
今年は横浜開港150周年。それを祝う壮大なイベントが間もなく開幕する。 横浜市では、今回のイベントに100億円以上もかけているらしい。その財源の半分近くは「財政調整基金」という市の積み立て金から支出しているそうだ。我が家の家計簿でいえば、少ない給料でやり繰りしているというのに、いざという時の備えである非常用資金を取り崩して大宴会をやっているようなもの。 150という数字には何も意味はない。たまたま十進法で50、100、150という数字のキリがいいため、50周年、100周年、150周年を祝うのだろう。いわばキリ番を踏むというやつだ。 そんな“キリ年”にあたって、横浜市はお祝いのイベントを企画しているわけだが、始まってしまったものは仕方ない。この100億円以上のお金が無駄遣いにならないようお願いするだけだ。 ということで、大きなイベントは横浜市役所に任せておくとして、中華街ランチ探偵団としては何を企画したらいいのか考えてみた。 横浜開港といわれてまず思い浮かぶのは、やはり生糸の輸出だろう。当時のヨーロッパでは蚕の病気によって絹が品不足になっていたことと、日本でも養蚕をやっている農家が多かったこともあって、開港直後から生糸は最大の輸出品目だった。 生糸の主な産地は長野県、群馬県などで、しかも輸出の検査所が横浜に設けられていたため、生糸はすべて横浜港から海外へ運ばれていった。つまり生糸といえば横浜、横浜といえば生糸、そういった深い結びつきがあり、生糸貿易を独占することによって横浜は繁栄してきたのである。 生糸は現在の八王子から横浜線沿いの道を通って横浜港まで運ばれていた。そのルートを「シルクロード」とか「絹の道」と呼んでおり、八王子市鑓水には今でもその当時の面影が残されている。 もちろん、横浜だってその名残を探したら負けてはいない。むしろ、こっちの方がたくさん残っている。 なんたって山下町1番地にはシルクセンターがあるし、その低層階には絹専門のミュージアム、「シルク博物館」も併設されている。ここはかつて、「英一番館」と呼ばれるジャーディン・マセソン商会というイギリスの貿易会社があった場所で、現在、センター前には跡地を記念する碑が建っている。 その記念碑の横に、知る人ぞ知る大きな桑の木がある。 ![]() 毎年、開港記念日が過ぎたあと、この桑の木に実が成ることは意外と知られていない。 ![]() この時期、私は近くのコンビニで買った“ワンカップ大関”を呑みながら、桑の実を食べるのを密かな愉しみとしている。(皆さんは真似しないでね) 目の前は開港広場、日米和親条約を締結した場所だ。その奥には開港資料館もある。そんな絶好の場所で食べる桑の実のなんと美味しいこと! ワンカップの旨いこと! ![]() これは横浜第2合同庁舎。防衛施設局や第3管区海上保安本部など、国の機関が合同で入居しているビルである。 ここは、かつて“キーケン”と呼ばれる生糸検査所だった。年配のハマっ子なら皆さんよくご存知だろう。 ちなみに、建物は横浜ゆかりの建築家・遠藤於菟の設計で大正15(1926)年に建築されたものだったが、残念ながら平成2(1990)年に一部を残して建て直されている。 ここで注目したいのは、玄関上を飾る巨大なメダリオン。これはカイコ蛾の親分に違いない。 ![]() その蛾が生まれる前の繭をデザインしたフェンス。 第2合同庁舎の周囲をぐるりと取り囲んでいる。まるでカイコ蛾の親分を守るように。 高層ビルとなった今、内部にはレストラン、喫茶店、大食堂など、食い物関係の店が揃っている。 とくに大食堂のご飯は美味しい! もしかしたら農林省が入居している関係で、旨い米が入ってくるのかもね。 ![]() これは、ある日の定食。さわらの竜田揚げ+ハムカツに旨いご飯と味噌汁がついて500円(?)だったかな。安っぽい漬物は取り放題だが、時間が遅いと品切れになっていることもある。 ![]() 地下には、こんな売店もある。いや、売店というよりは、ちょっとした“よろず商店”といった感じだ。 ご覧のように酒屋、本屋、文具店、タバコ屋、パン屋など、あらゆる業種が入居している。 国の機関には地方からいろいろなお土産品がつけ届けられるというから、それらを肴に“久保田”なんかを飲んでいるのだろうかね。いや、これは私の勝手な想像ではなく、宮本政於という厚生省の現職課長が出版した『お役所の掟』に書いてあったのだ。 ![]() 1階の自動販売機。めちゃ安! 缶コーヒーが90円! コンビニで150円するペットボトルのお茶が110円! そういえば横浜地方裁判所内の自販機でも同じような値段だった。 いけない、いけない、話がそれてしまった。話題は絹、カイコだった。 横浜関内周辺を歩いていると、あちこちで「帝蚕倉庫」の建物に出くわす。生糸を安定的に輸出するため設立された帝国蚕糸株式会社を前身とする会社である。 ![]() これは本町にあった第二帝蚕ビル。現在は取り壊されてしまっているが、丸い窓が印象的で趣のある建築だった。 ![]() 中華街近くにあった倉庫。これも解体され、現在は関内帝蚕ビルとなりNTTソフトなどが入居している。 ![]() こちらは帝蚕倉庫の事務所だった建物(現存)。生糸検査所と同じく遠藤於菟の設計で大正15年に建築されている。 ![]() 第2合同庁舎裏の倉庫群。このような再開発をするため、現在は解体作業が進んでいる。 横浜における絹の歴史を物語る建築物がこうして消えていくのは残念だが、1棟だけは同じ敷地内で移転保存されるという。 ![]() 倉庫を解体する前の一昨年、内部を見学する会が開催されたので行ってきた。これはプラットホーム。ここから生糸の出し入れをしていたのだろうか。 ![]() 倉庫内部。かつては生糸が山のように積まれていた。その当時の臭いが、今でも漂っている。 ![]() 壁には輸出先の都市を示す文字が残っている。 ![]() 倉庫側面に残る装飾。これもカイコ蛾をデザインしたものだろうか。 以上、ざっと生糸の名残を見てきたのだが、当ブログは食べ物系の記事を満載している関係上、探偵団としては横浜開港150周年を記念して、カイコを食べてみないわけにはいかない。 そんなことで、我々は伊勢佐木町裏、旧親不孝通りにある「延明」に行ってカイコ蛾の蛹(さなぎ)料理を食べてきた。冒頭の写真がそれであるが、もう一度、ここに掲示しておこう。 ![]() 見た目はグロテスクというほかない。とにかく気持ち悪~い。一緒に行った若い者は目を背けていたっけ。 これを思い切って噛み砕くと、意外や意外、まるで川海老の唐揚げといった歯ざわり、感触なのだ。ただ、小海老と違って丸々と太っているので、中身もしっかりと存在している。それはスポンジのような食感。これが蛹の内部だと思うと、ちょっと気味悪くなってくるけど… 味ですか? 口内における感触だけが記憶に残っていて、肝心のお味については記憶にございません。ああ…。 食に関する執念が凄まじい中国人はなんでも食べる、だから蛾の蛹まで食用にしてしまうのだ…と、思っていたが、実は日本でも養蚕地帯ではカイコ蛾の蛹をよく食べていたそうだ。 栄養価が高く、蛹3個と鶏卵1個が同じで、紡績工場の女工たちは仕事の合間につまんでいたことが知られている。とくに養蚕地帯では蛹だけではなく、幼虫も生きたまま食べていたし、地方によっては成虫である蛾も食べていたという。ウゲッ! そういえばイナゴやザザムシなんかは成虫を食べるよね。姿が気持ち悪いけど、あの甘露煮はほんとうに美味しい。ご飯のオカズにも、酒のツマミにもなる優れものだ。 しかし、昆虫は貴重な蛋白源として食用にするだけではなく、昔から薬用としても利用してきた。“医食同源”ならぬ、“医虫同源”なのだ。 ボクトウガの幼虫は、疳の虫の民間薬として知られている。ワラジムシは緩下剤として、ムカデは黄疸の特効薬として、あるいはコフキコガネはペストの薬、テントウムシは麻疹の薬として、医学的に利用してきた人間の歴史がある。 ![]() これは「萬福大飯店」の蟻春雨。黒い点々のものが蟻だ。蟻酸の味、臭いはない。効能書きによれば血行・筋肉痛・美容に効くとある。 食べた後は気のせいか、いくぶん肌がつややかになったかな。 ![]() 同じく「萬福大飯店」で食べたサソリ焼きそば。滋養強壮・新陳代謝に効くとか。 ![]() 横浜大世界の「王家沙」で食べたサソリ。 ![]() これも横浜大世界の中に登場した「珍味体験世界」という店で食べた素揚げサソリ。まるで川海老の食感。 こうなると、まるでお遊び感覚のスナックみたいなものであるが、そもそも、人類が現れた頃のヒトの主食といえば、それは昆虫だったはず。以来、昆虫は世界各地で食べ続けられてきた。 そして現代では、これらが宇宙食に使えるのではないかということで、新たな研究も始まっているという。また、田畑の作物を食い荒らす昆虫を駆除し、なおかつそれを食べてしまうということで、“一石二鳥”ならぬ“一石二虫”の食料対策・栄養対策も考えられている。 なんて言っていたら、フランスから巨大な蜘蛛がやってきた。そして明日、こいつが日本大通に現れる。 でも、これは食べることができない。見るだけだが、皆さん、蜘蛛に食べられないよう気をつけて見学してください。 ![]() |
どこで、こんなメニューを入手してくるんですかぁ。
すごいですね。
それにしても「おしんこ」とは。
ビックリです。
大雑把でね…「かしわ大皿」「牛大皿」「豚大皿」「海老大皿」。
何の料理だかわかんねえの。
あと、「おしんこ」というのもある。中華街の古い店では、食後に
ぬかづけを出す店があるけれど、当時の流れをひっぱっているんだね。
興味深いよ。
たしかに、開港150周年記念には、
會芳樓の料理を再現なんて、いいですねぇ。
でも、レシピとかメニューとか、あるのでしょうかね。
後味がカシューナッツっぽい。
自分は、横濱開港150周年記念に、會芳樓の料理を再現してもら
おうと思ってます。
調理前の姿は不明です。
冷凍なんでしょうかね。
それとも、生きたまま…?
調べてみてくれますかぁ。
牛のナニまでは行きましたがさすがにこれは・・・
素材は冷凍なんでしょうか?
生きたのをそのまま揚げたら、また違うんでしょうがね・・・
昆虫ではありませんが、
ナマコ、ウニ、ホヤ、シャコ、エビなど、
みんなルックスは気持ち悪いけど、
多くの人がよろこんで食べています。
昆虫の中にも、
美味しいものがあるはずですよね。
今回の蛹はダメでしたが…
私も二度と食べたくありません。
外皮はまだしも、あのスポンジのような内部は美味しくないし、食感もよくありません。
実は、酔った勢いで注文しただけです。
ここのは串焼きではなく、テンコ盛りです。
楽園で火事があったなんて、見た目は判らないくらいです。
あの店は細長いので、一番奥のほうなのでしょうね。
一日も早い再開を願っています。
寄生虫系は割に好んで見たがるのですが、蚕のこの、ゴロゴロした感じはちょい苦手かも。
でも、考えてみれば、エビなんて水中に潜った虫そのものですもんね。
グソクムシとか、ウミノミとか。
チリモン(未選別のジャコに混ざった生き物を見つける遊び)なんかやってると、「こいつら虫じゃん」って思います。
桑の実、懐かしい...食べたいなぁ。
ルックスがオソロシク悪いわりに、特に美味くないと言おうか・・・微妙な生臭さと食感の悪さだけが記憶に残るものでした。
・・・それにしても結構たくさん皿に乗っていますね。
串焼きじゃないものを注文されたのでしょうか?
情報はお持ちでしょうか?
軽症だといいのですが・・・・。
桑の実を焼酎につけて果実酒を造ると美味しいですよ。
以前は採り放題でした。
最近は採取禁止になったかも。
でも、落ちているものならOKかなぁ。
サソリは養殖しているそうです。
怖~~~~い! サソリ牧場!
厚生労働省や農林水産省などの官庁食堂はなぜかご飯が美味しいのです。
きっと、彼ら用の優良な米があるのでは…。
いい情報をつかませていただきましたw
なんちゃて
・・・と思ったらかすかにびびって動いていたカーソルの先っちょでしたぁーーー。
インパクトがすごいカイコ・・・(@_@;)
本町通りを走る車の車種も。
婆さんは生糸検査所で働いていたことがあったそうです。
やっぱりご飯が美味しいですよね!
延明は未入店です。
僕はちょっと食べられないと思います。
養蚕農家だった? わけないか。
でも、常食にしていたんですかね。