他人様の事をとやかく言う気はない。
スマホもケータイもクレジットカードも持ってなかった頃。
一人の20代女子が、インドに向かった。
背中にバックパック、情報源は投稿型ガイドブック1冊。
2ヶ月弱、いろいろな所に行っていろいろな人に出会った。
デリー到着からしてハプニング。到着時間が早朝過ぎて、市内までのバスを待ってたら、とりあえず身なりの良いおじさんに声かけられて市内まで送ってくれると…。で、バイクの後ろに乗っけてもらって連れて行かれたのは…………おじさんの自宅かよ……。
チャイをふるまってくれると言うので、台所までついて行ってヘンなもん入れられないかチェックチェック。
チャイを頂いたら、しつこく頼んで何とかデリーの繁華街まで送ってもらう。
右も左もわからない住宅街だったので、一人でバックパック背負ってじゃ身動き取れないし…。
ボンベイのYWCAでは満床で断られ、外に出たらすぐに人の良さそうな若者に声をかけられた。話を聞こうとした矢先、YWCAの2階の窓からフロントのおばさんが大声で私を呼び、手招きしている。
ベッドが空いたのかと思って戻ってみたら、とても厳しい顔で「今声をかけた男は悪い人間だからついて行ってはいけませんよ」と忠告してくれて、近くのホテルの空きを電話であたってみてくれた。
うん、優しい顔で話しかける人には気をつけよう。
トリヴァンドラムの寺院では「ガイドしてやる」とヨレヨレのじいさんが言い寄ってきた。
貧乏旅行だからガイドに払うお金はないと言ったら、ガイド料なんか要らないよと言う。
そんならいっか~と思ってついて行ったら、なるほど、一人で漫然と歩くだけでは見過ごしたであろう工房なども見せてもらって満足。
無事に入り口に戻ってきて「ありがとう」と帰ろうとしたら、じいさんは手のひらをこちらに突き出して「バクシーシ(喜捨)!」。
確かにバクシーシはガイド料とは意味が違う…
しかし、これから行く場所ごとにガイドにバクシーシでは先に進めないので、以後、ガイドの申し出は全て断ることにした。
列車でマドラスに向かう予定が、真夜中に手前のグドゥールって何にもなさそうな町で足止め。想定外。
一刻も早くマドラス方向に行く列車に飛び乗ろうと決めた。
そして、本当に映画で見るみたいにゆっくり動き出した列車に飛び乗った。
人生最初で最後の飛び乗り。
…しかしそれは、通路にもトイレにも貨物列車みたいに天井まで米(穀物?)袋が積み上げられ、1センチも身動きできない列車だった。
呆然と棒立ちになってたら、ここに腰掛けろと米袋を指す兄ちゃんあり。
あぁ…お米の上にお尻を乗せるなんて…。
心の中でゴメンナサイとつぶやく日本人女子。
ドアも開けっ放しなステップの上に座っていたので一睡も出来ず。
さて、寝不足で注意力も分析力も散漫な一人旅の20代女子。
マドラスからポンディチェリ方面のバスを見つけられない…。
…と思ってたら、列車で米袋を運んでた兄ちゃんが一緒に探してくれると…。
これまた早朝過ぎて、バスは見つけたものの運転手もいないし何時に出るかもわからない。
(大体にして、このバスは本当にポンディに行くのかよ…)って疑念満載。
バスには英語表示ないし。
で、まだ当分出発しそうにないバスを横目に、運び屋の兄ちゃんとチャイ。
…チャイ屋のおばちゃんが運び屋の兄ちゃんとグルだったら困るから(笑)、ここでもヘンなもん入れられないかチェックチェック…。
再び運転手も客も乗ってないバスに戻って一人で待つ。
運転手搭乗。しつこくポンディに行くか確認、確認、次に乗ってきた客にも確認…
そして、いよいよバスが出る頃、ふと窓の外を見たら、さっき一緒にチャイを飲んだ兄ちゃんがそこにおる。どこから調達してきたのか、窓越しに1輪の赤い花をくれた。
その微笑んだ目と白い歯を忘れない。
兄ちゃん、ちょっとでも疑ってごめんよぅ。
マドゥライのホテルでは1Fの部屋で外から金網越しに窓を破られそうになった。
その後、しつこく夜中中ドアをノックされた。
夜中のドアノックは、比較的中級で大きめのホテルでよくあったが、小規模の安宿はなぜかいつも安全だった。ただし、部屋の鍵は南京錠、ベッドには南京虫、魔法瓶の内側にゴキブリの赤ちゃん、天井にはヤモリちゃん…と、日本ではなかなか経験出来ないこと満載だったけど。
日本に帰国する前の数日だけ、少し警戒を緩めた一人旅女子。
最後に余ったお金で少し良さめのホテルに泊って、ここなら少しくらい大丈夫かなと一人でホテル内のバーに行ってカウンターで数杯飲んで部屋に戻った。
…と、やっぱりバーから後をつけられましたよ。で、ドアノック攻撃。結構シツコイ。
一人でバーで飲むのはNGだったね、やっぱり。
結局、20代の一人旅女子(=私)は拉致される事も、監禁される事も、性犯罪に巻き込まれる事も、金を騙し取られる事もなく、2ヶ月弱の旅を楽しんで帰ってきた。
何十年も前と今とでは、旅のスタイルも大きく違う。
旅する人の目的も価値観も人それぞれだから、私は人から聞かれない限り滅多に旅の話はしない。
ただ、どこに行ってもスマホばっかり見ている人に会うと少し残念には思う。
旅先で、その場所で目に見えて、耳に聞こえて、鼻で匂って、人と直接話す事に勝る情報なんてあるのかしら?
人とかかわらずして、人を見る目は養われるのかしら?
多少面倒な事も恐れず、いつも警戒心を持ち、人間本来の感覚を研ぎ澄ます…。
一人旅は最高の人間修行のチャンス。
20代の女子の皆さん、キチンと準備をして、その国の文化を学び、若いうちにたくさん旅をして欲しい。
…と、オバサンは思っていますよ。
頑張れ~。