かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

○○プレイ

2015年02月03日 | 昼下がりの外来で
「上司が喫煙所にタバコを吸いに行くとき、自分も誘われるんです。断ったらクビにされるんじゃないかと心配で、禁煙ができません」


本気でこんなことを言う人がいる。


『マジッ!?ジョーダンでしょ!他人のせいにしているうちは、いつまでたっても何も変わらないよ!ニコチンのせいにするならべつだけど』


思わず声を荒げてしまった。
彼は精神科からも色々薬をもらっていて、こういう人は問題の本質になかなか切り込めず、堂々巡りしてしまう傾向がある。

精神科の医者ならうまくやるのだろうけれど、こちらは未熟なもので、こういう相手に対しては時にサディスティックになってしまうアタシ。
診察室で容赦なく、ムチを振る。


『喫煙所の誘いを断ったからという理由でクビになんかされたら、訴えればいいのよ!だけど、ホントにそうなの?禁煙治療中だってこと、言ってないの?診断書かいてあげるわよ!』


「会社には子供の迎えだとかいって、早退してます…派遣社員なんで、立場が弱いんです…診断書って、お金かかりますよね…今日はお金持ってきてないんで…」


あぁ、イライラする。


『あのね…ホントはあなた自身がタバコやめたいって思ってないんじゃないの?そこんところ、逃げずによく考えないとダメよ。他の社員はどうなの?その上司とあなただけがタバコ吸ってるって?なるほどね。吸ってない人に相談して助けてもらったら?』


アタシも少し冷静になって、彼の職場の様子を頭に描いてみる。


『その上司はなぜあなたをわざわざ誘って喫煙所に行こうとするのかしら?ホントはやめたいって思ってるのかもね。だけどやめられない…喫煙所で独り吸っている自分がみじめなんじゃないかな。断るのがムリなら、とりあえず喫煙所には付き合ってあげて、吸わずにお喋りだけして帰ってきたら?』


『オイ、○○、ちょっと付き合えよ(今度そう誘ってきたらどうする?)』

ここで突然、ロールプレイング開始。

「はぁ…いまちょっと手が離せないんで…」

『だーいじょうぶだよ!ちょっとだけ付き合えよ』

「…」


『だめよ。アタシのシナリオどおりに、喫煙所には行きなさい』

「あっ、ハイ…」


(プレイ再開)

『あれ、吸わないの?』

「タバコ持ってきてないんで…」

『じゃあ、1本やるよ』

「いえ、ボク糖尿病あって、医者にタバコ止められてんですよ」

『ふーん。だけど1本くらい付き合えよ』

「いや。コマーシャルとかでも最近やってる禁煙外来にも行ってるんです」

『えっ、そーなの?禁煙つらくないの?』

「飲み薬とパッチがあってですね、ぼくはニコチンパッチ使ってるんですよ」


(ここでプレイ終了)


『いいね~♪その調子、その調子!やれるよ!』


「妻に禁煙のこと言ったら、タバコ吸ってる親戚のところには行かないようにしたほうがいいって」


『ほらね。奥さんもアドバイスしてくれるでしょ!タバコ吸わないひとは、みなたいてい応援してくれるものよ。会社の人もきっとそうだから、力になってくれるわよ。じゃあまた次回。作戦の成功を祈る!』
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