昨日は京浜東北線の横浜・桜木町間の架線が切れて、長時間にわたって電車がストップした。 午後7時10分ということで、仕事帰りのサラリーマンに加え、神奈川新聞の花火大会を見物に来た人々も大混乱に巻き込まれた。 私も、アメリカの戦争に巻き込まれる前に、こんな事件に巻き込まれてしまったのだが……。 電車が止まってしまった原因は、架線が切れて停電したためという案内放送を聞いて思い出したのが、昭和26年に起きた桜木町事件である。 私はあの事件に遭遇したわけでもなく、またリアルタイムで知っているわけでもない。 知人の親族があの電車事故で亡くなったという話を聞いてから、いろいろな資料を読み桜木町事件のことを詳しく知るようになったわけ。 そんな資料のうちの一つ、「サンデー毎日」昭和26年5月13日号に載った記事。 4月24日午後1時42分、赤羽発桜木町行きの国電、63型が桜木町駅ホーム約50メートル手前で、シューシューという不気味な爆発音を3,4度したと思う間に、車内の四方から火が吹き出し、瞬時にして火焔は車体を包んでしまったのである。 災難といってしまうには、あまりにもむごい大きな悲劇だった。 固く閉ざされた小さな鉄の箱の中で106名の生命が、瞬時にして火焔と煙にまかれ、折り重って恨みを呑みこんだのである。 当日のこの時間帯、普段ならそれほど乗客はいないのだが、この日は珍しく200余名の客で混んでいた。 「火事だ!」の叫びに、乗客は出口に殺到したが、無情なドアはピタリと固く閉ざされたきりで開かない。 火焔に包まれ逃げ口を失った人びとは窓ガラスを破り逃げ出そうと焦ったが、63型電車の窓は三段の狭い窓になっているため出るに出られない。 多くの乗客は脱出への苦闘もむなしく、車内に折り重なって無残な焼死を遂げてしまったのである。 想像だにもしない国鉄空前のその惨事は、どうして発生したのか? 垂れ下がっていた1500ボルトの線が、パンタグラフにからみつき火を吹き、一瞬にして電車の屋根に引火し燃えたという。 しかも、パンタグラフを下してしまったため、ドアが開かなくなっていた。 63型は粗製濫造の旧式電車で、窓が上下開閉の三段式になっているため、窓を開けても大人の頭がやっと出る程度で、窓から逃げ出すことができなかったのだ。 そして火の回りが早かったのは、 ①約10メートル強の風が吹いていた。 ②車両の大部分は木造で不燃性になっていなかった。 というのが主な理由らしい。 明治5年の汽笛一声から昭和26年までの国鉄史には、幾多の事故を記録しているが、それらのほとんどは運転士の信号無視とか操車係の誤認とか、現場職員の過失によって起こっている。 しかし、この桜木町事件は今までの事故原因とは異なり、車両の構造的な欠陥が原因であった。 63型は戦時中の設計で、終戦直後に姿を現した車両で、資材のない時期にできたものだけに、非常に評判が悪かったという。 屋根が木製であり、その屋根の下には天井が張っていない。こういう危険な車両で大切な乗客を輸送していた国鉄の責任は重大であった。 そもそも国鉄は、終戦直後からの赤字を短期間で埋め合わせようとしたところに無理が生じていた。 安全対策をとらず、乗客を一人でも多く乗せ、増収を図ろうとしたための悲しい破綻であった。 桜木町事件の概要は、ざっとこんな感じであるが、史料を読んでいてビックリしたことがある。 その日は横浜市長選挙の開票日だったのだ。 「平沼亮三」対「石河京一」の一騎打ちで、投票率は74.6%。 結果は平沼亮三が242,068票、石河京市が161,014票だった。 おそらく当時は翌日開票だったろうと思う。 朝8時から開票作業に入っていたとして、約40万票を開き結果を発表するまでに4,5時間はかかったのではないか。 紙幣の枚数を素早くカウントするような形の計数器なんて、多分その当時にはなかったはずなので、そうなると手作業だからもっと時間がかかっていたとも考えられる。 だとすると、開票作業中にこんな大惨事が起きてしまったのだ。 新市長として最初の仕事が、桜木町事件に関する様々な手配だったのかもしれない。 それにしても、昨日の架線切れ事故、大惨事にならなくて良かった… ←素晴らしき横浜中華街にクリックしてね |
今回は大惨事にならなくてほんとうに良かった。
そんなことが起きているとも知らず、私は自宅の
ベランダから、上半分か三分の一くらいがビル群越しにときおり見えるのを眺め、ああ、丸ごと見たいなあ、でも人混みはいやだし……と一人、呟いておりました。
体験していなくても記録として知っていれば、
すぐに結びつきますよね。
横浜の花火大会では巨大な誘爆事故がありました。
あのときは現場に居合わせていて、恐怖を感じたことも。
横浜線だったか、床が木製の電車が走っていたのを
かすかに記憶しています。
レトロでいい感じなのですが、危ない・・・