〜かたることばが歌になる風になる〜

ソングと「ヒモの歌」のこと

「女声合唱団風」は2000年から活動している。今までに書いているが、前身は大阪の大学の音楽学部の学生で立ち上げた『合唱部』。
団はこの合唱部出身者と大学出身者で結成されている。

指揮者の音楽への姿勢などに惹かれて入っている団員は、同じような考え方、ポリシー(というほど大げさなものではないが)を持つ人が多いので、大学で同期でない先輩後輩もいるが、女声合唱団によくありがちな女性特有のトラブルは今まで皆無だ。

学生の頃から、ピアノ科の者が伴奏を受け持っていたが、大学の先生として残りコンサート活動しながら活躍している人もいる。また作曲科の先生や、今も高校や、大学で教鞭を取る人も数人いる。

団にはピアニストとして担当する人は5人いて、毎年指揮者がそれぞれのステージの曲に合わせてそれぞれに担当曲を配分している。丁度劇団の役者の配役のようだと私はいつも楽しみにしている。

伴奏しないステージはコーラスで歌う。その切り替えがすぐできるなんてと、聴きに来てくれる同級生などは、そういうことの難しさを思ってびっくりするぐらいだが、本人たちは学生の時からやっているのでさほど大変だと思っていない。

数年前、ドイツの劇作家のベルトルト.ブレヒトの「三文オペラ」の中の『マック・ザ・ナイフ』の中で歌われる、クルト.ヴァイルが作曲した『タンゴ・バラード』という『ソング』を歌った。
日本語訳で歌っているが、劇の筋書きが良くわかっていないと歌詞もよくわからないと言うところがあるが、実は団員も音楽作品の『ソング』として歌っているのであまり理解できていないのだ。

『ソング』というジャンルは、B.ブレヒトが演劇に使った<見慣れたものに対して奇異の念を抱かせる「異化効果」>という手法で、芝居に没頭して見入っている観客に、少し距離を置いて客観的になるような効果を狙って、突然芝居の筋書きには関係ない歌(ソング)が始まるのだ。
合唱団が歌った『タンゴバラード』(You tubeで聴ける)を『ヒモの歌』という連弾曲に林さんが編曲した作品を、私がプリモ(高音部)、大学のピアノ科で教えている後輩がセコンド(低音部)で演奏した。「女声合唱団風」ならではの企画だ。

林光さんはピアノ伴奏で日本のお話をオペラにすることに費やされて、そこで歌われる劇中歌(ソング)を合唱団でもたくさん歌い紹介してきた。林さんのソングも詩の内容に溺れてしまわず、いつも距離を置いた関係で作曲をされている。団の指揮者も常にそのように歌ってほしいと指導してこられた。
確かに林さんの作品は詩の内容が重たいものほど、柔和で軽くおしゃれな旋律、リズムで作られているものが多い。
2013年に歌ったソング「うた」などはそういう作品。

この「うた」の歌詞は既存の歌、流行歌などの詩が挿入されている。
一番最初は「ぼうやの子守はどこへいったあの山こえて谷こえて」
次は「なじかわ知らねど心詫びて 昔の伝えぞそぞろ身に沁む(『ローレライ』の名訳・何故だかわからないが心がわびくしくなって、昔の伝説(ライン川のローレライの伝説)が心に沁みてくるよ)」
最後は水原弘(第一回レコード大賞受賞?)の『黒い花びら』から「だからだからもう恋なんてしたくないのさ」この歌をご存知の方は私と同世代かと思う(笑)

劇中歌ではないソングも色々ある。
林さんが思い入れがあって選んだ詩人のものに作曲したものでは、先に書いた「挿し木をする」や、社会での理不尽なこと、事件などを扱った詩や、林さんの詩によるものが多く「流れる水と岩の歌」は、1952年の「大須事件」の被告を励ますコンサートのために作詩作曲した作品だ。
ほかに中米の国ニカラグワで自由のために戦って処刑された、エドウィン.カストロが獄中で書いた詩(黒沼ユリ子訳)を見つけて作曲した「告別」など。これらはやわらかく明るいメロディーに仕上げているのが特徴。


活動を終了した「女声合唱団風」のこと、「コーラス花座」のこと、韓国ドラマ、中国ドラマなど色々。

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