本日、10月29日(土)より、第23回東京フィルメックスが始まりました。え、この間までTIFF-DAY1, DAY2とかで記事が出てたじゃないの、といわれそうですが、この時期両方の映画祭が重なってしまってややこしいのです。重なって、というより、TIFFにFILMeXが飲み込まれたと言った方がいいかも知れませんが、独自色はしっかりあるものの、資金難のせいもあって、ますますTIFFの一部感が強くなった今年のFILMeXです。会期は追加上映が増えて11月6日(日)までになっていたのですが、先日のお知らせでは閉会式のある5日(土)までと書いてしまい、すみませんでした。下に付けたスケジュールの通りですので、明日から8日間、たっぷりとお楽しみ下さい。今年はレイトショーにあたる午後9時以降に別のシアターを使っての上映がなくなりましたので、フルタイム勤務とかの方はちょっと大変ですね。
本日は午後開会式があり、プログラム・ディレクターの神谷直希氏のご挨拶の後、審査員の3名の方が登壇しました。神谷氏は、今年はクラウドファンディングによって資金を集めたこと、300万円という目標が少しオーバーの306万円集まったことなどを報告し、映画を愛する人々の支持のお陰で開催にこぎつけられたことを感謝しました。
今年の審査員は、次の3名の方です。
映画監督/フランス・カンボジア/リティ・パン氏
映画プログラマー/香港/キキ・ファン氏
映画監督/韓国/キム・ヒジョン氏
期間中のコンペ作品上映時には、中央部の席に座ってらっしゃると思うので、サインのほしい方はカタログを買ってお願いしてみて下さいね。下の写真は、珍しく笑顔の神谷ディレクター。笑う門には福来たる、なので、もっとニコニコなさってた方がいいかも、ですよ。
そしてオープニング作品は、イランのジャファル・パナヒ監督の『ノー・ベアーズ(No Bears/خرس نیست)』。ずっと自宅軟禁状態にあるパナヒ監督、と思っていたのですが、事情はちょっと違うようです。まず、テヘランではない、どこか別の国の都市における、イラン人男女の物語が展開します。こんな坂道でしゃれたカフェのある街、しかも民族楽器を演奏してチップをもらう人たちが登場する所なんてどこだろう、と頭には早くも「?」がいっぱい。あとでカタログを読んでみれば、トルコだったのでした。偽のパスポートを作り、ヨーロッパに逃げようとするザラという女性とその相手の男性、という設定にもますます「???」となっていたら、突然画面が引いていき、質素な部屋のテーブルに向かうパナヒ監督が登場します。実はパナヒ作品はトルコで撮影中だったのですが、パナヒ監督は国外には出られないため、トルコ国境に近い村に滞在して、演出中だったのでした。
ところがこのへんぴな村、WiFiの電波状態が悪く、途中で映像が途切れてしまいます。携帯で電波を拾おうと、パナヒ監督は四苦八苦。間借りしている家の主人がいろいろ助けてくれるものの、彼も新婚夫婦を祝う儀式があるとかで、出かけなくてはならず、あまり役には立ちません。するとパナヒ監督はカメラを彼に預け、「何でもいいから撮ってきて」と頼みます。ところが持ち帰られた動画では、「ストップ」と「再開」ボタンを教えていたのにストップさせないまま映像と音声が撮られており、そこにはパナヒ監督に対する村人たちの不審の言葉がてんこ盛り。どうやら監督は、歓迎されない都会人のようです...。
最初は牧歌的だった村の生活や村人との交流が、やがて不協和音いっぱいのものになっていき、ついにはとんでもない事件が出来する、という、ちょっとコワい作品でした。パナヒ監督、精神状態は大丈夫なのでしょうか? サスペンス映画が撮ってみたかったのでしょうか? イラン政府どの、早くパナヒ監督を自由の身にしてあげて下さい、と祈りたくなる作品でした。
カタログの裏にはこんな広告が。香港映画好きの皆さんはすでに情報をゲットしておられると思いますが、実は「香港特別行政区設立25周年記念映画祭/Making Waves - Navigators of Hong Kong Cinema 香港映画の新しい力」(公式サイト)が11月9日~13日、文化村ル・シネマで開催されるのですが、それとは別に上の「香港映画祭2022」も開催されるようです。詳細はまた別途お伝えしますので、フィルメックスと共に注目していて下さいね。最後に、『ノー・ベアーズ』の予告編を付けておきます。11月6日(日)にも上映がありますので、ご覧になってみて下さい。
NO BEARS Trailer | TIFF 2022