フィンランドと中国を舞台にした、ビリヤードの試合に賭ける若者たちの
挫折や復活を織り交ぜて、それに関わるコーチや師匠との絆を描いた
「ロマンスの降る街」(原題・在暴雪時分)
私の推しのウー・レイ(呉磊)と、お初だったチャオ・ジンマイ(赵 今麦)の
二人の主役によるラブロマンスを軸に、ビリヤードに賭ける若者たちの
緊迫する試合のシーンと、主役二人のラブラブな関係は
乙女な?大人な?私でも、やりすぎやで、と言うぐらいイチャイチャが多くて
ウー・レイが、ちょっと別人のようにも見えました。
そして、このラブロマンスドラマとは真逆な青年像をウー・レイが演じた
グー・シャオガン監督による
「西湖畔に生きる(原題・『草木人間<そうもくじんかん>)』」が
9月28日から上映されているのを知ったので、急遽思い立って
土曜日「テアトル梅田」に観に行ってきました。
この映画は、北海道から東北、関東、中部など全国で今上映されているようです。
中国・杭州市
最高峰の中国茶・龍井茶の生産地で知られる西湖。
上空から見下ろすように映す、広大な茶畑と隣接する奥深い森の木々の
山水画のような、 そのほとりに暮らす母・苔花(タイホア/ジアン・チンチン)と
息子・目蓮(ムーリエン/ウー・レイ)。
母は、山の美しい茶畑で茶摘みの仕事をしていたが
あることをきっかけに茶畑を追い出され、やがて違法ビジネスの地獄に堕ちる……。
釈迦の十大弟子のひとり・目連が
地獄に堕ちた母親を救う物語「目連救母」をヒントに
現代の物語として書き上げたオリジナル作品で
世界的映画音楽家、日本の梅林茂氏が音楽担当というのも話題の一つです。
<映画のタイトルについて裏話>
原題は「草木人間」
監督は「草」と「木」の間に「人」があるのが「茶」という字でもあると語っておられて
原題を使うのがふさわしいのですが、日本人の中には「くさきにんげん」と読む人が殆ど。
本来の映画のイメージが誤解されるかもしれないので
監督、制作会社と相談の結果『西湖畔に生きる』となったそうです。
私がウー・レイを好きなのは、この俳優さんの瞳(目力)の綺麗さです。
森の木々の中に住む人の神聖な空間と、地上に降りたところの現実との対比。
映画の中で観たこのシーンをYou tubeに出しておられる方がいたので
勝手にですがお借りしましたm(__)m
息子の目蓮(ムーリエン/ウー・レイ)という青年の「人」が見える映像です。
1年ぐらい前に観た「清越坊の女たち」で見た、伝統の織物の技術を守り抜いていく
物静かで芯の強い女性像(ジアン・チンチン)とは真逆の
貧しいが故にマルチ商法にはまって 豹変していく母親の
凄まじい体当たりな芝居に驚愕させられます。
そして、母を救うため、詐欺の証拠を見つけるため、詐欺集団の中に入り込み
本当に集団のマインドコントロールに嵌ってしまったかのような
息子(ウー・レイ)の姿はまるで麻薬中毒患者のよう。
このシーン撮影の時、芝居に没頭する俳優陣たちの精神状態を心配して
監督はドクターを待機させていたとか。
※公式サイトから画像をお借りしました
貧しさの中での疲れた心の隙間に入り込む魔の手で
地獄に落ちてしまった母の狂気。
そしてその母を救おうとする息子の純粋な心と強い愛。
ドラマの終盤の、全財産を失って失意で気を失ってしまう母を負ぶって
深い森の道なき道のような山道を、怪我もしながら登っていく息子の姿に
もし私がこんな風になったら、息子はこの彼の様に行動してくれるのだろうか。
そんな思いが過って涙がとまりませんでした。
人間の弱さを痛感し、そして強い人間愛・家族愛にも救われます。
エンディングで流れる音楽は、美しい緑の茶畑の映像を見下ろし
底辺で打ち鳴らされている大太鼓の音と笛や尺八の旋律。
つましいけれど、変わらない母子の生活が続くだろうことを予感させて
余韻が漂います。