真似屋南面堂はね~述而不作

まねやなんめんどう。創業(屋号命名)1993年頃。開店2008年。長年のサラリーマン生活に区切り。述べて作らず

『大統領とハリウッド 』への蛇足

2021-04-22 | 読書-現代社会
『大統領とハリウッド 』アメリカ政治と映画の百年 村田晃嗣 著
で引っかかった箇所のメモ。

①ウィリアム・ワイラー監督が大戦中、B17に乗り組んで The Memphis Belle: A Story of a Flying Fortress (1944)を制作、続いてB25にも乗って、騒音で右耳の聴力を失った件で、「彼はやがてより大型のB-25にも搭乗し、その轟音や風圧のために片耳の張力を損ねた。」(p38)との記述は、大小が逆である。
B-17(四発)>B-25(双発)なので。
えーとね、発とは発動機、すなわちエンジンがいくつついてるかということ。

大きい方がうるさい筈と思ったのか、ちょっと確認すればわかる話だが。
引用元の本にそう書いてあった、のだろうか?

William Wyler
Biography
In April of 1945 he permanently lost the hearing in his right ear while filming a bombing mission from a B-25.

トリビアだが、なんでもスピールバーグ監督のお父さんも大戦中、B-25に乗り組んでいた由。
ところが、ワイラー監督失聴の件とともにそのことを語ったTV番組では、映像に出てきたのはB-24だったそうで。←南面堂同様の視聴者たちが「ちげーよ」と指摘しているというw

ま、アメリカでもそんなもんであるという。
Five Came Back (TV Mini-Series)
The Price of Victory (2017)
Goofs
Spielberg tells the viewer that William Wyler lost his hearing flying in a B-25.

②戦闘機がお好き?
~固定翼の作戦機は実際に関わらずなんでも「戦闘機」と表記するのはいい加減にやめてはどうか、の件

世の中には、「軍艦」とでも表記すべきところを全部「戦艦」にしてしまう向きが多数存在することが知られている。
同様に、軍用機を全部「戦闘機」と書いてしまう向きも存在するのかもしれない。素人ならば。
でも、著者は「素人」ではない筈。

その1:ジョージ・H・W・ブッシュ41代大統領が大戦中に海軍の最若手パイロット(高校卒業と同時に志願して入隊)として雷撃機に乗り組んで太平洋戦線で戦い、父島上空で被弾して撃墜され、部下2名は戦死したものの、機長のブッシュは潜水艦に救助された有名な話を紹介する中で、乗機が3人乗りの雷撃機(当日は爆撃任務)だったにもかかわらず、「彼は第二次世界大戦に進んで従軍し、搭乗する戦闘機を日本海軍に撃墜された経験を持つ」との記載(p151)は、素人臭いというか、相変わらずというか。

Lieutenant George H. W. Bush, USNR
41st American President
https://www.history.navy.mil/browse-by-topic/people/presidents/bush.html

George Herbert Walker Bush
12 June 1924 − 30 November 2018
https://www.history.navy.mil/research/histories/biographies-list/bios-b/bush-george-h-w.html

潜水艦が拾うところ
見つけたというより、潜水艦の現着まで僚機が上空で警戒護衛していた、との記述もあったな。

その2:その息子のジョージ・W・ブッシュ43代がイラク戦争の「勝利」アピールのために対潜哨戒機で空母に着艦して演説した(2003/5/1)件を、「彼はサンディエゴ沖の空母エイブラハム・リンカーンに戦闘機で着艦し」と記載している(p186)のは、興ざめというほかない。
「ジェット機」くらいにしておいた方がまだましだったんじゃないか?

Arrival on USS Abraham Lincoln

President George W. Bush

C-SPAN.org

 

その結果、ブッシュ親子の乗機の両方を、「戦闘機」にしてしまう
~国際政治学者として現実的な指摘を国会で行った(そのために学長再任を棒に振った)気骨は立派だ。
が、もし「固定翼の作戦機は全部、戦闘機でいいや」との線引き(?)があるとすれば、不可解千万。
安全保障をも論じる学究として、(学長ポストと引き換えに)せっかく守った信用に自ら傷をつけていると言っては言い過ぎか、そうでもないか…。

④その他微妙に違和感
「ケネディの死からわずか98分後に、しかもダラスからワシントンに戻る機中で、リンドン・ジョンソンは大統領に就任した」との記述(p73)は微妙。
これ、飛行中ではないよ。駐機場内だよ。
それは流石に分かっておる?
出発前に行った儀式が、「戻る機中」にあたるのかどうか。

当該場所に記念の銘板を設置するために、場所の特定をしました、という記事。
OGPイメージ

Dallas airport to mark spot where LBJ was sworn in as president

Love Field airport in Dallas will install a brass plaque to mark the s...

JP

 


ジャッキーを横に立たせて就任宣誓を、というのはジョンソンの要求だったと。
OGPイメージ

Lyndon B. Johnson demanded to be sworn in alongside Jackie Kennedy

Lyndon B. Johnson insisted that JFK’s wife Jackie Kennedy accompany hi...

IrishCentral.com

 
人気のあったケネディの正統な後継者とのイメージを重視したのね。

前後の場面
TRIP TO TEXAS: SWEARING-IN CEREMONY ABOARD AIR FORCE ONE, LYNDON B. JOHNSON (LBJ) AS PRESIDENT

銘板制作業者HPの「当社制作実績」掲載の当該銘板写真Bronze Marker Detailによると、
2:38 エアフォースワン機内で宣誓式(所要28秒)
2:47 アンドリュース空軍基地(ワシントン)に向けて出発
ということなので、「戻る直前の機中」が正確と言えようか。
車輪止めはまだ外してはいなかった筈だが、当該「機」はその直後に出発したので、「戻る機」中は間違いとは言い切れない、と言い張れないこともない、か。
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