1)
アネモネ魔法学院があるポワント・ウカーヴ皇国は、ウェンティア大陸の中央に位置し、エオリア朝が政を行っている立憲君主制の国家であり、その皇都アネモネアに政治と文化の中心を有している。
アネモネ魔法学院の正式名称は、皇立ポワント・ウカーヴ・アネモネア・エオリア・マジック・アカデミーという長ったらしい名前で、理事長のリナは一応、皇族であるのだが、普段からの行動を見ても、とても姫様とは思えないこともある。
クオラを教室へと送った後、独り、風船をつまんで、ためいきをつく、今のリナもそうだった。
「 何なのよ。この風船…。人を選んでいるような?」
話によれば、旧エオリア宮で、魔素の空白地帯である、通称、【魔女の狩り場】が現れたらしい。近年になって現れ始めた天災とも、どこかの黒魔術師の呪いだの、あるいは、近年開発された魔素機関なる機械のせいだとも言われているが、
正確な発生理由は分からない。ただ、魔素を資源として頼みにする、この世界中の国家は、この案件を重要視していた。
「 まっ…いっか。パシアニド通りの鑑定士に、これ、見せに行こうっと。」
リナは、ポケットに風船を入れると、繁華街へと繰り出すのだった。
2)
一方、クオラは、教室でぼんやりとポシェットを眺めながら、気が抜けていた。
「 はふぅ。このポシェットって、そんなに高級品だったんだぁ~。」
ただの風船入れじゃなかったのね。つか、どこからか、風船が出てくるしね~。なんて、物思いにふけっていると、正午のチャイムが構内に鳴り響いた。
「 あ。食堂行こうっと。」
確か、日替わりで、人気のステーキ定食が出てたはずだった。そのことを思い出したら、きゅるるるとかわいらしく、おなかの虫が主張をはじめたので、クオラは、教室を後にした。
3)
皇都アネモネアいちの繁華街であるパシアニド通りに行くと、冒険に必要なアイテム類も一通りのモノは揃うというギルドのクチコミから、人が集まる場所として、繁華街の名に恥じない様相を呈している。
その大通りから、路地に入った奥の袋小路に、鑑定屋はあった。
「 へぇ~?これは、また珍しい品ですなぁ。」
どこぞの長老と言ってもいいような鑑定士が、リナの持参した風船を見て、感歎の声をあげた。
「 ということは、ただの風船じゃぁないの?」
普通の風船なら、モンスターを解体したときの余りものから作るので、二束三文で玩具屋で売っているのだが、それとは異なるモノらしい。
「 これは、どちらかというと、魔道具ですな。【魔女の狩り場】なんてものが問題になっているこのご時世なら、欲しがる人も多いでしょうな。」
「 ふむふむ。それで、買い取り額は?」
「 そうですなぁ。リナ様には、上質なアイテムを持ってきてもらっているし、相場と期待を入れて…。」
リナの問い掛けに、店の主が提示した額は、逼迫した学園の窮状を救うに値するものだった。
4)
「 はぁ~。食った、食った。ステーキ定食、最高ぉ~。」
クオラは、満足げにおなかを摩りながら、校舎のベランダに敷かれた芝生の上に寝そべっていた。
「 それにしても、平和だね~。そだ、入門書…。入門書…。」
「 おっかしいなぁ?無くなってる。」
不思議なことに、懐に入れていたはずの風船魔法の入門書が消えていた。
「 無くさないように、入れておいたはずなのに。」
戸惑いながら、クオラが懐を調べていると、飴色のしぼんだ風船が見つかった。
「 ん?ふ~せん????」
【つづく】
アネモネ魔法学院があるポワント・ウカーヴ皇国は、ウェンティア大陸の中央に位置し、エオリア朝が政を行っている立憲君主制の国家であり、その皇都アネモネアに政治と文化の中心を有している。
アネモネ魔法学院の正式名称は、皇立ポワント・ウカーヴ・アネモネア・エオリア・マジック・アカデミーという長ったらしい名前で、理事長のリナは一応、皇族であるのだが、普段からの行動を見ても、とても姫様とは思えないこともある。
クオラを教室へと送った後、独り、風船をつまんで、ためいきをつく、今のリナもそうだった。
「 何なのよ。この風船…。人を選んでいるような?」
話によれば、旧エオリア宮で、魔素の空白地帯である、通称、【魔女の狩り場】が現れたらしい。近年になって現れ始めた天災とも、どこかの黒魔術師の呪いだの、あるいは、近年開発された魔素機関なる機械のせいだとも言われているが、
正確な発生理由は分からない。ただ、魔素を資源として頼みにする、この世界中の国家は、この案件を重要視していた。
「 まっ…いっか。パシアニド通りの鑑定士に、これ、見せに行こうっと。」
リナは、ポケットに風船を入れると、繁華街へと繰り出すのだった。
2)
一方、クオラは、教室でぼんやりとポシェットを眺めながら、気が抜けていた。
「 はふぅ。このポシェットって、そんなに高級品だったんだぁ~。」
ただの風船入れじゃなかったのね。つか、どこからか、風船が出てくるしね~。なんて、物思いにふけっていると、正午のチャイムが構内に鳴り響いた。
「 あ。食堂行こうっと。」
確か、日替わりで、人気のステーキ定食が出てたはずだった。そのことを思い出したら、きゅるるるとかわいらしく、おなかの虫が主張をはじめたので、クオラは、教室を後にした。
3)
皇都アネモネアいちの繁華街であるパシアニド通りに行くと、冒険に必要なアイテム類も一通りのモノは揃うというギルドのクチコミから、人が集まる場所として、繁華街の名に恥じない様相を呈している。
その大通りから、路地に入った奥の袋小路に、鑑定屋はあった。
「 へぇ~?これは、また珍しい品ですなぁ。」
どこぞの長老と言ってもいいような鑑定士が、リナの持参した風船を見て、感歎の声をあげた。
「 ということは、ただの風船じゃぁないの?」
普通の風船なら、モンスターを解体したときの余りものから作るので、二束三文で玩具屋で売っているのだが、それとは異なるモノらしい。
「 これは、どちらかというと、魔道具ですな。【魔女の狩り場】なんてものが問題になっているこのご時世なら、欲しがる人も多いでしょうな。」
「 ふむふむ。それで、買い取り額は?」
「 そうですなぁ。リナ様には、上質なアイテムを持ってきてもらっているし、相場と期待を入れて…。」
リナの問い掛けに、店の主が提示した額は、逼迫した学園の窮状を救うに値するものだった。
4)
「 はぁ~。食った、食った。ステーキ定食、最高ぉ~。」
クオラは、満足げにおなかを摩りながら、校舎のベランダに敷かれた芝生の上に寝そべっていた。
「 それにしても、平和だね~。そだ、入門書…。入門書…。」
「 おっかしいなぁ?無くなってる。」
不思議なことに、懐に入れていたはずの風船魔法の入門書が消えていた。
「 無くさないように、入れておいたはずなのに。」
戸惑いながら、クオラが懐を調べていると、飴色のしぼんだ風船が見つかった。
「 ん?ふ~せん????」
【つづく】
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