったので、診療情報も何もありませんでした。仕方なく、ありあわせの情報で難病の申請をし、在宅酸素療法を開始、病状が急速に悪化してきたのでステロイド治療も開始しました。

それでも、病状悪化は止まりませんでした。そこで、何か出来る治療はありませんか?抗線維化薬、免疫抑制剤、ステロイドパルス治療など、出来ることがあれば施行していただけませんかとの紹介状を書いてN医大を受診していただきました。病院受診に気の進まない患者さんご家族の背中を強く推して受診していただいたのですが・・・

入院されたと聞いてホッと一息ついていたのに・・・・2週間ほどしたら、明後日退院してこられますとの話が・・・・退院日に訪問看護師とご自宅に伺ったのですが、退院時の診療情報がありません。N医大に問い合わせてどうなっているのか聞くと、退院後もこちらに通院していただくことになっているので、紹介状はありませんとの事でした。在宅酸素の業者も変えられています。

患者さん、ご家族に聞いても、そんな希望はさらさら無くて、主治医に何度も「退院後は坂根先生に在宅医療してほしい」と念を押されていたそうです。

ご家族に「私に向かってなので、そう言われているわけでは無いですよね。」と、失礼ながら念押しの確認をしてから、N医大に文句の電話を入れました。「病院医と在宅医の間でトラブルが発生している。そんなトラブルは、何処に相談したらいいのか」と地域連携室に聞きました。そんな部署はありませんとの答えでした。無いのなら、作らないと、今後もこのようなトラブルは発生し続けますよ。とても重要な問題ですよ!と、脅しました。多分、その話が上の方にまで届いたのだと思います。とても驚いたことに、一開業医の文句が通りました。翌日には診療情報がFAXで届きましたし、2日後には病院の主治医本人から謝意の電話が直接ありました。

まあ、そんな大事件とはお構いなしに、患者さんの病状悪化は続きます。医大でも、積極的な治療は出来ないと言われたのだそうです。確かに線維化は完成しているので薬は効きにくいだろうとは思えました。しかし、何か出来る事はないかと考えました。
抗線維化剤や免疫抑制剤は在宅では扱いにくかった(保険治療でカバーできないものもある)ので、ステロイドパルス療法をご本人、ご家族承諾の上で1クール施行しました。最初の1投目した日だけ症状改善したかに思えたのですが、翌日からは元に戻ってしまい、1クール終わった時点では正に元の木阿弥でした。話し合いのうえ、維持量のステロイドを残して積極的治療は終了することにしました。

上の装置はエイミーPCAポンプと言う最新の微量薬液注入システム(患者さんがコントロール出来る機能付き)です。
これを2台使って塩酸モルヒネとミタゾラムという2種の薬の連続皮下注を開始しました。
いずれも患者さんの苦痛を取り去るのが目的です。10年前なら、そのような薬剤を在宅の非がん患者さんに使うことは想像できませんでした。こんな優秀なポンプも存在していませんでしたし。
一日の注入量は1つの装置で2.4ml、2つで5ml以下の注入量です。普通の点滴と全く量が違う事をご理解ください。


こんな最新の薬液ポンプを2台も使いながら、普通の点滴治療はしませんでした。患者さん本人の希望に沿わないからです。

下がこのポンプを使用し始めた時の血液ガスの結果です。酸素は経鼻で1.5l/minでした。
分かる人にはわかってもらえると思いますが・・・・
完全な負け戦
PaO2:64mmHgに対し
PaCO2:117.9mmHg とんでもないダブルスコアに近い大逆転(二酸化炭素濃度が酸素濃度を上回ってしまう状態)です。
それでも、話しかけると返事は帰ってきました。早く楽にして欲しい。殺してほしいとまで言われたのですが、これらのポンプを使う事で楽になられたのでしょう。傾眠ではありましたが、微笑みを浮かべられることもありました。
ポンプを使用して3日目、患者さんは自宅のベッドで大勢のご家族に見守られる中、静かに息を引き取られました。死亡確認をしたのはご家族、そして訪問看護師でした。在宅医師の私がお宅にお邪魔したのは翌朝早く、訪問看護師からの電話で知らされてでした。

ご本人、苦痛を感じない良い顔をしておられました。そして見送られたご家族の皆も涙の混じった笑顔で私を迎えてくださいました。

理想的な最後やんか と、私思ったのですが、いかがでしょうか?
長文、お付き合いありがとうございました。