かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

恐ろしい販売促進戦略

2024年04月26日 | 昼下がりの外来で
禁煙治療の依頼がたまにある。
食道がん治療担当の医師からで、最近は初診時に紹介してくれるようになったので、手術までに禁煙治療もだいたい終わる。

食道がんになる人は、酒とタバコの両方を、それなりにやってきた人が多い。

「結婚するときに、自己責任ですからね!と言ったんですよ。本当はやめてほしかったんですけど」

ご本人よりも、一緒に来院された奥様のほうが、身を乗り出して積極的に発言なさる。

「家の中と車の中は禁煙にしてもらっているので、私は受動喫煙していません」

「結婚が遅かったので、健康には注意しないといけないと思って、塩分濃度をきちんと測って、お味噌汁を作っていました。素材の美味しさを大事にしてます」


塩分を控えて、どんなに食事内容に気を付けていても、残念ながらタバコの発がん効果は比べ物にならないくらい強いことを早く知ってほしかった。

「自己責任」と言っても、パートナーが癌になったら、そんなことを言っていられないのが現実・・・


最近は紙巻きタバコよりも加熱式タバコのほうが主流になってきているが、「がんとわかってから、電池式のやつをちょっと始めてみました」とおっしゃる。

加熱式タバコもタバコであることに変わりがないし、禁煙に役立たない。
このことも、まだ誤解が多い。

それに、加熱式タバコを買ったきっかけが、恐ろしい。

いつものように紙巻きタバコをコンビニで買ったら、加熱式用のタバコが当たってプレゼントされたので、電池の入っているデバイス本体を数千円で買って、吸い始めたのだとか。

まんまとタバコ会社の戦略にはまった人が、ここにひとり・・・

それにしても、世にも恐ろしいタバコの販売促進戦略だ。





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