1)
「 ふ~せん…だよね?」
そのとき、クオラは、懐から出てきたその物体を、顔の前で摘んでみて、寄り目がちに眺めてみているのだが、どこをどう見ても、何の変哲もない、しぼみきった飴色の風船だった。ためつすがめつ、クオラは、その風船をもてあそんでいたが、そのうちに、うずうずとフェチの虫が騒いでくる。
「 この色合いだと、きっと、透明なふ~せんさんね。」
そう口に出すと、クオラは、もう我慢できなくなって、薔薇色の健康そうなくちびるを、ふ~せんの吹き口に口づけて、ふぅ~ふぅ~っと甘い吐息を吹き込みはじめた。
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
クオラの予想通り、彼女が吐息を吹き込むと、生命を得たように、徐々に大きくふくらんでいく風船は、その透明度も増していく。
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
やがて、風船は、クオラの顔の大きさを越えて、半径がつんと尖らせたくちびるを中心として、半径が腰の高さまで達そうとしていたが、不思議なことに割れる気配を見せない。
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
巨大にふくらんでいる透明な風船越しに、クオラがクリア風船に息を吹き込んでいる様子が見えていたが、その半径が膝まで達したときに、異変がおこる。
クオラの顔から対面に、赤紫の五芒星を刻んだ魔方陣が走り、今度こそ明確な意思が宿ったかのように、どくんとゴム膜が脈打った。
それから、魔法陣と同じ赤紫に、透明だった風船が、急速に染まっていく。
「 ひぇっ!」
クオラは、驚いてくちびるを風船から放してしまうが、風船に込められたクオラの吐息が抜けることはなかった。
逆に、吐息が抜けることを防ぐかのように、どこからか生まれた紐で、するするっと、風船の吹き口が縛られていく。
「 えっ???!!!何?何???」
そうして、刹那の間に、吹き口を縛り終えた赤紫の巨大風船から、
「 ふわぁぁぁぁ~~~~っ。」
と、盛大なあくびの後で、アニメ声で、確かにこう言った。
「 こんにちは。よい子のみんなぁ、タフィお姉さんだよ♪」
微妙な空気が、風船とクオラの間に走ったのだった。
【つづく】
「 ふ~せん…だよね?」
そのとき、クオラは、懐から出てきたその物体を、顔の前で摘んでみて、寄り目がちに眺めてみているのだが、どこをどう見ても、何の変哲もない、しぼみきった飴色の風船だった。ためつすがめつ、クオラは、その風船をもてあそんでいたが、そのうちに、うずうずとフェチの虫が騒いでくる。
「 この色合いだと、きっと、透明なふ~せんさんね。」
そう口に出すと、クオラは、もう我慢できなくなって、薔薇色の健康そうなくちびるを、ふ~せんの吹き口に口づけて、ふぅ~ふぅ~っと甘い吐息を吹き込みはじめた。
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
クオラの予想通り、彼女が吐息を吹き込むと、生命を得たように、徐々に大きくふくらんでいく風船は、その透明度も増していく。
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
やがて、風船は、クオラの顔の大きさを越えて、半径がつんと尖らせたくちびるを中心として、半径が腰の高さまで達そうとしていたが、不思議なことに割れる気配を見せない。
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~~っ!
巨大にふくらんでいる透明な風船越しに、クオラがクリア風船に息を吹き込んでいる様子が見えていたが、その半径が膝まで達したときに、異変がおこる。
クオラの顔から対面に、赤紫の五芒星を刻んだ魔方陣が走り、今度こそ明確な意思が宿ったかのように、どくんとゴム膜が脈打った。
それから、魔法陣と同じ赤紫に、透明だった風船が、急速に染まっていく。
「 ひぇっ!」
クオラは、驚いてくちびるを風船から放してしまうが、風船に込められたクオラの吐息が抜けることはなかった。
逆に、吐息が抜けることを防ぐかのように、どこからか生まれた紐で、するするっと、風船の吹き口が縛られていく。
「 えっ???!!!何?何???」
そうして、刹那の間に、吹き口を縛り終えた赤紫の巨大風船から、
「 ふわぁぁぁぁ~~~~っ。」
と、盛大なあくびの後で、アニメ声で、確かにこう言った。
「 こんにちは。よい子のみんなぁ、タフィお姉さんだよ♪」
微妙な空気が、風船とクオラの間に走ったのだった。
【つづく】
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